暴走ドローン

音が大きくなるにつれてぼんやりとしていた輪郭がハッキリと見えて始め、やがてその全貌が明らかになる。


「暴走ドローンだ!しかも相当な数居るぞ!」


「な!?さっき確認した時は気配の1つも無かったのに…」


「何処かに出払ってたんだろ、電気も通じてるようだし、奴等からしてもここは優良物件だったって訳だ」


「流石にあの数全てを相手には出来無いな…Y-KNO!何処かに逃げ道は無かったか?」


「ドローン達が入り込んでこれないくらい狭くて続いてそうな小路はありましたが丁度奴等が入ってきた方向にあります」


するとY-KNOが一歩前に出て分銅を振り回しながらみきおに話しかける。


「私が時間を稼ぎます、その間にビークルと一緒に小路に入って逃げて下さい」


「俺だけってのは無しだからな?」


「勿論です、必ず追い付きますから任せて行って下さい」


「心配はいりません、なにせ私は…」


「戦闘専門ですから」


「さぁ行って!」


その声と共にみきおがビークルを全力で押しながら小路へと入って行く。


次の瞬間回転させ続けていた分銅の先端部分を空中の標的へと凄まじいパワーで投げ付ける!


しかし直線的な一撃にドローンが当たる訳も無く、ひらりと横へ回避されてしまう。


「それじゃ駄目ですね、まずは一機撃破です」


Y-KNOが手首の球関節にスナップを利かせると通り過ぎていった分銅が踵を返してドローンの背後にめり込む。


更にそこから刺さったままのドローンを鉄球の様に扱い周囲の機体へと衝突させて続々とドローンを落としていく。


しかしその時背後から一機のドローンがY-KNOへと迫る!


「見えてますよッ!」


破壊されたドローンから引き抜いた分銅が素早さを取り戻して背後のドローンへと飛び掛かる!


ドローンと分銅の距離が縮まり衝突する直前、ドローン前面部の銃口の様な装備から捕縛用であろうネットが射出され分銅が絡め取られる。


「しまっ…」


慌てて回避しようと両足の出力を上げるが時既に遅し、重厚なドローンがY-KNOに直撃しまともに防御も出来ず、破片を散らしながら激しく吹き飛び地面を転がる。


──拙い…足の付け根がイカれたか…


Y-KNOが顔を上げると既に残党のドローン達がY-KNO目掛けて向かってきていた。


「流石に引き時ですね、吹き飛ばされた位置が逃走経路の真横で助かりました」


「主を待たせていますので失礼します、それでは皆さん御機嫌よう」


Y-KNOはドローン達の銃撃を背にガタが来た足を引き摺りながら狭い小路へと逃げ込んだ。

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