第7話「リグルディアお嬢様、狐と出会う」

前書き

どうもシロニです、よろしくお願いします。




「前回のあらすじ」


ポップカルチャー部にて個性豊かな面々との出会いを果たしたリグルディアは頼れる姐御肌の女性、トウコに悩みを相談する。

トウコはリグルディアの悩みに真面目に向き合い、親身になって話し合った結果、リグルディアはエリーデたちに対する未知の感情に向き合って乗り越え始めるのだった。


◇ ◇ ◇


トウコのおかげで自分自身と向き合った結果、あたしは自分の心の重荷の正体が分かって一気に背中が軽くなった気がした、あたしはあの二人のことが大好きで、今でも憧れの対象だったんだ。

そしてあの二人を守りたいと思うのは今まで1人で勝手に憎んで悪事を企ててきたことに対する贖罪の気持ち、ならばあたしはそれから逃げ出さない、あたしはエリーデをあらゆるものから守る壁役になってやろうじゃない!


「お?いい顔すんじゃんお嬢」


っ!?あらやだ、あたしどんな顔してたの?みっともない顔してなかったかしら...?


「あっはっは!そう恥ずかしがんなよ、見てて気持ちのいい顔だったぞ?顔を見るに、何やら決心したみてぇじゃん?」

「えぇ、そうよ、あたしはこれから大事なものを守るため、強くなろうと決心したの、みんなを悪いものから守るための倒れない壁になってみせるって決意したのよ!」


「へぇ...そうなのか、いいじゃねぇか、ならばお嬢は...さながら『壁役令嬢』とったところか?」


え、ちょっと、いきなり変な2つ名付けないでよ!?


「なぁんだよ、いいじゃねぇか!王国騎士の騎士団長様だって【不死身のエドワード】っちゅうかっけぇ2つ名あんだぜ?お嬢もかっこいい2つ名とか欲しくなんねぇ!?」


くっ...!正直2つ名とかすっごい欲しい!出来るだけかっこいいやつ!


「へへっ!お嬢も満更でもなさそうじゃん」


まったく...


「さてと...んじゃあそろそろ漫画に戻ろうぜ?」


あ、そうだったわ、たしかあたし今は部活動体験中だったわね。


「お嬢は漫画って読んだことあるか?」


漫画はあまり読んだことはないわね...前にソルが暇つぶしに読んでた漫画を貸してもらったことがあるけど、読んだことがあるのはそれだけだわ。


「おっ?読んだことある?じゃあどんな感じか知ってるか」


えぇ、知ってるわ、でもあたし漫画を書くと言ってもそんな本格的なものなんて描ける自信ないわよ、絵心もそんなに...いや多少は心得ていますけれども!


「漫画を描くっつっても、4コマ漫画だから心配すんな、漫画の歴史とか描き方とかよりまず軽くやってみるのがいい、いきなり色々知識入れようとしても興味も湧かなければ頭に入らねぇからな」


4コマ漫画、簡単に言うと4つのコマで構成される短編の漫画のこと、とりあえず描いてみろって言われても意外と悩むわね、物語をたったのこれだけのコマで起承転結させるって、やるのは簡単だけどそれを面白くするのって思ったより難しいわ。


「なんだ?どんな話を描こうか迷ってんのか?」

「えぇ、面白いものを描こうって思ったら悩んじゃって...だってあからさまなウケ狙いのものは滑っちゃうし、話の流れを作ろうとしてもコマが4つしかないから短くまとめるのに悩んでるって言うか...」


4コマでこれなんだから数ページ分のお話を考えてる人たちってすごいのね、だって限られたページ内に抑えなきゃいけないし、それだけじゃなくてお話をキリのいいところで終わらせなきゃいけない。

さらに面白く魅せなきゃいけないだろうし、ここに来る前はみんなそんなに苦労なんてしてないんだろうと思っていたけど、今反省して考えを改めたわ。


「そんなガチで考えなくてもいいってばぁ〜部活動体験と言っても、ここじゃただ軽く遊ぶだけなんだからよ〜?例えば最近起こったことだったり、記憶に残ってる楽しいことだったりにしてみ?」


