第2話「リグルディアお嬢様、学校へ行く」
前書き
どうもシロニです、マイペースに投稿します、どうぞよろしく。
「前回のあらすじ」
ここは乙女ゲーっぽい世界観、そして悪役令嬢ポジ「リグルディア・ミッツェロス・ディアーナ」は主人公ポジの恋敵「エリーデ」に愛しのトーマス様を取られまいと日々邪魔をしてやるべく暗躍していた!
しかし毎回トラブルや紙一重で回避されてしまい、リグルディアの計画は結局一度も成功することはないのだった...しかし運命の日、リグルディアはエリーデが本当は男だったこと、そして愛しのトーマス様はゲイでそもそも自分は恋愛対象にすらならないという衝撃の事実を知ってしまう。
だが、リグルディアはなんとこのタイミングで自分がBL好きであることを自覚してしまい、妄想の中でエリーデとトーマスをカップリングさせて創作に励むというとんでもない暴挙に出てしまう!?
そして翌朝になって冷静になりやっぱり死にたくなってしまったリグルディアは、王都の魔術学校に向かう空飛ぶ魔法の馬車の中で何度も「死にたい...」と呟くのだった。
◇ ◇ ◇
快晴の青空を1台の空飛ぶ魔法の馬車が飛んでいる、2匹の尻尾と鬣(たてがみ)を綺麗な三つ編みに結ばれた逞しい馬が、大地を駆けるのと同じ様にその生命力に溢れた軽快な足取りで空を駆けていく。
「ロビン!アルフレッド!空を駆けるのは気持ちいいかい?」
2匹の手綱を握るソルが気持ちよさそうな笑顔で2匹に問いかける、2匹は肯定の意を返すように威勢良く嘶く(いなな)そしてソルは満足そうに手綱をしっかりと握りながら2匹と同じ風を感じていくのだった。
ただし後ろのキャビンに居る彼女は全く調子が良さそうではない。
「なんで...なんであたしあんな正気の沙汰でない行動なんかしたの...」
リグルディアは昨夜、自室で本棚の中からまだまっさらだったはずの新品同様の日記帳を探すと軽く付いていた埃を払い、もしも2人が1つ屋根の下に一緒に暮らしてあんなことやこんなことがあったら...という妄想を忘れない内に全て書き残さんととりあえず日記帳に筆を走らせていた。
しかし翌朝冷静になったリグルディアは自分が昨夜行った行動に疑問と焦りを覚え、自分もソルのように変態女になってしまったのではないかと深い絶望を抱いていたのだった。
「あぁ〜!これからあの二人にどんな顔で接すればいいのよー!?」
リグルディアはキャビンの窓に頭を乗せて項垂れる、今まで女であり憎き恋敵としてエリーデを見てきたが、それがまさか男であったなど気づきもしなかったのだ、さらに自分のエリーデを見る目が明らかに変わっていることに強い混乱も覚えていた。
「それだけじゃないですよ〜お嬢様、トーマス氏の恋愛対象がまさか男性とはこの私もまさに節穴でしたが、大丈夫ですかねお嬢様?そもそも惚れた相手の眼中にすら入らないことが発覚いたしましたが?」
「いや...確かにそれはそれですっごいショックなんだけど!それ以上に驚きと自分のこの未知の感情に対する混乱が強すぎるのよ!」
リグルディアはさらに頭を抱えだす、さすがにこの状況では無理もない。
「まぁまぁお嬢様、少しずつ理解して慣れていきましょうよ〜」
ソルはこの状況に意外にも安堵していた、何故ならば奇想天外な状況だとしても、自分の主が何か生きがいを見つけて精神的に安定してくれるのは嬉しいことだからだ。
ソルはリグルディアが7歳、母親がリグルディアの父親であり王都から離れた田舎の領主である「セルゲイ・ミッツェロス・ディアーナ」と関係が悪くなり別居しだした頃に彼がが雇った従者であり護衛、ソルはリグルディアに生涯の忠誠を誓い、地獄の底までもお供する絶対の覚悟を抱いている。
ソルの一族であり家名でもある「コアツィルス一族」はその歴史のほとんどが謎に包まれた一族、信仰心と主と認めた者に対する忠誠心が強いのが特徴で、世代を跨いでとある「何か」を継承していく文化があるという、そして一族全員戦いに秀でてもいるという。
リグルディアはソルが何故自分の元に仕えるのか、セルゲイは何故、そしてどんな関係でソルと知り合ったのかを知らない、ソルの方から何か目的がありダイアモンド王国に来たことは間違いないようだが...
