第5話『七草優華の告白』
「夏希、悪いけど少し優華ちゃんと2人で話させてくれないか?」
あんなことがあった後では許されないかもしれない。
しかし、彼女に…七草優華にあの行動の真意を聞かなくてはいけない。
「ん、いいよ」
「で、でも!絶対変なことしないでね!絶対だからね!」
「するわけないだろ!俺はお前一筋だ!」
そういって部屋から出る。階段を降りてる途中ぽつりと
「私以外ダメだよ…?」
と聞こえてきた気がする。空耳かな。俺の妹がそんな事言うわけない。
というか妹が一番ダメでは?
──閑話休題
とにかく七草優華にことの真意を聞こう。
そこからが始まりだ。リビングにつくと七草優華は──
「ううっ…ひっくひっく…」
泣いていた。正直気まずい。が、そんな事も言ってられない。
「さっきなんであんな事したのか聞いても良い?」
「今すぐに言うのが無理なら落ち着くまで待つからさ」
「じ、実は…」
これはきっと凄く重い事情があるのだろう。
マリアナ海溝よりも深いんだろうな。
「お兄さんの顔、すっっっごくタイプでぇ…」
…ん?あれ、やっぱこの子ダメかも。妹に嘘つく必要無かったかも。
「家庭教師してほしくてぇ…」
「今の家庭教師気持ち悪くてぇ…」
…これはお説教か?普通にお説教だよねうん。
「体とかベタベタ触ってきてぇ…」
…雲行きが怪しくなってきた。
「お兄さんなら優しそうだし顔がタイプだから…」
「新しい家庭教師捕まえてきたなら叔父さんも納得してくれるかなって…」
「叔父さんが家庭教師を選んだの?」
「いや叔父さんが家庭教師なの」
「叔父さんは今いくつぐらいなのかな」
「多分30代ぐらい?33とかだったかな…」
「…どんな事をしてるの普段」
「最初は普通に勉強を教えてくれるんだけど…後半は体をベタベタ触ってくる」
「そして…」
彼女は苦痛な表情を浮かべながら拳を固める。
俺はそんな彼女を見て決心した。
「よし…分かった。なるよ家庭教師」
「ほ、本当に!?」
「うん、でももうああいうのはしちゃダメだよ?」
「俺だから良かっただけで他の人なら分かんないよ」
「…叔父さんに男に頼むときはそう頼めば大抵の男は聞き入れてくれるって…」
本当に反吐が出る。そんな事があって良いのか。
彼女は性的な虐待をされつつもあんな事を迫ってきたのは、それだけ歪まされてしまったという事だった。彼女の常識を壊してしまうほどに。そういう風に『教育』されてしまったのだ。
彼女の表情は演技だったのだろうか。全部嘘なんじゃないか。
騙されているんじゃないか。
実は家庭教師と言って家に誘って続きをするつもりなんじゃないかと俺の脳裏に言葉が飛び交う。俺はつい先月に起きた事がきっかけで女性不信になってしまった。
だからといって信じなくても良いのか?子どもからのSOSだろ?
目を背けたいだけだろ。真実だった場合あの子を見捨てることになる。
見捨てるという選択肢を選ぶ理由を作り、自分を正当化したいだけだろ。
もしそうだった場合、もう一度断れば良い。どうとでもできる。
でも、もしそうじゃなかった場合彼女は再び苦しむ。
その可能性を頭に入れながら見て見ぬ振りをできるような人間ではない。
「子どもを守るのが大人の役目だもんなぁ…」
彼女が帰り、妹がお風呂に入ってる中。
彼女の連絡先を眺めながら1人部屋でぽつんと呟いた。
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