ミュータントの恩返し

小さな収穫を得て意気揚々と先へ進んでいるとまたもや眼前に何かが現れる。


しかし先程とは打って変わって今回の物は緑色で小さく表面はブヨブヨした質感に感じられ周囲には紫色の液体が大量に流れていた。


「ミュータントの幼体…かなり弱ってる、親に見捨てられたんだろうな、あの様子ならこっちに危害は及ばない、横を通って先に進…」


「助けましょう」


「はぁ?お前何言って…」


「何でもです、私はあのミュータントを助けたい」


「遂に頭のネジが外れたのか?あんなの助けたって何の得にもならないだろ」


「ならそこで待っていて下さい、私一人で薬草でも何でも探してきますから」


「…分かったよ!手伝えば良いんだろ?」


みきおは珍しく押しの強いY-KNOに少し動揺しながらも離れていく無機質な背中を急いで追いかける。


それから周辺を散策しミュータント治療の一助になる様な物を探したがまともな収穫は無く2人が初期位置に戻ってきた頃には既にミュータントは事切れていた。


「ほら、もう気は済んだろ?さっさと行くぞ」


「最後にあの子を埋葬してからです」


「はぁ!?全く…適当に土でも掛けときゃ良いだろ?」


「私、近場で手頃なサイズの瓦礫を探してきますね」


「今度は何する気だ?」


「墓標の代わりですよ」


「もう好きにしろ」


程無くして不格好ながらも埋葬を終えたミュータントの遺体の前で両手を合わせるY-KNOを見てみきおが言葉を漏らす。


「しかしお前、機械の癖に人間みたいだよな」


「見てくれの形なんてさほど大した問題じゃ無いと思いますよ、大事なのは中身です」


「こんなクソみたいな世界ですが、投げ槍になって人間性を捨てる様な奴こそいよいよお終いですよ、私からすればそんな奴は人と呼べるかも怪しいです」


「まぁお前の言う事は分からなくは無いけどな」


そう言うとみきおも墓標の前で手を合わせる。


「俺はまだ人で居たいんだよ、これが出来てる内はまだ十分だろ?」


「えぇ…十分過ぎる位です」


「グルルオォォオオォォォ!!」


「マジかよ!親居るじゃねぇか!」


落ち着いたムードを切り裂く様に何処からか獣の唸り声が響き渡って来た為2人は急いでその場を後にする。

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