ーー冥界の番人ーー

 ーーあまねく星が光りし時、聖戦が始まりを告げる。

 セウォルツの覚醒によりトールは退いた。

 戦場に一時の安寧が訪れる。

 倒れるセウォルツを見て、ヴァレナは一人無力感に苛まれていた。

 告げられた運命の存在。

 ヴァレナは愛する者を守り、強くなる為に走り出すー 

 

 ーー永氷皇土にてーー


 「なぁアル? セウォルツを見送ったはいいんだけどさぁ? アタシたちこれからどうすれば良いんだぁ?」


  ここは極寒の永氷皇土...... セウォルツとフレイストを見送ったは良いものの、ずっとここに長居する訳にもいかない......


 「姉さん...... セウォルツさんとフレイストさんが帰ってくるのを待ちましょう」


 「待ちたい気持ちは分かるけどよぉ...... ここ、食える物何もないぞ......」


 ヴァレナに逢いに行く...... セウォルツの覚悟に魅せられて、その場のノリで送り出したはいいものの、帰り道も分からずただ待つ手段しか残されていない......


 「せめて食べられる物があれば良いのですが......」


 「それ...... な......!!? あったぞ!!!♪」


 「嘘......!!?」


 目の前を一瞬狼が通り抜ける。


 「アルロイ捕まえろ!!! 捕まえようぜぇ!!!♪」

 

 「ちょ...... ちょっと姉さん......!!? 僕、走るの苦......」


 アルロイは慌てて姉さんを追いかけようとするが、氷に滑って転んでしまう。


 「何やってんだよぉ、アルロイ 仕方ねぇか ここは一丁姉さんに任せなぁ!!!♪」


 ミザディは全速力で氷の大地を蹴り出し滑りゆく。

 滑りながら1メートル程の巨岩を手に取り投げた。


 狼に当たろうとしたその時ーー


 「ガルルルゴッワァァァォォォン!!!!!」


 突如として巨大な獣が吠えながら駆け抜け、狼を庇いこちらを睨んできた。

 その獣はあまりにも俊敏かつ巨大......


 「何だぁ......!!?♪ 親でも連れてきたかぁ......!!?♪ 2匹とも...... 3......!!?」


 その首は3つに分かれた巨大な獣

 ーーケルベロス


 「......なぁんじゃありゃぁぁぁ!!!!?」


 全速力で元来た道へ戻るミザディ。

 アルロイが見えてくる。


 「アル〜♪ 助けて〜♪」


 「狼に逃げかえるなんて姉さんも腕が鈍りましたね いいでしょう このアルロイがやっつけてやりますよ!!!」


 自信満々のアルロイが持っていたのは

 ーーカタパルト


 「アル〜♪ どこから持ってきたの〜?♪ それ?♪」


 「宮殿を見回っていたらすぐそこにありましてね 原型が残らないかもですが、まあいいでしょう」


 ミザディはアルロイの所まで来てすり抜けた。


 「多分それじゃぁ、勝てない♪ アル逃げろ〜♪」


 「何をおっしゃい...... えぇーー!!!!!! 姉さん何連れてきてるんですか!!?」


 全速力で逃げる2人。

 追いつかれそうになる。


 「もう無理ーー!!!!!!」


 「コラ、コッチ来ちゃダメでしょ......」


 謎の少女が現れ、ケルベロスの動きを止めた。


 「貴方達...... 食べるのがないんでしょ コレあげる」


 少女は突如ケルベロスと共に永氷皇土の奥へ消え、残されたのは

 ーーーマンモスの肉


 「......何あれ♪」


 ーーケルベロスと謎の少女ーー


 「だから人間界に勝手に入っちゃいけないって言ってるでしょ...... 罰としてオヤツ抜きね......」


 少女は宮殿の玉座へと接近し、ゲートを開く。


 「さぁ...... 帰ろう......? そろそろヘルヘイム様が帰ってくるから......」


 少女はケルベロスと共にゲートに入り消えたーー


 ーー冥界 ヘルヘイムーー


「......お待たせしておりました ヘルヘイム様」


「......私がいない間、ちゃんと冥界を管理してくれていたみたいですね」


 現れたのは

 ーー録星のヘルヘイム


 「貴方はこっちに戻ってくる気はないのですか? リルヴェー」


「いえ...... 今の所は...... まだここの方が居心地が良いので......」


 冥界...... それは死者が行き着く地...... 録星ヘルヘイムは元は冥界の長であった。

 ヘルヘイムは昔を懐かしむかのように笑う。


 「ふふっ...... 貴方は昔から死にたがりでしたからね 七連星が集まる時も貴方は度々席を外してましたし」


 「......怒っていますか? ヘルヘイム様……」


 「いえ...... だからこそ私が地上へ度々出れたのでむしろ感謝しかありませんよ ただ...... 私は貴方が心配です」


 ーー遥か昔からずっと彼女は独りぼっちであった

 生まれると同時に父母は死に、彼女と関わるものは全て死ぬ孤独の身

 ーー死星のリルヴェー


 (これも呪い故なのでしょうが...... 元々あまり人と話すタイプではありませんでしたし...... それに状況も緊迫しています)


 「リルヴェー 貴方は充分冥界を管理してきました 私も冥界に戻った事ですし、自由に遊んできなさい」


 「しかし......」


 やはり呪いなのだろう。

 彼女が地へ現れると本来人は須く感覚的に死んでしまうのだ。


 (呪いも問題ですが...... 彼女が話せていない事が呪いの効果を増強していますね......)


「誰か話せた人はいませんか......?」


「そう言えば先程双子と話したような......」


 (ミザディ&アルロイですか......!!! これは占めました)


 「是非その双子と話してきなさい!!! 冥界は私が管理しますから」


 ーー渋々冥界を離れる死星のリルヴェー

 彼女の存在が神々の絶対性を揺るがす事になるとは、まだ誰も気づいていないーー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る