記憶に残ってる楽しいこと...あれかしら。

あたしはルゥと出会って仲良くなったあと、屋敷の外に出てルゥとルゥを預かってる狩人のおじさん一緒に村の近くの草原に行ったことを漫画にしてみた。

あの時草原には一面に色んな綺麗な花が咲き誇っていて、あたしはルゥと一緒に花冠を作って遊んだり、帰った後に持ち帰った花冠をお父様にあげたりした。


あの時のお父様はあたしに初めて友達が出来たことをとても嬉しそうにしていて、花冠を受け取ったらそれを毎日どこへ行くにも付けて、王城での議会にもつけていこうとしたからさすがにメイドたちにはしゃぎすぎって怒られていたっけ。

あれ?今気づいたけど、もしかしたらあたしのお父様っていわゆる親バカってやつ...?


「アッハッハ!そりゃ完全に親バカだろ!」


はぁ...あの時はお父様がとても喜んでいたからあたしも気づかなかったけど、何をやっているのよお父様...


「お、いいじゃん、可愛くかけてる」


...これは今もなお色褪せないあたしの大事な思い出の1つ、一度は自分から忘れていたものだけれど、もう忘れたりなんかしない。


「そういえばトウコ、ルゥから聞いたけれど貴方漫画家志望なんですって?」

「ん?そうだぜ?あたしは将来世界中が愛してやまないプロの漫画家様になってやんだよ」


すごい自信、それほど彼女は自分の漫画の腕前に自信があるってことかしら、それともそれが何があっても絶対に諦めないほど叶えたい夢ってことかしら、あるいは両方。


「あたしの漫画で世界中のやつらに一生忘れらんねぇもんを見せつけてやんだ、それがあたしの夢であり、やらなきゃいけねぇことだからよ」


やらなきゃいけないこと?


「ん...?あ、その、なんだ、お嬢と話すのが楽しすぎてつい口から零れちまった、忘れてくれ、恥ずいから...」


トウコはそう軽く笑って言う、でもあたしはそれを忘れてはいけないような気がして、ここで聞き出さなかったら彼女はこの先話そうとはしなくなるような気がして、トウコに何を隠しているのか聞き出すことにする。


「トウコ、貴方も何か悩んでることがあるの?」

「ん?そんなんねぇよ、それよりお嬢の話をもっと聞かせてくれ、色々と漫画のネタに使えそうだからよ、あたしはネタに飢えてんだ」


...絶対に嘘、恥ずかしいとか、あたしの話とかで誤魔化そうとしてるけど、今のトウコからはあたしと同じで何かを抱え込んでる気配がする。


「トウコ、誤魔化さないで、何か悩んでいるならあたしにも貴方がしてくれたように相談してよ、力になる...のは難しくても、誰かに話すことで背中が軽くなるってことは、あたしは十分に知ったから」


あたしの言葉にトウコは微妙に表情を固くした。


「なぁお嬢、さすがに考えすぎだって、たしかにあたしはさっき変なこと言っちまったが...そんな悩みとかいうほどじゃねぇからよ」


遠回しに「これ以上突っ込んでくるな」って言いたげな気配を感じる、トウコはまた軽く笑っている、彼女はもしかして誤魔化したり隠したりする時に軽く笑う癖があるのかしら。


...ていうか、あたしの悩みとか黒歴史とかは聞き出しておいて、自分のことには踏み込むなってふざけているのかしらこの女。


「遠慮なんかしないで!友達ってのは支え合うもんなんでしょ!?」

「なぁ、お嬢、さすがにもういいってば、あたし何度も言ってんだろ?お嬢の表情がガチすぎて少し怖ぇってば!」


トウコはまた笑った、今度は少し大げさにあたしの行動を笑い飛ばす「今ならまだ引き返せるぞ」という意味かしら?引き返すわけないじゃない。

こっちが話したんだからあんたも話しなさいよ!あたしから聞き出しておいて自分は話さないとか絶対許さないわよ!?ネタの提供に対する対価よこれは!はーなーしーなーさーいーよぉー!!


「ちょっ、なんかあたしのためを思ってくれてんなら嬉しいけどよ!さすがに不器用がすぎるだろ!?そういうのはもっと時間をかけて関係を深めてからだろうが!!」


あたしが器用な性格育っているのならこんなことになってないないのよ!!


