第2話 悪魔の心臓
「というわけで、何としてでも寿命を保たなければならないのです!」
俺は【忘却の魔女】レテにまたしても相談していた。
「それだけ強い結婚願望があれば、その気合だけで生き延びれそうだけどね。『愛の力で呪いを克服する!』、みたいなノリで」
「ノリで解決できれば苦労はしませんよ」
俺は呆れてしまい、ただそう返した。
「今のはあながち冗談ではない。愛の感情というものは、生命力の源泉でもある。これは古来より様々な分野の達人が述べてきた心理だ。愛で生命力が増えれば、生命力から精製される魔力もまた増える。魔力が増えれば、魔王討伐にも行ける」
後半はどういう意図だろうか? 魔王討伐なんて単語が出てきて、俺は不穏な空気を察知した。
「というわけで、魔王討伐に行ってきてくれ」
「どういうわけですか」
レテは人を煙に巻くような胡散臭いところがある。とはいえ、その知識は確かなので、頼らざるを得ないのだが。
「君の愛しいリゼリアを守ることにも繋がる」
「そういうのは冒険者の仕事でしょう」
「そうだが、君にとっても悪い話ではない。魔王には2つ目の心臓がある。【悪魔の心臓】というやつだね。身体にかかる負担をそれに肩代わりさせ、老衰を免れている」
レテは当然のように魔王の奥の手を語ってみせた。この情報は、長年魔王の弱点を追い求めてきた冒険者たちが求めてやまないもののはずだ。
「なぜそんなことまで知っているのです?」
「呪いというのは前借りができるのだよ。大事な思い出をいくつか自発的に消す代わりに、本来知り得ぬ知識を得ることができる。魔王の弱点などどの書物にも書いていないが、この【忘却の呪い】を活用すれば知ることができる」
そんな使い方はしたくないものだ。第一、俺が前借りなどしたらあっという間に死んでしまう。
「君には膨大な魔力が備わっている。不本意だろうが、寿命と引き換えに魔力は溜まる一方だろう。ここらで発散すべきでもある。発散ついでに【悪魔の心臓】も持ち帰れば、一石二鳥というわけさ」
確かに、魔力を溜め込みすぎると健康に弊害が出ると聞く。レテの下で学んでまだ一ヶ月ほどだが、魔法の知識も随分と得た。ここらで実戦と行こう。
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