ーー第二波就眠街会戦ーー

 ーーあまねく星が光りし時、聖戦が始まりを告げる。

 就眠街での戦闘が激化する中、神々の軍勢を次々と蹴散らすヴァレナ。

 しかし、背後から軍神テュールの奇襲を受け、深手を負ってしまう。

 セウォルツの影響によって、一時的に神々の軍勢は無力化されるも、セウォルツが目覚めると同時に、神々の軍勢は戦線へと復帰した。

 絶望的な状況の中、ヴァレナに追い討ちをかけるように告げられるのは、別動隊の存在。

 セウォルツに危機が迫る――


 ーー眠りの森でーー

 

 「......貴方は?」


 目を覚ましたセウォルツが見た先に、見知らぬ青年が立っている。

 

 その瞳から涙がこぼれ落ちた。

 

 セウォルツが声をかけようとしたその瞬間、周囲に闇が広がり始める。


 ーー夜を司る神、ノートの軍勢ーー

 

 かつて古の大戦でセウォルツを捕えた実績を持つ特殊部隊

 ノートの神兵であり、闇の力が広がる限り眠ることはない


 「ふふふ...... また捕まえに来たわよ、セウォルツ」

 ノートが姿を現す。

 彼女の能力はただ歩くだけで夜闇を引き寄せるシンプルなもの。

 しかし、その力で神兵たちは強化される為、油断はできない。


 (まずいですね...... 数が多すぎます。 セウォルツにとっても相性の悪い相手でしょう...... ここは――)


 ヘイムダルはセウォルツに近づこうとするが、神兵たちがその道を妨げる。


 「だめよ〜? ここから逃げるなんて甘いこと、許さないわ」


 (くっ...... 先を読まれてしまいましたか......)


 「......話の邪魔をしないで」


 セウォルツはノートを睨み、その瞬間、大地が揺れ、目の前に水が吹き上がる。


 「......!!? 貴方、まさか覚醒した......」


 ノートは空中に弾き飛ばされた。


 (水の威力が以前の比ではない......!!?)


 ーー「|愚者の寝袋(シュラフール)」


 ――セウォルツが覚醒し、水の神としての力を解放 彼女の操る水は強力な睡眠効果を持ち、触れた者はたちまち眠りに落ちる

 もがけばもがくほど深海へと沈むように――


 セウォルツの言葉とともに、水が大地から次々に吹き上がり、ノートを包み込んでいく。


 「ノート様ーー!!!」


 技が解かれ、落ちるノートに神兵たちが動揺する。

 

 夜闇が明け、セウォルツは優しく微笑んだ。


 『怖くなかった......? もう大丈夫だよ......!!!』


 ーー|就眠街(スリーピア)にてーー


 『うわァァァァァァーー!!?』


 『これはあまりにも酷い隙だ...... 後はお前達で片付けろ 我はノートと合流する』


 神々の軍勢がヴァレナ目がけて突撃するも、突然大地からマグマが吹き上がり、神々の軍勢を溶かす。


 ヴァレナの慟哭に呼応するかのように、地がマグマに染まっていく。


(モウ...... スベテ...... モヤセ...... モヤシテシマエ!!!)


 ーー|暴焉焰火(ルイネ・デス・インフェルノ)


 暴走の果てに、火はマグマへと変わり、文明の利は焰の中へ消え去る

 統制の取れない形態にしてただ純粋な

 

 ――厄災


 『......ほう 怒りで戦闘力が上がるタイプか 面白い...... やはり我が相手をしよう......』


 テュールは翻り再びヴァレナと相対した。

 

 マグマがゆっくりと街に向かって侵食していく。


 ーー眠れる人々の住まう地、就眠街に危機が迫る


 ーー眠りの森にてーー


 『......私はヘイムダル。フレイストの友達です......』


 (運命の存在はまだ彼女には荷が重いでしょう......フレイストの友達という体で話を進める他ありません......)


 『フレイストって...... ヴァレナの執事さんだよね?』


 『......? その通りですが、何でしょう?』


 『わぁーー!!! じゃ...... じゃあ貴方もテレポート出来たりする......?』


 セウォルツは永氷皇土にいるミザディ、アルロイが心配な様子だ。

 

 ヴァレナに会うために、2人を置いてきてしまったことが気がかりらしい。


 『それでね、出来ればヴァレナに2人を紹介したいなぁ〜って。あれ? そういえばヴァレナは......?』


 天真爛漫に話す彼女を見つめながら、胸が痛むヘイムダル。


 『この事はあまり伝えたくなかったのですが...... ヴァレナは何処かへ出てしまわれました...... 多分貴方を守るために力を求めて行かれたのでしょう......』


 セウォルツはしょんぼりしながら呟く。


 『ヴァレナのバカ......』


 2人は永氷皇土へと消えた。


 ーー冥界ヘルヘイムにてーー


 『まずいですね...... ヴァレナが暴走を始めたようです......』


 (ヘイムダルさんも度重なる戦闘の疲労からか、観察の力を上手く行使できていないようです...... いつもならすぐに気づくのに...... 今気づかれましたか)


 冥界は死した魂が行き着く所。

 それぞれが散り、その魂が星となって光り輝く

 ――頂の地

 

 北斗の方角に唯一つ光る星は願う......。


 (後は任せましたよ...... 皆さん)


 ーー永氷皇土にてーー


 『お〜い!!! ミザディ〜!!! アルロ〜イ!!!』


 『その声はセウォルツじゃねぇか!!!♪』


 遠くから見えてきたのはミザディとアルロイ、それに

 ......謎の少女。


 『貴方は......?』


 『それがよぉ♪ あまり喋ってくれないんだよなぁ♪』


 『姉さんが怖がらせてるんですよ......』


 何か言ったかとアルロイに詰めるミザディ。

 

 その少女はボソッと呟く。


 『リルヴェー......』


 喋ったことに驚く2人。


 ふとリルヴェーの隣に、3つ首の獣ケルベロスが現れる。


 『......こら、出ちゃだめって...... そう...... ヘルヘイム様の命令なのね......? なら遊んでいいよ』


 慌てふためく3人に、リルヴェーが謝る。


 『ごめんなさい...... 怖がらせてしまって......』


 口数は少ないけど、不思議な魅力を持つ謎の少女。


 それだけで十分面白い...... ミザディは話しかける。


 『なぁ、アタイもさ、怖がらせたかもしれねぇって思ってる。だからごめ......』


 『姉さんらしくないですね、リルヴェーさん? もし良かったら、僕達と友達になってくれませんか?』


 抜け駆けするなと怒るミザディ。

 でも、何だかんだで打ち解けそうだ。


 『そう言えばセウォルツ?♪ ヴァレナとフレイストの爺さんは?♪』


 『会えたんだけどね...... どっかいっちゃった...... 執事さんの代わりに友達のヘイムダルさんが私を送ってくれたの......』


 セウォルツが振り向いた先にヘイムダルはいなかった――


 ーー暴走するヴァレナに軍神テュールが襲いかかる。

 現場に直行するヘイムダル。

 眠れる人々を救うことができるのか?

 ケルベロスの行く先は?

 事態は風雲急を迎えるーー

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