「貴方!会ったばかりのあたしに悩みを聞こうとしたじゃない!貴方もあたしと同じことしてるのよ!お分かり!?」

「...あ」


図星を突かれたトウコは一瞬固まった顔をした、あたしはその隙を逃すつもりはない。


「だったらあたしに貴方の悩みを話しなさいよ!自分だけ都合よく逃れようとしてんじゃないわよ!」

「ちょっ!?お嬢!ほんとに...!キッツいてば!あたし誰かに弱いとこ見せるとかそんなキャラじゃねぇんだって!」


「うるさーい!キャラとか知らないわよ!あんたあたしの黒歴史を聞き出しておいて自分は話さないとか絶対許さない!言え!言いなさーい!!」

「あぁもう!うっせぇなこの魔猪令嬢!!」


「猪突猛進しか出来なくて悪かったわねぇぇー!?」


そして少し離れたところでゲームをしているルゥたち3人、ティムとロミオの2人の対戦を観戦しているルゥが、リグルディアとトウコの2人がヒートアップしてきているのを聞き逃さなかった、というかむしろ取っ組みあって騒ぎ出したので驚きゲームを止めた。


「わっ!?え、なに!?ディアちゃんとトウコどうしちゃったの!?」

「な、なんスか!?ちょっと!姐御もディア...」


ルゥがティムの脇腹を肘でどついた。


「ぐうぇっ!?ソ、ソノ...オフタリトモケンカハオヤメニナッテ...」

「これは!?2人とも!落ち着いてくれたまえ!あぁ!トウコ危ない!すぐそこに君の大切な作業机が!?」


3人の制止も聞かずに女2人は取っ組み合いながらギャーギャーと互いに好き放題言い合って喧嘩をしている、どうしてこうなった。


「いい加減にしなさいよこの頑固女!誤魔化せると思った!?誰かを助けたいとか思ってるくせに自分のことは放っておいて欲しいとか!めんどくさいのよあんた!」

「はぁ!?オメェこそ頼んでもねぇのに人のデリケートな問題に頭突っ込もうとする腐った魔猪まちょ女だろうが!」


「はぁぁぁ〜!?言ってくれるじゃないこの細目東海人とうかいじん!あんたたちの顔見分けつかないのよ!」

「うるせぇわ!あたしたちからも北陸人ほくりくじんの顔見分けつかねぇんだよ!!」


「うるさーい!!早く折れなさいよこの頑固女ー!!」

「うっせぇぇぇ!!オメェこそさっさと離れやがれこのお節介女ー!!」


獣人の喧嘩のようにギャーギャーと取っ組み合う2人を止めるべく、ルゥは意を決して嵐の中に飛び込んでいく。


「ちょっと!?ほんとに落ち着いてよ2人とも!」

「おぉ!?ルゥさんが行ったッス!!」


しかし結果は即負けで。


「ルゥは黙ってて!!」

「オメェまで入ってくんなルゥ!!」


「ビャアァァ!?」


怒鳴られたルゥは即座に猫獣人のように即座に後ろに飛び退いた。


「ルゥさぁぁぁん!?」


◇ ◇ ◇


あたしとトウコの2人が取っ組みあってギャーギャー言い合っていると、ついにブチ切れたロミオによって2人で椅子に座らされていた。


「なんであたしが...」


ロミオはいつもよりもかなり低い声で文句を言いかけたトウコを黙らせた。


「あぁ?(ド低音)」

「あ、いや、なんでもねぇよ...」


ロミオは魔力の扱いに長けた魔族特有のオーラをこれでもかと発しながらあたしたちを威圧する、魔族は人類と比べてその種族の「在り方」という名の本能に従う欲求が強い種族。


「うっわぁ...ブチ切れたロミオさんなんて俺初めて見たッスよルゥ君...キレた魔族怖ぇぇ〜!」

「あわわ...!誰...!?ロミオさんってあんな風に怒るの!?」


獣人も人類の中では本能が強めだが魔族は獣人と比べてその本能が飛び抜けて高い、あとから聞いた話になるけど、インキュバスという種族は男という存在を愛していて、どこまでも深い無償の愛を誰にでも与えるらしい、サキュバスはその女版。


