第9話
ため息のような、それでもため息にすれば少し弱い息が自分の口から漏れて。
「…赤松くん」
「はい」
「……恋人が欲しいです」
「急にどうしたの」
「なんとなく言ってみた」
「…じゃぁ、俺と付き合う?」
…ほらやっぱり。
「言うと思った」
「え、なに、井上さん俺をハメたの?」
「赤松くんさ、それみんなに言ってるでしょ」
笑い事のようにふざけたトーンで言ったのに、
私のその一言で赤松くんは反対に笑顔を崩して。
「そう見える?」
じっと私を見据えたりなんかする。
今気づいた。
顔と顔の距離が近い。
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