第12話

それでも河合くんは彼らと上手くやっていた、というか少なくとも彼らを相手にしていないようだったのに。



「…お前さぁ、松岡たちに悪口言われてたの、知ってる?」



「え?」



「『河合に優しくしてんのはいい人ぶりたいからだろ』とか『偽善だろ』とか…とか」



それは正直松岡たちだけじゃない。


一部のきつい女子からだってちくりと言われたことがある。



「…でも事実だよ」



「え林、」



「だって河合くんにいい人って思われたいから全部やってることだもん」



掃除を手伝うことも、提出物を一緒に届けてあげることも。



誰にどう思われたって構わないけど、河合くんにいい人って思われたいからやって来たことで。



「…ふぅん」



私の言葉をどう捉えたか椎は曖昧な相槌を打って小さく続けた。



「それじゃ河合が怒ったのは無駄だったな」



「…河合くんが?」

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