第8話
小さく笑う河合くんと顔を合わせて私は肩をすくめた。
「椎は酒向さん以外の女の子の前では弾きたくないんだって」
「言ってねぇよ。言ってねぇしあいつは関係ねぇよ」
「分かってる分かってる。酒向さん大好きだもんね」
「両目潰すぞお前」
「椎よ、失恋を癒すには新しい恋だよ、椎くんよ」
「なに急に林怖い」
「私が付き合ってあげようか」
「はぁ?」
冗談で言った言葉はちゃんと椎にも伝わっている。
くだらないとばかりにため息を吐いた椎をにやにやしながら眺めていると、私を睨んで逸らした椎の視線が一瞬止まった。
その視線を追って振り返った先に河合くん。
地面に視線を落とした河合くんはそのやる瀬ない瞳で真っ直ぐ海を見つめて。
私と椎の視線に気づくと青年はちょっと慌てたように苦笑して誤魔化す。
「…ふぅん」
なにやら納得したような椎が背後に置いてあるアコギに手を伸ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます