【お題で執筆!! 短編創作フェス】帰る or 帰らない【帰る】
星羽昴
嘘つき
「帰る!」
「そうか、残念だな。ゆっくりしていけばいいのにな」
胸と態度のデカい女が、向かいのソファーで脚を組み替えた。短いスカートの奥が見えるのを、もっと警戒しろよ。
「ココは彼の家でしょうが! 何でアナタが仕切るのよ?」
ここは、わたしの彼の家。おうちデートのつもりで来てみたら彼は留守で、どう言うわけか胸と態度のデカい女がいた。
「大体ね、どうしてお姉ちゃんがココに居るのよ!」
この、胸と態度のデカい女は、認めたくないけれどわたしの実の姉だったりする。
少し前……姉のちょっとした面倒事を、彼が解決したことがある。以来、彼にチョッカイをかけるようになったのだ。妹の彼氏なのに!
「彼に、調べ物を頼んだ。私の頼みだからと快く引き受けてくれてな。専門書でデータを確認するからとわざわざ図書館に行ってくれている」
「彼が図書館に行っても、お姉ちゃんがココにいる理由になってない!」
「夕方までかかるそうだ。それで、家でゆっくり待っていて欲しいと言ってくれてな。部屋は自由に使っていいそうだ」
「帰ります!!」
彼がいないなら、この家にいても仕方がない。この、胸の大きさだけが取り柄の女と同じ空気を吸っているのも耐えられない。
わたしが宣言してソファーから立ち上がるタイミングで、部屋の扉が開く。振り袖姿の前髪ぱっつんロングヘア少女が、コーヒーを運んで部屋に入って来た。
彼の妹である。この、振り袖の前髪ぱっつんロングヘア少女は、ブラコンを拗らせて彼に近づく女性に対し露骨に敵意を示すのだ。
「悪いけど、コーヒーはいらないの! もう、帰るから!」
少女の口元が小さく吊り上がった。ニヤリと勝ち誇った笑顔が癪に障る。
「……」
マジでムカついた。この少女は、彼の彼女であるわたしを蛇蝎の如く嫌っている。いつもコーヒーを運んだ後、わたしと彼を2人きりにさせないために、部屋に居座る。
わたしの前にコーヒーを置いた後、入り口傍の椅子に腰掛けた。少女の定位置だ。
……あれ?
「帰るのやめる!」
わたしの、新しい宣言に胸と態度のデカい女と少女が気色ばむ。
「……」
「……」
無言になった2人を無視して、わたしはソファーに深めに腰掛けコーヒーを口に運ぶ。
案の定、程なく彼が帰ってきた。
姉の「彼が夕方まで帰らない」は、わたしを追い返すための嘘だったのだ。
「ふん! よく、わかったな」
わたしは、振り袖姿の前髪ぱっつんロングヘア少女を指差す。
「コーヒーを運んだ後、あなたが部屋に居座り続けたからね。彼が帰って来ないなら、嫌ってるわたしと同じ部屋には居ないはず」
振り袖姿の前髪ぱっつんロングヘア少女は、悔しそうに顔を歪めた。
帰る or 帰らない 『嘘つき』 ー 終わり ー
【お題で執筆!! 短編創作フェス】帰る or 帰らない【帰る】 星羽昴 @subaru_binarystar
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