第5話

遠回しに「証拠は挙がっているんだ」と伝えているのだけど、彼はいつもだんまりで、私の声なんて聞こえていないという風にそっぽを向く。



今日もそうなんだろうと溜息を吐いたのと、彼がポケットからカタンと小さな金属物を取り出して鍵盤の上へ置いたのはほぼ同時だった。



「これは…」



鍵。



塾の鍵だ。



彼はあの塾の生徒ではない。



手に入れるのは容易ではなかったはずだ。



「どうやってこれを…?」



この問いに彼は答えなかったけど、実質あの夜に塾校舎に忍び込んでいたことを認めたようなものだった。



これはもう核心を突くべきか。



「あなたのクラスメイトの…怪我を負った佐伯さんあれから元気?」



彼はそこで今日初めて私を真っ直ぐ見つめる。



「…さあ?」



その瞳に何の感情を纏っているのか私にはまだ読みとれない。



「爆発後彼女を心配したでしょう?よかったわね、大事にならなくて」



彼は私から視線を逸らさないまま、ゆっくりと口を開いた。




「別に死んでもよかったよ」

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