ーー雷火転水ーー
ーーあまねく星が光りし時、聖戦が始まりを告げる。
|終末の笛(ホルムギャルド)が鳴り響くーー
運命の七連星の出会いと別れ。
神々の出陣。
|世界の破滅(ラグナロク)は始まったーー
ーー眠りの森にてーー
『......坊ちゃま ゆっくりお休みなされ』
眠るヴァレナを見つめ、フレイストは複雑な表情を浮かべる。
(もしトール様やオーディーン様が来たら...... この子をまた、裏切ることになる......)
『何をしているのだ?』
『......ヘイムダル様 私の呪いは強力です ......もしかしたら坊ちゃまをこの手で』
『案ずるな その際は私がヴァレナを守るとしよう それよりだ...... お前の傷は深い 精神的な傷だからと甘く見ず、早く眠られよ それが一番、仲間のためになる』
『......お気遣い感謝いたします では、私はこれにて......』
『ああ......』
眠りの森は静寂に包まれる。
夜明けは ......近い。
ーー眠りの森の夜明けーー
ギュギュギュギュギュイーン
ドゴーーーーン
『やっと来たか』
ヘイムダルの見つめる先にいたのは
ーー雷神 トール
『......待たせたようだな その分、最速で死ぬが良い』
トールは最速でヘイムダルへ詰め寄り......消えた。
(!!? フェイントか!!!)
トールの向かう先にいたのは、まだ眠っているヴァレナ。
『させませぬ......!!!』
トールの目の前に立つのは
ーー業星のフレイスト
『......煩わしい お前はただそこで突っ立って見ておけ』
途端にフレイストの足は止まってしまう。
『坊ちゃまーー!!!!!』
トールのハンマーがヴァレナに向かって振り下ろされる。
ガキン
『......狸寝入りか』
『悪いね、こうでもしないと先手を取れそうになかったから』
ヴァレナの手に握られていたのは
ーー炎の剣
トールのハンマーを皮一枚で外しながら受け流し、次の攻撃へ繋げる。
『|爆炎衝(ブラスト・フレイム・インパクト)!!!!!』
『......ぬるい』
ハンマーを頭上で高速回転させ、炎の中で突き進むトール。
その回転が止まった時、地は裂け雷轟が響き渡る。
『|天槌雷衝(セレウス・トニトール)』
『……クッ!!?』
(足が痺れて動けない……!!?)
『......死ね』
『......させません!!!』
ヘイムダルが瞬時にフォローに入る。
(ヴァレナを連れて一度下がった方がいい......!!!
そのためには ーー時間稼ぎ!!!)
『|知者の探求(クレバー・クエスト)!!!』
『何だ......? それは......』
トールのハンマーが二人を捉え、盛大に吹き飛ばされる。
ヴァレナを咄嗟に庇ったものの、ヘイムダルは重傷を負い、ヴァレナは衝撃で気絶してしまった。
(......知者の探求が効かない!? ほとんど思考していないというのか......!!!)
『......終わりだな』
『......死ね』
(坊ちゃまがまた殺されてしまう......!!! 動け......!!! 動くのだ!!! この老体よ!!!)
二人をトールハンマーで捉える瞬間、その鉄槌は押し戻された。
『今度こそ...... 坊ちゃまを守ってみせます!!!』
『......やはり代理の力はこんなものか 仕方あるまい。もう一度言う お前はただそこで見ておけ』
(......!!! クソッ...... 体がまた動かない......!!!)
『......さらばだ』
『......やめて!!! ......止めてよ!!! これ以上ヴァレナを傷つけないで......!!!』
振り返るとそこには一人の少女が立っている。
ヴァレナはその声を聞き微かに意識を取り戻した。
『......セウォルツ ......早く逃げるんだ!!!』
『イヤ...... イヤだよ......』
ヴァレナは辛うじて立ち上がる。
『へへっ...... 雷神さん、来るなら来なよ!!!』
死を覚悟してセウォルツを守ろうと戦うヴァレナ。
雷鳴と業火が広がり、次第にヴァレナは押されてゆく。
『......足掻くでない。死ね』
『さよなら...... セウォルツ............』
その時だったーー
『ヴァレナのバカーー!!!!!』
セウォルツは叫びながら涙を流す。
その涙は地に染み込み、土砂崩れを引き起こした。
『な......!!? 何が起きている......!!? ......まさか!!?』
ーー眠り姫 セウォルツ
神殺樹と共に生まれ育ちし者
森と共生し森と調和する森の聖女
その一滴が大地を潤し、その一滴が天を脅かす
ーー水の神。
山々の木々がトール目がけて降り注ぐ。
『小癪な......!!! 古の力を取り戻したとでもいうのか、水神よ!!!』
トールは徐々に押し戻される。
『グッ......!!?』
(それに何だこの感覚は......!!? 背中が冷える......!!?)
『......貴様とは何故か相性が悪い 一度退いてやる』
トールはそう告げると急速に姿を消した。
戦いが終わり、戦場に一時の小休憩が訪れた。
セウォルツは崩れ落ちる。
『セウォルツ......!!!』
慌ててヴァレナがセウォルツを支える。
セウォルツの体は ......冷たい。
『大変だ......!!! フレイスト、手当を......!!!』
(......セウォルツを守るはずが守られるなんて もっと強くならなきゃ......)
セウォルツを救護する二人を見届けながら、ヘイムダルは回復(ヒール)しつつ回想していた。
(完全に無意識で水の力を行使していた...... それでトールをここまで追い詰めるとは......)
ーー眠りの森は業火と雷、そして水に覆われた。
豊かな大地が荒れ果てていく。
これからの雲行きを暗示させるかのようであった......
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