Untitled 3

第11話

世の中上手くいかないことばっかだ。



そんな大そうなコトを考える私は

体育館へと駆けて行く赤松くんの背中を見送った後、結局音楽室へ戻らなかった。


完全なサボりへ発展。



右手に弦の切れたビオラ、左手に弓を握って体育館へと続く渡り廊下にうずくまる格好はどう見ても"滑稽"他ならなくて。



下校時間すれすれにこっそり音楽準備室に戻って、楽器をケースに戻すしかない。




こんなところで私はなにがしたいんだろう。



まるで赤松くんが部活を終えるのを待ってるみたいだ。


たぶんそうなんだ。


でも赤松くんが私の傍に来てくれたところで彼になにかを話したいわけでもなくて。



…ごちゃごちゃする。






今まで生きてきた中で、『両想い』と呼べる状況に置かれたことは何度かあった。


少なくとも自分はそうだと実感できる瞬間があった。



そのときはただ心臓がひどく脈打って、なにも細かいことは考えられなくなって。

その日の夜はその感情を何度も掘り返して眠りにつけなかった。



ただただ嬉しかった。


それだけだったのに。

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