700日後に死ぬ大賢者~命数の呪いを解こうと努力したら世界最強になってました~

川崎俊介

第1話 命数の呪い

【14000日】


 視界の端にそんな文字列が現れたのは、10歳の頃だった。


 だが俺は驚かなかった。寿命が見えるという魔法使いは、これまでにも存在したからだ。俺は40年後くらいに死ぬのだろう。そう思っていた。


 問題は、その減り具合だ。


 翌日には【13970日】と表示されていた。身体におかしなところは無いし、無茶な負担を掛けたりもしていない。なのになぜ、30日分の寿命が消費されているのだ?


 それから毎日、寿命は30倍のスピードで減り続けた。四大賢者の一人、【忘却の魔女】レテに相談したところ、それは【命数の呪い】というらしかった。


「私も、本の内容は一言違わず暗誦することができるんだが、忘却の呪いにかかっていてね。知識を得る度、大事な思い出を忘れてしまうんだ。カイラン。同様に君は、寿命を消費する代わり、魔力を得ている。付き合い方をよく考えることだね」


 レテは暢気な口調でそう教えてくれた。


「なに、魔力が有り余っていても明日死ぬというのでは意味がないからね。延命措置には私も協力するよ」


 そうして、寿命を伸ばす戦いが始まった。


 常時発動する回復魔法をかけて、27倍に。


 ドラゴンの生き血を飲んで25倍に。


 人魚の呼吸法を学んで20倍に。


 聖なる滝に打たれて18倍にまで減少スピードを減らした。


 だがこの時点で、表示は【12600】。このままのスピードでは、あと2年も生きられない計算だ。


 どうにかして寿命を工面しなければならない。


 なにせ、このままではリゼリアと結婚できないからだ。


 幼馴染みのリゼリアは、呪いに冒された俺を何かと気にかけてくれた。できれば一生添い遂げたい。


 だがこのままでは、結婚可能な年齢、つまり18歳になれない。なれたとしても、直後に人生が終わってしまう。


 俺は何としてでも生き永らえなければならないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る