ーー開かれし聖戦ーー

 ーーあまねく星が光りし時、聖戦が始まりを告げる。

 セウォルツとヴァレナの邂逅ーー

 祝福の空間が2人を包み、数多の星が徐々に輝き始める......。

 遠くから見守るヘルヘイムに突如、混沌をもたらす者ーーロキが来襲

 ヘルヘイムは辛うじて撃退する事に成功するも力尽き、セウォルツは倒れ、ヴァレナは絶望の末に気絶した。

 ヘルヘイムは最期に、ダルヘイムに自らの記憶と知識を託す。そして、ダルヘイムは覚醒するのだ。

 ーー終末を知らせる者 ヘイムダル へと......。


  悲しき星々の輝きを見つめ、ヘイムダルは|終末の笛(ホルムギャルド)を鳴らす。

 それはかつての大戦の果てに埋もれた笛。

 ダルヘイムが回収したものだった。


 (また|世界の破滅(ラグナロク)を繰り返すのか......)

 

 ヘイムダルは悲哀の表情を浮かべ、聖戦の始まりを告げた。


 「もう一度...... やり直そう...... 今度こそ勝ってみせる......!!!」


 ーーその笛の音は、天界よりも高く響き渡ったーー


 ーー神々の中枢 ヴァルハラーーー


 『......!!! この音が鳴ったという事はセウォルツとヴァレナが会ったというのか......!!!』

 

 オーディーンは激昂した。


 ーー運命の七連星。


 それはオーディーンにとって永遠の脅威であり、その存在の集結は何千年...... いや何万年も更新される事のない|異常事態(イレギュラー)。


 オーディーンはトールを呼びつけ、告げる。


 『売られた喧嘩は買う他あるまい...... |世界の破滅(ラグナロク)を開始せよ!!!』


 ーー運命の火蓋が切って落とされるーー


 神々は地平線の果てへと出陣する。

 オーディーンはそれをただ静かに見つめながら、終末の笛を聞いていた……


(それにしても...... 暗い...... 前は明るい音色であったが......)


 夜空を見上げるオーディーン。

 そこには新たな巨星が輝いている。


 『クッククク......!!! ハッハハハハ......!!! ついに目障りなあの星が消え去ったのか......!!!』


 ーー北斗の方角に大きな巨星が二つ


 その光を見上げながらオーディーンは確信する。


 『この|世界の破滅(ラグナロク)...... 勝つのは儂じゃ......!!!』


 ーー眠りの森でーー


 『坊ちゃま......! 坊ちゃま......!!!』

 

 ヴァレナが目覚めた先には執事フレイストの姿。


 『坊ちゃま......! 目を覚まされましたか......!!!』


 『......!!? セウォルツ......!!? セウォルツは......!!?』


 『......お嬢さんは生きています。ですが......まだ目を覚まされておりません』


 ヴァレナは安堵し、フレイストに感謝を告げる。


 『......フレイスト ......ありがとう』


 (テレポートされそうな時に助けてもらい、ボクが倒れた時には付きっきりで面倒を見てくれた......)


 『......フレイスト、ボクはやっぱり聞きたい...... 何故ボクを襲って...... そして助けたの?』


 『......呪いであります。私はオーディーン様とトール様から呪いを受けました。絶対に言う事に従わねばならぬ呪いを......』


 『......正確にはオーディーンでしょう』


 振り返ると、見知らぬ青年が現れる。


 『貴方は......?』


 ヴァレナは目を丸くする。

 フレイストがその青年を紹介した。


 『あの方はダルヘイム様です......』


 『私は|天移暝動(テレポート)した後、倒れてしまいました。大分無理をしていましたから......』


 『ダルヘイム様は私を助け、坊ちゃまの危機を伝えてくださいました......』


 その青年 ーーダルヘイム は静かに語り始めた。

 

 『いえ、私は今や...... ヘイムダル...... 訳あってここに来ました』


 『私は本来ダルヘイムだった時、貴方を観察することはあっても干渉はしてきませんでした.......』


 『それが聖戦を引き起こさない為の...... 世界の観察者としての私の使命であり...... 運命を知らぬ故の行動だったのです......』


 『呪い......? 運命......?』


 『でも彼女...... いえヘルヘイムの記憶と知識を受け継いで考えが変わった......

 運命の存在を貴方達に伝えなければなりません!!!』

 『それが...... ヘルヘイムでもダルヘイムでもない呪いから解放された|私(ヘイムダル)としての使命です』


 ヘイムダルは2人に運命の七連星の事、呪いを伝える。


 『こ...... こんな事が......!!!!!』

(呪いについては知っていたのじゃが...... 運命の七連星とはそのような存在であったのか......)


 『だ...... だからボクはセウォルツに会えなかったんだね......』


 ーーヘイムダルは二度目の大戦を経験する事になる。


 かつて...... 運命の七連星は北斗七星をその身に宿し人々を導いてきた ーーチーム


 『私達は仲間...... 団結してトールとオーディーンを打ち倒しましょう』


 『でもまだ仲間は揃ってないよ......?』


 『正確には二人で一星となる奈亡星が永氷皇土に...... もう一つの星、死星は既に死んでいます』


 『......!!! そんな......』


 『......彼女は少し特殊でしてね。死んでいる状態がデフォルトなんです』


 (きっとヘルヘイムさんは彼女を呼びに行ったのでしょうね......)


 『聖戦は始まっています...... 夜明けには神々がやってくる事でしょう...... それまでに休息を......』


 ーーあまねく星が光り降り頻る夜空を見上げ、ヴァレナは誓うーー

 今度こそ君を守ると。

 眠る姫に口付けをし、眠りについた。

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