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女は二人とも全裸だった。
片方はふくよかな胸と腰を持ち、もう片方は小ぶりな胸とほっそりとした柳腰である。ふくよかな方の髪は茶色く染めたパンチパーマだったが、細い方は黒髪に白髪が混じっているセミロングだった。
二人とも顔にほうれい線や小じわが目立つ。スッピンだった。五十代後半、年相応の老け顔だった。
その顔をお互いに舌で舐め合っていた。二枚の舌はお互いの瞼や耳、鼻や唇を撫でていたが、長いキスを交わしたあと徐々に下方に移動して乳首や臍を唾液で濡らした。前かがみになり、上半身のほぼすべてを唾液で濡らしたあと、ベッドの上で腰を下ろした二人は喘ぎ声を漏らしながら横になると相手の股間に顔を這わせた。
ときおり高い声で喘ぎながら何度も大きな波に呑まれ、二人の女は体を震わせた。やがて股間同士をこすり合わせて果てると、抱き合ったまま静かになった。唾液の酸っぱい匂いが室内に立ち込めていた。
繁華街の中にあるファッションホテルの一室だった。細身の女を抱きつかせたまま、パンチパーマの女が枕元のタバコとライターを取り、火をつけたタバコを口にくわえると言った。
「もうすぐクリスマスね。どう? 忙しいでしょ」
「今日、お客さんが来たの」
パンチパーマの女の問いかけとは無関係なことを細身の女は言った。興味なさそうにパンチパーマの女はタバコの煙を鼻から吹き上げた。
「何だか妙な感じの客だったわ。三十代なかばぐらいの男の人なんだけど雰囲気があの子に似てた」
「誰?」
「沢渡くん。ほら、中学校のときのあの男の子」
パンチパーマの女はタバコを吹かしながら眉をひそめた。
「息子だったの?」
「顔は似てなかったわ。全然面影が無かった」
「じゃあなぜ?」
「わからない。雰囲気なのよ、気配というか、物腰というか」
パンチパーマの女は上半身を起こして口から毟り取ったタバコを灰皿に押し付けた。
「どうかしたの?」
相手の微かな苛立ちを感じ取ったのか、細身の女はパンチパーマの女の顔を覗き込んだ。
「また来るかしら、あんたの店に」
「もう来ないわよ。あなたの出番はないわ」
ククッと細身の女は軽く笑った。小悪魔の笑いだった。
「ねぇ頼子。あたしを怒らせないで頂戴」
「はいはい、泣く子も黙る明美姐さんですからね」
細身の女は笑いながら起き上がるとバスルームの方へ向かった。
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