第3話

僕の誘い入れに安心したのか、

彼女の声のトーンが少し上がった。



「えへへー、

安藤くんいつも廊下で会っても

目も合わせてくれないんだもん、心配になっちゃう」



「それは松下さんもでしょ?」



「だって"みんなの安藤くん"を

私が一人占めしてるなんて

他の子に知られたくないもん」



にっこりと笑って

僕に近づいてくる彼女はいつも通り。



ぴょんと跳ねるように僕の目の前に立つと

鞄の中をガサゴソと探り出した。



色白の小さな手に掴まれて鞄から顔出したのは

ファンシーな絵柄の封筒。



「…なにそれ、俺にラブレター?」



「もう、安藤くんたら分ってるくせにー。

…今日は3万しかないんだ。…いい?」




可愛らしい封筒に入っているのは諭吉が3枚。

似つかわしくなくて思わず笑えた。




「いいよ」

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