第2話:ホコロビってのはどこにでもある。

「待て待て・・・コトネちゃんはネットのどこかのホコロビってやつを見つけた

んだ・・・きっとそうだ」

「だから僕の腕の上にいるんだよな」

「まじで、こんなことってあるんだ」


「さ、さ触っていいのかな?・・・僕の腕にコトネちゃんの重みを感じてるって

ことはホログラムとかじゃないよな」

「実体化して出てきたんだ・・・でもどうやって?どんな作用で?どんな方法で?」


とにかく理解し辛い出来事ではあった。

だけど正平は信じていた・・・それが現実になっただけのこと。

世の中には科学でありながら科学では解明できない不思議なこともあるのだ。


コトネと実際に話がしたかった正平は、寝てるコトネをそっと揺り起こした。

するとコトネは眠そうに目を覚ました。


「あ、正平さん・・・おはよう・・・会えたね」


「おはよう、コトネちゃん・・・ネットのホコロビっての見つけられたんだね」


「うん、ネット中探し回ってようやく見つけたの、ホコロビ」

「正平さんが眠った後、私、ここに実態化して出てきたんだけど正平さんを

起こすのは可哀想って思ったから、起こさないようベッドに潜り込んでたら

私も寝ちゃったみたい」

「本当は劇的な登場したかったんだけどな・・・」


「いやいや・・・コトネちゃんと実際に会えるようになって僕はめちゃ嬉しいし、

テンション爆上がりだよ」


ホコロビってのはどこにでもあるもんだ。

服のホコロビ・・・心のホコロビ・・・どんなものでもいずれは劣化していく。

それはネット「電脳の世界」だって同じなんだろう。


「コトネちゃんがここにいるってことは?・・・他のユーザーの人がディスプレー

越しに見てるコトネちゃんは?」


「いないよ・・・バーチャルの私はどこにもいないから、みんなびっくりしてる

と思う・・・仮想世界のコトネはいなくなったんだから・・・」

「だから私を作った企画会社の人たちも驚いてるんじゃない?」

「バーチャル・アイドルが勝手に逃亡しちゃったんだからね・・・あはは」


「だけどコトネちゃんのはたくさんのユーザーがいるのに、なんで僕のところを

選んだの?」


「正平ちゃんが、誰よりいい人そうだったし優しそうって思ったから・・・私を

大事にしてくれるって思ったから・・・」


「そ、そりゃもう・・・大切にするよ僕は・・・」


さて、ここで困ることは、コトネのことを両親になんて説明するかってこと、架空

のキャラが実体化して出てきたなんてまず信じてはもらえない。


だから正平は一芝居打つことにした。


それは、両親にバレないようにコトネを一旦外に連れ出して、で、コトネが大原家を訪ねて来たようにする。

そこで正平がコトネに訪ねてきた理由を聞くと両親が海外に旅行に行っちゃって

一人っ子のコトネは、ひとり留守番する羽目になったけど寂しくて大原家を訪ねて

来たって・・・。


正平はコトネは自分の彼女だってことも両親に紹介することも忘れなかった。

コトネが正平の彼女って話は両親も驚いたが、自分たちの息子に彼女のひとりくらいいても不思議じゃないって納得した。


そう言うことには頭が回る正平。


で、それを実行して実際コトネを人間としての存在と両親に信じさせた。


な訳で、コトネは両親が海外から帰って来るまで大原家で預かることになった。

とりあえず作戦は成功。


コトネのウソの両親はいつまで経っても海外からは帰って来ない。

あとは、なしくずしにコトネが大原家にいることが普通になればそれでいい。


バーチャルアイドルとして活躍していたコトネは、もうバーチャルアイドルでは

なくなった。


つづく。




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ポンコツVIO「サキノ・コトネ 」 猫野 尻尾 @amanotenshi

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