第4話

「…そんなこと言ってられないよ。

それより来年大学受験なんですよ…はぁ…」



「あー…そうだねぇー」



「憂鬱だー」



言葉にすればするほど

それはどうにもならない気がした。



大学受験して、入学して、卒業して、

適当に就職して、運があれば結婚して、子供を産んで。


歪みのない真っさらな道がある。

誰もが歩むような人生の型。


不変で永くて平凡で損も得もない。



そこに自我は芽生えているのか。




「井上さん音大いくの?」



「なんで?そんな予定一向にない」



「だってオーケストラ部じゃん」



「楽器なんて学校の部活でやってる程度じゃ音大入っても難しいよ」



「そういうもんなの?」



「そういうもんなの」



「井上さん表情暗い」



「今日はなんか特にネガティブなんです、色々と」



「前向きな人といつも一緒にいると気分も明るくなるらしいよ?」



「…へぇ」



「俺と付き合う?」



そう言って笑う赤松くんの表情はやっぱり眩しかった。

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