第4話 黒い箱
私は激しく首を振った。
「そんな馬鹿な? 私が行方不明だなんて・・・では、私はもう元の『Aの世界』に戻ることが出来ないのですか?・・・いや、待てよ?・・・そもそも、『Bの世界』の美咲は、どうして『Aの世界』の私を『Bの世界』に呼び寄せることが出来たのでしょう?」
「それは、おそらく、この黒い箱でしょう」
富樫がテーブルの上の黒い箱を手に取った。あの死体の横に埋めてあった箱だ。私は、あの箱だけ持ってきたのだ。
「おそらく何かの偶然で、『Bの世界』の美咲さんは、この黒い箱を手に入れた。そして、この箱で、別の世界にいるあなたを呼び寄せることが出来ることを知ったのです。それで、今回の殺人を計画した。そして、殺人の実行後は、証拠隠滅のために、この箱を死体と一緒に埋めてしまったというわけです」
私は富樫の手の中の黒い箱を見た。
「でも、それ・・・どう使うんです?」
「ここにスイッチが一つだけあります。そして、このディスプレイには、あなたのスマホの電話番号が入力されています。おそらく、このスイッチを入れておけば・・・あなたのスマホから何かの言葉が送られてきたときに、あなたを『Bの世界』へ移動させるように仕向けてあるのです。だから、同じことをやれば・・・あなたは、また元の『Aの世界』に戻れると思いますよ。奥さんとの間で、毎日、決まって送信するような言葉はありませんか?」
毎日、決まって送信する言葉?
そうか! 『帰る』・・・だ!
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