第10話

ほとんど息を吐いているに近い声の大きさで赤松くんは囁く。



「一人にしか言ったことありません」



「……」



「誰かは内緒だけど」



内緒って。



「…内緒になってないよ」



「そうだね」



そうやって再び笑う赤松くんを目の前に、

押し寄せたのは喜びではなく、どうしようもないやるせなさだった。



妄想と夢が、確信と現実に変わった。



どうしようもない。




例えば、誰の誕生日でもないのに

とびきり豪華なバースデーケーキを焼いたような。



どうしようもない。


本末転倒だ。




「……付き合う?」




赤松くんが発するそれは、

さっきまでとは比べ物にならないぐらい


わざとらしいふざけたトーンだった。

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