「あの...騒いでしまってごめんなさい...反省するわ...」


ロミオはあたしたち2人がルゥに怒鳴ったことで男を愛するインキュバスの本能が爆発、首からぶら下げていた笛を吹くと、あたしたちの周囲にどこからともなく植物のツルや根っこが大量に現れる。

そしてあたしたちを拘束して無理やり椅子に縛り付けると、オーラの凄まじい圧だけであたしたちを黙らせたのだった。


しかしその口調はキレる前と変わらず紳士的なもので柔らかい物言い、でも顔に感情が乗ってなくてすっごい怖い。


「君たちに何があったのかは後で聞くとして、君たち2人の騒ぎを止めようとしてくれた私の可愛いルゥ君に対して、あのような物言いは如何なものかと思うがね?」

「ちょっとー!僕を勝手にロミオさんのものみたいに言うの止めてよ!」


ロミオはルゥを無視した。


「...ルゥ、怒鳴って悪かった」

「あたしも...ごめんなさい...貴方はあたしたちを止めようとしてくれただけなのよね...」


最後にロミオはあたしたちにもう喧嘩しないかだけ聞いてきて、もうしないと答えるととても安心したように笑って、さっきまでの怖い圧が嘘のように無くなりあたしたちを拘束していたツルと根っこが魔力の光の粒子となって消えていく。



「よかった!2人がこれから仲直りしてくれるようで私もとても嬉しいよ!」


ロミオは緊張が解けたのかニコニコ笑いながら上着を脱ぎ出して上半身裸に...ってなんで!?なんで脱ぐの!?


「ちょっとロミオさん!?」

「あっ...すまないね」


ロミオはそういうとまた上着を着てニコニコ話し出す。


「いやぁ、そのだね、インキュバス族とサキュバス族は仲良くする...というか実は臆病な性質なもので、争いごとが苦手なんだ、私は特に苦手なもので、身内には喧嘩なんてして欲しくないのだよ...だから...」


あっ違う、ニコニコしてるけど笑ってるんじゃなくて、あたしたちが喧嘩して内心傷ついてるのを隠してるんだ、この人はとても優しい人なんだわ。

あの二人に怖い思いをして欲しくなくて、身内が喧嘩しているところも見たくなくて、そこにインキュバスの性質が働いてあんなことになった。


「ロミオ...お前...」

「だからトウコ、私たちに包み隠さず悩みを全て打ち明けておくれ♡」


あ、それはそれで容赦もない人だわこの人。


「なっ!?いやそれは...」

「トウコ...?」


また顔が怖くなった!!


「あぁー!分かった!分かったから!全部言う!」


ロミオの圧に慌てたトウコは、何故か椅子から立ち上がって部室の鍵が閉まっているかを確認し、さらに部室中の窓のカーテンも閉めて外からの視線を気にしだす。


「ちょっと、なにやってんのよ?」

「うるせぇ、他の奴らにバレんの嫌なんだよあたしは」


そして彼女は...


「おい男ども、あっち見てろ」


トウコ?貴方一体何する気なの?


「え?なんでッスか姐御?」

「いいからルゥとロミオと一緒にあっち向いてろティム、引っ掻くぞ」


ティムはトウコに脅されて正直に言うことを聞いた、男たちが反対側を向いて、さらに目を閉じさせると。


「ちょ!?ちょっと!?トウコ!?貴方なんで服を脱ぎ出してるのよ!?は、破廉恥じゃない!?」


トウコがいきなり服を脱ぎ出して全裸になった!?