「お嬢様〜もうすぐ王都に到着しますよ〜」
「ソルー!あたし今日はもう休みたい!こんなんじゃ授業なんてまともに受けれないわよぉー!」
リグルディアは自分に偏見なく接し、忠誠を誓うソルを性癖に振り回されながらも受け入れ、きっと悪いものではないと思い、無自覚に信頼していた。
「ダメですよ〜これも神様のお導きと信じましょう!それに今までエリーデ氏の邪魔をしようとしてきた天罰だと思って、悔い改めて新たな気持ちで頑張っていきましょうよ〜」
「いやよ〜!!」
◇ ◇ ◇
そんなこんなで王都に着いたリグルディアは、結局ソルの手により魔術学校に連れられ授業を受けるのだった、 しかし今の乱れた心が集中など出来るわけもなく。
「はぁ...」
リグルディアはため息を吐きながら教師の話を聞いている、しかし右から左へ抜けていくように全く話しが頭に入ってこない。
「お嬢様、集中しないと大事なことを聞き流してしまいますよ」
「分かっているわソル、でもどうしても気分が優れないのよ...」
リグルディアは身内以外の生徒やその従者たちもいるとあってか、いつもより口調がお淑やかになっていた。
「こんな乱れた心の状態ではとても授業なんて受けていられないわ...私はどうしたら...」
リグルディアが頭を悩ませていると、前方下側の座席に2人で並んで座っているエリーデとトーマス2人の姿が見えた。
「...っ!?」
リグルディアは2人が視界に入ると途端にハッとして、目線が2人から動かなくなる、そしてリグルディアはあくまで冷静に授業を聞いている様を装い、意識上では完全に2人の様子をこっそり観察するのに夢中になっていた。
「(あの二人に気づいた途端に急に表情が凛々しくなりましたね...)」
ソルがリグルディアが何も言わなくとも全てを察した、そしてエリーデがうっかりペンを落としてしまい。
「あっ...」
エリーデが拾おうとするがそこにトーマスが何も言わずに先にペンを拾おうと手を伸ばす、しかし互いに自分が拾おうとしたためにうっかり手が重なってしまい。
「あっ...!おいおれが拾お...(小声)いや私が...え、えっと...ごめん」
「い、いや...別にいい、なんだか気を使わせてしまってすまないな...」
「ううん!大丈夫だよ、私のペン拾ってくれてありがとうトーマス君!」
「あぁ、どうもいたしまして」
その後2人は前に向き直り話に耳を傾ける、しかし周りの淑女たちは先程の出来事にこそこそと盛り上がっていた。
「キャー!なんですの!?エリーデ様の先程の少し照れた様な表情は!?」
「私この目でしっかりと見ましたわ!エリーデ様とトーマス様の手が重なり合い、2人が恥ずかしそうに手を引くのを!」
「エリーデ様とトーマス様は普段からお二人で行動を共にするほどの仲良し...ならばあれは...あらあら!可能性があると考えて間違いないはないということですわね!」
「予言の光の巫女様と、美の男神の加護を受けし一族のトーマス様ならきっとお似合いなはずですわ〜!」
淑女たちがキャッキャと盛り上がり、教師に軽く注意をされている中、ソルは内心ツッコミを入れていた。
「(いや私は聴き逃しませんでしたよ、エリーデ氏が完全に「あっ!おい俺が拾うから!」と言いそうになったのを、それに一人称まで変わっていたので素が出そうになったのを咄嗟に誤魔化しましたね...)」
そしてソルはそのまま横目でリグルディアを見る。
「えへへ...♡(ニヤニヤ)」
「お嬢様、お顔が乱れていますよ(耳打ち)」
「っ!?あ、危なかった...」
リグルディアは完全に今までの悪役令嬢キャラが崩壊するほどにすっかり変貌を遂げていた、その後もリグルディアは授業を聞かずに先程の出来事を材料に妄想を広げて「帰ったらすぐに描き残そう...」と考え出す始末。
