第7話
端っこに座って海水を見下ろす。
すぐに冷めたコロッケを頬張ると柔らかい食感と共に口の中いっぱいにじゃがいもの味が広がった。
目の前には海。
背後には生まれ育った平凡な町。
私を挟んで座った河合くんも椎も言葉を発することなくただぼんやりと前を見つめる。
少し吹き始めた風はゆるく私たちの髪を揺らした後海水を撫ぜた。
「…椎歌ってよ」
ここまでギターを背負ってきたクラスメイトをけしかけると奴は心底嫌そうに眉を寄せて。
「無理」
「なんでギター持って来てるじゃん」
「お前に聴かす為に持って来てねぇよ。用事の為だったんだよ」
「さっきギターを背負って歩く椎を正直ちょっとカッコいいと思いました。弾け」
「ありがとう。くたばれ」
「アカペラでもいいよ」
「死ね」
制服姿にアコギを背負っていかにも「ギター少年なんです」と言わんばかりの格好をしているくせに弾いて見せる気はないらしい。
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