理論にとっての時間

前話より、理論は現在を構成する要素ではなく経路、つまり現在と過去の関係を探る上で成立する概念であることがわかりましたね。

時刻(時空間座標)が理論に依存することはないのです。これはあるメタ時間の空間だけでは理論が定義できない概念であると考えられます。

時間は必ずしも理論を必要としませんが(理論が無くとも世界は様々な状態を取る。これは理論が無いと言う理論にすら世界は束縛されないことより示される)、理論にとって時間は不可欠な要素です。

しかし、何故理論が時間を要請するのかをそのまま考えるのは難しいです。


ここで比較という概念について考えます。

ある状態Aと状態Bを考えます。

このとき状態Aを基準(原点とは限らない)として状態Bを観測することを比較とします。

このときAが原点とするとAに対する比較はAがAに対してメタ時間ベクトルを持っていないのでAは比較の対象にできません。

すなわち比較という概念は状態Aに依存してしまいます。(原点である状態Aから状態Bを観測する)

つまりは状態Aという絶対的基準(原点)は変更できない、状態Aからの変化しか認めないということです。これは比較は様々な相対メタ時間において利用することができない概念ということになります。

なので我々の時間で利用するために基準は原点でない状態Aとなります(状態Aのメタ時間nA>0)。


次に状態Bが固定される場合を考えます。

このとき状態Bはあらゆるメタ時間空間に対して大きいメタ時間を持つ、すなわち状態Bのメタ時間は∞と考えることができます。このとき状態数は定義されないと考えることができます。もう少し詳しく言うと状態数が数で無くなるため数として原点ではない状態Aの状態数と比較することができなくなります。(どのような状態Aも状態Bに辿り着く有限の大きさのメタ時間ベクトルを持たない)

つまり観測する状態Bを決めることで状態Aから観測する場合状態Bに依存してしまいます。


このことから比較は状態A及び状態Bが有限の大きさを持つメタ時間ベクトルを持つことを要請しています。

また時刻の基準となる点が存在しなければ時間に向きは存在しません。時間に向きがあるのは0秒となる瞬間を定義しているからなのです。すなわち時間という概念は有限である限り状態Aと状態Bのどちらかが過去と決められます。

比較は過去がどちらか決められなくても問題ありませんが理論はそうではありません。理論には時間の大きさだけではなく時間の向きが必要であったと考えることができます。(理論は比較より成立条件が多い)

相対原点(時間の基準)をずらすことで過去の範囲を広げることができます。これは理論の適応範囲を過去に展開するということです。ただし基準は∞に過去にずらせるわけではありません。0<nO'となる範囲でのみ動かすことができます。これはどのような過去であっても現在との時間の差が有限であれば基準にできるとも考えられます。

ただし、理論は基準よりも過去に対しては適用できないことに注意が必要です。理論が無くなった後の世界なのか、理論が産まれる前の世界なのかは向きが無いのでわかりません。前か後であることはわかります。これは理論が効力を持つ時間の大きさは有限であると考えることともできます。

これは量子力学と通常の力学の理論の差の理由と考えることもできます。つまり時間の大きさが異なる2つの理論は単純に比較できません。

量子力学においてはO'<nA1<nB1<<nR

通常の力学においてはO'<<nR<<nA2<<nB2

ただしnB1-nA1<nB2-nA2

と考えることができます。

つまり量子力学は基準と近いときの理論、通常の力学は基準と遠いときの理論と考えることができます。

このときnRの持つ意味は世界の段階の境目であるということです。

つまり基準から考えたときのメタ時間nの大きさは宇宙の成長度合いと考えることもできます。この宇宙の成長(連続した時間)は基準があって初めて成立するのです。


理論が個々の基準そのものには依存しませんが、基準があること、そして世界において常に成立するわけではないことが、理論を相対メタ時間において成立させています。

これは理論の鮮度が落ちると考えることもできます。つまり新しい理論が作り続けられないと理論には意味が無くなってしまうということです。人類は新しい理論を食べ続け、また古い理論を排泄することで論理体系を保持しています。これは不変である真理、劣化しない理論が存在しないことを示しています。


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