第7話

彼の視線を辿るとその先にあるのは塾校舎ではなく。



「…あの校舎が建ってから西日が当たらないんだ」



彼が見ていたのはその隣に在るもの。



塾校舎の大きな陰を浴びて建つ、古びた小さな図書館だった。



「本来ならあのステンドグラスに夕日が差し込むはずなんだ」



塾校舎と向い合った図書館の面には確かに申し訳程度の小さなステンドグラスの窓がある。



大きな陰に覆われて今の今まで全く気が付かなかった。



「…邪魔なんだよね、あれ」



淡々と話す彼の口調はどこか冷めているのに、それに反して彼の瞳には熱情が籠って見えた。



ささやかな狂気を見せられたようで微か息がに詰まる。



彼は本気なのだ。




「…でもたったそれだけの理由で…」



絞り出した言葉は彼の鋭い視線に斬りつけられた。



「…たったそれだけ?」



いつも彼がこちらへ向ける、「お前に俺の何が解かるの?」とでも言いた気な生温い目はそこにはない。



まるで私を敵のように射抜いて彼は抑揚なく続ける。



「あの無粋な屑がそこにある限りあの窓には永遠日が当たらない」



ただでさえ白昼の光が当たらないのに、西日まで取ってしまったら死んだも一緒だ。なんて、



それはまるで病床に伏せる人間を庇うかの言い様だ。

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