「はい、ここで誰かにこの問題を解いてもらおうかしら?誰に答えてもらおうかな〜?」
巨乳にお淑やかな雰囲気の女魔術教師は生徒たちを見渡して、答えられそうな人物を探す。
「この問題はちょーっと難しいからねぇ〜頑張って解いてもら...っ!?」
巨乳女教師はリグルディアを見た途端に2度見して目を疑う、何故ならば闇属性を持ち、近づきがたい雰囲気のイメージを持つリグルディア令嬢が口の端吊り上げながら、ニヤニヤとした妄想に耽る顔を無防備に晒していたからだ。
「えっ...!?なっ?(目を疑い、少し目を擦る)」
その隙を見逃さなかったソルが騒音魔法を周りにバレないよう教室の入口付近に巧妙に放ち大きな物音を立てる。
「キャッ!?なんの音!?」
生徒たちの意識を誘導すると同時に、ソルは妄想の世界に耽るリグルディアを現実に連れ戻す。
「お嬢様っ!お顔!お顔が大変愉快なことになっております!戻ってきてください!」
「...っ!?ソル、あたしヨダレとか垂れてないわよね!?」
「瀬戸際です!」
「っ!?」
リグルディア慌ててお淑やかを取り繕うと、何もなかったかのように周りに同調する。
「はぁ...一体なんだったのかしら、え、顔が...あ、いやなんでもないわ!それじゃあリグルディアさん、この問題を答えてくれない?」
リグルディアたちが行っている授業は「術式」と「魔道具」について、この世界の魔法は術式を対象に刻んだり、術式を構築することであらゆる奇跡を行使する、描く術式の精密さ、長さ、神の文字と呼ばれる「神聖文字」の量で行える奇跡と魔術の稼働に必要な魔力が変わる。
一般的には物に術式を刻み、魔導石と呼ばれる術式と魔力が込められた魔術の制御を助ける特別な石を使った「魔道具」と呼ばれる物を使い人々は魔法を使う、魔力さえあれば誰でも使える便利さが特徴だが、一定以上の動作や効果が出ないのも特徴。
一方で術式のみの魔術の発動は非常に困難で、魔術師の能力と力量が顕著に影響を及ぼしとても不安定、しかしやがて「賢者」と呼ばれるようになる魔術の天才たちは、これを難なく行いどんな規模の奇跡も起こして見せるのだ。
「素晴らしいわリグルディアさん!正解よ!(さっきのは私の気のせいだったのかしら...)」
リグルディアは巨乳女教師からの問題に答えると黒い長髪をなびかせ、答えられて当然といった様な表情でクールに座席に戻る、しかしその表情の裏では必死に心臓の高鳴る鼓動を隠す等身大な少女がいる。
「(...さっきのあたしの顔、誰にも見られてないわよね?見られてないわよね!?)」
「...」
しかしリグルディアはとある1人にしっかり顔を見られているとは知らず...
◇ ◇ ◇
そして授業が終わり長い昼休み、教室をそそくさと出たリグルディアとソルは庭園へと続く人気のない方の廊下を選び、周りに人が居ないのを確認するとリグルディアは大きく深呼吸をしだした。
「ッスゥー!ハァー!スゥー!ハァー!あ〜もう本当にしくじったわ!あそこであんな醜態を晒すなんて!」
「私もお嬢様のあのとても淑女とは思えない表情を見た途端驚きましたよ、私に感謝してくださいねお嬢様?私の咄嗟の機転がなければお嬢様の妄想に耽るニヤニヤ顔がクラス中に...」
「あぁーもうー!分かったから!ほんとにありがとうねソル!これでいい?」
「はぁ?何を言っているんですかお嬢様?そんなのが私に対する褒美になるわけがないでしょう?」
「へっ?ダメなの?なん...あぁ...」
ソルはリグルディアが察したことを察して、後ろに振り向いて尻を突き出す。
「さぁ!私はいつでも準備万端でございますお嬢様!私にお嬢様のとっておきの蹴り」
「ふんっ!!」
リグルディアはソルを無視して足に魔力を込め、さっさとケツを蹴り上げる、この蹴りは絶対に人に向けてしてはいけないレベルの暴力になっていたが...