「はぁぁぁ!?今全裸なんすか!?姐御!?なにやってんの!?」

「うるせぇぞ、今からやることにこれが邪魔なんだよ」


そして全裸になったトウコは目を閉じて深呼吸をすると、その瞬間から彼女から魔力とは違う何かの力を感じて、彼女に向かって周囲の空気が、魔力が集まっていくような感覚を覚えた。


「なっ!?」

「...っ!」


次の瞬間、彼女の周囲はどこからともなく生まれた煙に包まれ見えなくなり、彼女の周囲の空気と魔力がバァーっと辺り一面に煙と共に広がっていく。


「けほっ!けほっ!な、何が起きたのよ!?」

「うわぁ!?なに!?ディアちゃん大丈夫!?」


「っ!?トウコ...!?何をしたんだい!?」

「ぎゃあぁぁ!?なになに!?怖いんスけど!?」


突然の出来事に4人1同は軽くパニックを起こす、しかし何かの力を帯びた煙が晴れて消えていき、その中に不満そうな顔で佇んでいるそれを見た瞬間、パニックは静まり代わりに困惑と驚きが4人の思考を支配した。


「はぁ...めんどくせぇ...」


そこにいたのは、なんだか性格の悪そうな目つきの悪い...


「き...狐だぁぁぁぁー!?(×4)」


四つの尻尾を持つ狐へと姿を変えたトウコの姿だった。


「お前らうるせぇ!!外に聞こえんだろうが!!」


◇ ◇ ◇


トウコが狐へと姿を変えてしばらく、あたしたちは何が起こったのか分からず呆然とし尽くしていた、だってトールマンだと思っていた相手が実は妖精族である狐だったんだもの、にしてはなんだか違和感があるような...


この世界には狐という種族は獣人族ではなく妖精族という種族として存在している、四足の獣型の生き物で気まぐれでいたずら好き、人間によくいたずらしている話が多いが同時に人懐っこく、懐かれた人間は親身にすることで困った時に助けてくれるという。


「すげぇ!姐御って妖精族だったんスか!?でもなんで尻尾が4本もあんの?」


ティムがトウコを撫でたそうにウズウズしている、あたしも狐を見たのは初めてだったから正直撫でてみたくて、あたしもウズウズしてる。

狐は北の大陸の北の地域、寒い方にしか居ないらしいから南寄りの場所にあるダイアモンド王国では見ることがなかったのだ。


「あのなぁ、なんか期待してるとこ悪いが、あたしはお前らが思ってるような狐じゃねぇぞ?」

「おや?トウコ、それは一体どういう意味だい?君が狐だったことには正直驚いたがまだ何か隠していることがあるのかな?」


なに?まだ何かあるの?はっ...!!もしかして、トウコの妖精族の不思議な力で、魔法で証拠隠め...


「あたしは妖精族じゃなくて妖怪だ」


あ、違ったみたい、はっずいわね...


「妖怪?妖怪って...なんだっけ?僕忘れちゃった」


【妖怪】それは東の大地のニッポン共和国島にいるとされる存在、魔族と同じようなものでニッポンの人類たちと共に独自の文化を築いてきたという。


「妖狐ってやつでな、こっちでは狐は獣なんだっけか?あたしら妖狐は多くは神様に仕えたりしてるんだが、まぁあたしみてぇな根無し草もいるってわけ」


へぇ、こっちにも神様に仕える獣の神話は多いわ、でもそのほとんどは神界で神様と居るらしいし、こうやって神に仕えるような種族が人間界に居るってことはニッポンは人類と神様の距離が近いのかしら。


「トウコ、君は何故尻尾が4本もあるんだい?それに君から魔力のようで...魔力とは違う何かの力を感じる...」

「お前らがあたしから感じてる力の正体は【妖力】だ、これはニッポン人と妖怪特有の力で魔力とは違う、それにあたしら妖狐は尻尾の本数が力量の目星になっていて、尻尾が多いほど強い」


なるほど、トウコから感じる力の正体は妖力ってものなのね、それに尻尾が多いほど強い...じゃあ4本のトウコはどれぐらいの強さなのかしら。

...いつか手合わせとか願えないかしら。


「はぁ...バレちまった...あたしが狐だってことがバレちまった...お前ら!このこと誰にも言うんじゃねぇぞ!?」


トウコはお座りの姿勢で後ろ足で床をバタバタと叩いた、でもなぜそんなに狐であることが知られるのが嫌だったのかしら?