「んっ♡♡♡♡♡いいダメージですよリグルディアお嬢様♡♡」
何故かソルはこの一般人が受けたら絶対大怪我では済まないレベルの攻撃を受けて、尻に軽く痛みが残るレベルで済んでいた。
「これで生きてるのがワケわかんないのよ」
「ん〜♡ありがとうございますお嬢様♡」
「なんであたしがお礼する側のはずなのにあんたが喜んでんのよ」
リグルディアはソルの変態ぶりにいつものように呆れていると、近くから2人分の足音が聞こえてきて。
「っ!?」
「...?」
2人は咄嗟に天井にまるで蜘蛛型の魔物のように張り付き隠れる。
そしてそこに現れたのはエリーデとトーマスの2人、どうやら2人も庭園へと向かいに来たらしい。
「なぁトーマス、庭園なんかに来てなにすんだ?食べるなら食堂でいいだろ?」
「よくぞ聞いてくれたギデオン!俺たちは昨日秘密を打ち明け合いさらに友情を固く結びあった魂の双子だろう?」
「おい待ってくれ、なんだ魂の双子って、お前の中で俺はそこまで格上げされてるのかよ?」
どうやらエリーデこと本名ギデオンは2人しかこの場に居ないと思い完全に素が出ているようだ、一人称も口調も彼本来のものに変わっている。
「謙遜なんかしなくていい!君は男として産まれながらも愛するご家族の為に日々光の巫女として演じているんだろう?世間に望まれた姿を産み落とさなかった愛する家族を多くの批判から守る為に!君は常に本当の自分をひた隠しにして民の理想を演じている!」
「それは決して簡単なことではないだから俺はそんな君の心の美しさに惚れ込んだんだ!ぜひこの俺とさらに絆を結ばせて欲しい!そして君の茨の旅路を支える友としてお供させてくれ!」
トーマスはギデオンの両手を握り、目をキラキラさせて尻尾をブンブンと元気よく振りながら困る勢いで言葉をまくし立てる、悪意はないし、ギデオンのことを純粋に慕う気持ちしかないのでギデオンは尚更に困った、ギデオンは両親意外にここまで純粋に想われたことはないのだ。
「分かった!分かった!そんなに強く握るなトーマス!」
ギデオンはとある田舎の農家の元に産まれた男の子、産まれたその日から高い魔力と光属性の力を発揮して家を半壊させ村中にその話はあっという間に広がった、村人たちは光の巫女が産まれたと大いに喜び、舞い踊ったが、各々ギデオンの性別を知った途端凍りついた、何故ならば女ではなく男が産まれたからだ。
そしてもしこれがバレたら大変なことになると両親や村人たちは必死になって考え、ギデオンを女として育てることにしたのだ、しかし幼いギデオンは全く女らしくなることはなく、男児のわんぱくぶりと反抗心から女として振る舞うことはなかった、あの日までは。
「俺は美しいものを護る為ならばこの身を削ることを一切
そしてギデオンはそのままトーマスに振り回されながらも、トーマスがギデオンと中を深める為にわざわざ有名シェフを呼んできてまで用意した食事会に半ば無理やり連れていかれるのだった。
「ちょっと待て!?なんで俺みたいな庶民出身の女...いや男の為に貴族様がそこまで気合い入れてんだよ!?」
「ハッハー!遠慮するなギデオン!金のことなら心配するな!全て俺が受け持つさ!」
トーマスこと「トーマス・ナイス・グットガイ」王都近くに領地を構える貴族の「グットガイ家」の次男の狼獣人、銀色の体毛に朱色の瞳、狼獣人族の男らしい優れた体格にクールな容姿を持ち女性によくモテる彼だが、その中身は美しいものが大好きな芸術家気質の愉快な人物、あとゲイである。
グットガイ家はかつて世界が魔王の危機に脅かされた317年前、かつて勇者に力を貸したと伝えられている美の男神の加護を代々受けし一族であるとされている、グットガイ家の屋敷には男しかおらず、領主は妻とは別居している。
しかし仲が悪いわけではなく、グットガイ領地のすぐ隣には「ビューティー家」というグットガイ家と対をなす一族がおりこちらは美の女神の加護を受けている、こちらも屋敷には女しか居ない、グットガイ家とビューティー家は家族でありとても仲良しではあるのだが、わざわざ男女で別居している理由は謎に包まれている。
そしてギデオンとトーマスが走り去っていくと、リグルディアとソルは落ちるように天井から地面に、天井に引っ付く為に踏ん張っていたため、魔力切れを起こし激しい慟哭と息切れを起こすのだった。
「ハァ...ハァ...!魔力...が...」
「うーん魔力切れはこれはこれでキツイのですが...これは気持ちよくないんですよね〜」
そして2人が深呼吸をしていると、リグルディアの後ろから何者かが心配そうに二人に声をかける、このタイミングで。
彼は白シャツの上に青色のパーカー、グレーのスラックスにスニーカーを履いた、フードを深く被り少し俯いたなんだか自信なさげな雰囲気を感じる小柄な少年だった、股の間から尻尾が見えるため獣人族かと思われるが、フードの中から見えるその顔や、手足の特徴は明らかにトールマン族のものだった。
「そ、その...大丈夫?リグルディア...さん」
「っ!?(しまった!?まさか天井に張り付いてるところを見られた!?絶対変な噂流される〜!うわぁー!どうしたらいいのにめかてて⊿△:¥m43phud以下解読不能)」
ソルは声をかけてきたその人物に心底驚き、内心慌てていた、何故ならばその人物の気配を全く感じ取ることが出来なかったのである、ソルは日頃学園の生徒を狙う刺客や不審者の気配を感じ取りリグルディアの意識外で始末しているのだが、武に長けたコアツィルス一族が気配を感じ取れない程隠れるのが上手なその者に、ソルは最大限の警戒をした。
「(尻尾がある...?彼は獣人?いやしかし顔や体格が...トールマン?この特徴は...「あれ」しかない、いやしかし...彼からは悪意や殺意を感じない、「あれ」なのに...?どういうことなんですかこれは!?)」
「アバババババ(あばばばばばば)」
「え、えっと...リグルディア...さん?あ、あの...ソルさん、彼女...大丈夫なんでしょうか...?」
「あぁ〜えっと...どこまで見てましたか?」
「...その、最初から...授業中になんだかいつもとは違って様子がおかしかったところから」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
リグルディアは醜態を見られたことを嘆き、その叫びを響かせた。
◇ ◇ ◇
「あの〜分かっているとは思いますが、見たことはどうかご内密に、でないとお嬢様が(羞恥で)死んでしまいます」
「...(横目でチラッ)」
青年は傍らで顔を抑えながら横にうずくまるリグルディアを心配そうに見る。
「シテ...コロシテ...」
「貴方が内密にしてくれればお嬢様は致命傷で済みますから...」
「それ死んでるじゃないですか!?」
「おっとぉ...いつもの癖が...どうか忘れてください、とにかく貴方が先程から見てきたことを秘密にしてくれればいいんです、そうすれば私も返り血で汚れずに済みます^^」
「ヤメテ...ソル...(顔を抑えながら)」
そしてリグルディアはフラフラと立ち上がり少年のに向き合い肩にガッ!と両手を置いて念を押した。
「〜!とにかく!誰にも貴方が見たこと言わないで!本当に!お願いね!?」
「う、うん...!」
その時、ふとリグルディアはフードの中にある彼の耳を視界に捉えてしまう、その耳は金色の毛を纏い、猫獣人族のような形をしていた、しかし猫獣人であるならば耳の位置や身体が体毛に覆われていないのはおかしい、とはいえトールマン族であるのならば尻尾が生えているのはおかしく、耳もトールマンのものではないことは一目瞭然だ、ならば...この種族としておかしすぎる少年は...
「えっ...?ま、まさか貴方...」
「えっ...あっ!?み、見ないで!!」
少年はリグルディアから離れるように身軽に飛び退き、床に蹲って耳を見られないように俯き顔を隠す、そしてその身体は虐げられると思った恐怖からか、それともトラウマか何かを思い出してしまったのか、ガクガクと少し震えてしまっている。
「ソル...もしかして彼って...」
「えぇ、リグルディアお嬢様、彼はあの害獣「コンプレックス」に間違いありません...」
to be continued
後書き
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