「ねぇねぇトウコ、なんで今まで僕たちにこの事を隠してたの?」


切り込むわねぇ〜ルゥ。


「うっ...それは...お前と同じだよルゥ」

「え?僕と?」


「そうだよ、あたしら妖狐は神に仕える種族なんだ、でもあたしはこの通り神に仕えもせずここでお前らと毎日遊んでばっかりで、それにあたしみたいな狐は世間では野干やかんって呼ばれてズル賢い詐欺師ってイメージらしくて...その...」


なるほど...トウコも自分の狐としての姿がコンプレックスだった...ってことだったんだ。


「トウコ...そんなことないよ!まぁ、正直に言うと、トウコは悩んでる人を見ると漫画のネタにする為に話を聞いてはショボいって裏で文句言ってるのはどうかと思うけど...でもトウコは話は最後まで真面目に向き合う優しい人...あ、いや狐さんだって知ってるよ!」


ルゥの言葉にティムとロミオも続いて。


「そうッスよ!姐御は性格悪いところもあるけど、それだけじゃなくて良いところもあるって俺知ってるし!」

「そうさ!この2人の言う通り!君のその姿は神々しくてとても美しいじゃないか!毛並みも整っていて美しい、もっと自分に自信を持ってくれたまえよ!」


「お前ら...!!」


3人の励ましの言葉に、トウコは一瞬感極まった様子を見せて。


「お前ら2人とも一言余計なんだよこの阿呆!!この際だからあたしが気づかないとでも思ったのか!?あぁ!?」


トウコが叫ぶと共に前足で床を叩くと、ルゥたち3人の下から光の粒子で出来た腕が3人の顎を掴んで思いっきり上へ上げてグリグリ左右に揺らす。


「グエェェー!?トウコ〜!ごめんなさい!さすがに僕が悪かったよ〜!」

「姐御〜!!マジで謝りますから!勘弁して...!っていうかこう言われるのは姐御の自業自得...アダダダダ!!すんませんした!グリグリは止めてッスゥゥ〜!!」


「なぜ私もなんだいトウコ...?」


...バカ男子。


「お前ら...ほんとに...このっ!アホが!」


トウコはルゥとティムの2人、ついでにロミオに怒って、3人がトウコの顔を見れないように顔を上げ続けて...あれ?なんかトウコの顔が...


「...っ!?あっ忘れてた...!?お前もこっち見んじゃねぇよお嬢!」


アガッ!?あたしも!?ていうか、今トウコの顔がぎこちなかったけど笑ってたような...?


「ねぇ!?トウコ!貴方!今...!オゴァっ!?」

「あー!あぁー!?言ーうーなー!?」


...なるほど、トウコもあたしと同じだったってわけね...あたしも、トウコも不器用過ぎない...?


◇ ◇ ◇


そしてトウコをやっと落ち着かせることが出来たあたしたちは、トウコが何故漫画家を目指すのか、何が彼女をそこまで駆り立てるのかを聞くことになった...


「はぁ...そうだな、長くなるぞ、お前らそのゲーム閉じろ」


そして、トウコの口から語られたものは...


◇ ◇ ◇


あれは、蝉たちがやかましい、生命溢れる夏の季節のこと、うるさいクソじじぃどもから逃げて、避暑地の山の森の中でその狐は涼んでいた。


「珍しいな、あんな所に人間がいるなんて」

「珍しいね、紙に何かしていたけど、呪術師なのかな?」


通りすがりの小柄な2匹の妖怪たちの会話を盗み聞いて、気になったあたしはその人間がいたという、山の中にある遠くの町を一面見渡すことが出来る隠れスポットに向かう、そこには黒髪短髪の儚げな雰囲気の1人の青年が、山から見える町の景色をスケッチブックに描いていて。


「...誰だい?そこに誰か居るのかい?」




to be continued




「後書き」

ハート、コメントに星などありがとうございます!


【魔力と妖力の違い】妖力は魔力と同じで生き物から生命力と共に溢れ出るものだが、決定的な違いは【属性】を持たないこと、さらに魔力と妖力は相性が悪いのか両方持つ者は現在もなお現れていない。

【妖力の影響】妖力は魔力と違い周囲の物体、生き物に何かしらの影響を与える性質を持つ、空気と共に漂う妖力自体は影響力が少ないため実質影響は皆無だが、稀に物体が付喪神に成ったり、獣が妖怪へと覚醒したりすることがある、強い感情がトリガーになるという仮説がある。

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