ーー世界の破滅(ラグナロク)ーー

 運命の七連星――それは神の基軸であり、人を導く者。

 永別神によって永氷皇土に飛ばされたミザディ、アルロイ、セウォルツ。

 フレイストの口から語られたのはヴァレナの呪い――永遠に愛する者に会えない、であった。

 動揺する三人。セウォルツはそれでもヴァレナに会いたいと決意をフレイストに伝える。

 呪いにも永別にも打ち勝って――

 二人は邂逅した......!!!


 ーー眠りの森でーー

 

 『君が...... セウォルツ......』

 

 『......うん』

 

 二人は逢ってそのまま目を見つめ合う。


 寂しげな人......。

 彼はどこか寂しげで、ずっと......ずっと彷徨っていたのだろう。

 セウォルツは彼を見て...... そう思った。

 守りたい...... どこかそう思わせる雰囲気がある。


 一方、ヴァレナはセウォルツに会うその時――

 ......なんてかっこいいんだろう。

 そう思った。彼女の顔つきは可愛くもあるが...... 逞しい。


 二人は見つめあったままキスをする。

 遥か...... 遥か昔に出逢えたような...... そんな味......。


 『これ以上は...... 私には刺激が強すぎますね』


 ヘルヘイムはそっとその場を離れる。


 『......後はお幸せに』


 数多の星が少しずつ光り始めていった――


 ーー|神殺樹(シンサツジュ)の木の下でーー

 

 『炎の子と眠り姫...... 幸せそうですね』


 ヘルヘイムは二人の邂逅を心待ちにしていた。

 

 『あの方はオーディーン...... 神々の頂点にしてトールを従える者...... それに運命の七連星を壊滅させるほどの力を持つ可能性のある存在...... となると黒幕はオーディーンで決定でしょう......』

 

 『半分正解⭐︎半分間違い⭐︎』


 ヘルヘイムが振り返った瞬間、背中にナイフが突き刺さった。

 

 『......!!? カハッ......!!! や......やはり来ましたか......!!! 混沌をもたらす者――ロキ!!!!!』


 一見何もない所からうっすらとロキが現れる。

 

 『ん〜? 今度は正解⭐︎ 黒幕って聞こえはいいけど所詮アイツは理想主義の完璧家さ⭐︎』

 

 『それに比べてオイラはどうかな?⭐︎ 良い黒幕になれると思うよ⭐︎』

 

 『......知ったことではありませんねっ!!!』

 (|知者の探求(クレバー・クエスト)!!!)


 『おっとと...... 危ない危ない⭐︎ 君は正直邪魔だったのさ⭐︎ 後はゆっくり眠ってね⭐︎』


 ロキはそう告げると虚空へ消えた。


 『ゴフッ......!!! まずいですね......!!! あの方向は......!!!』

 

 (神殺樹に近づいていますね...... 私が守っているのがそんなに邪魔でしたか...... 来る事は知ってましたが...... タイミングまでは読めません......)


 『さて...... チェックメイトだよ⭐︎ これで|世界の破滅(ラグナロク)が始まるのさ!!!⭐︎』


 ロキは神殺樹にナイフを突き立てた。

 

 ーー終わりの始まりが近づいていく。


 ーー眠りの森でーー

 

 『ーーっ!!? い......痛』

 

 途端に倒れるセウォルツ。


 ヴァレナは動揺する。

 

 『ど......!!? どうしたの......!!? セウォルツ!!!!!』

 

 必死にセウォルツを揺さぶるも返事がない……。

 

 『だ...... 誰が...... 誰がセウォルツをこんな目に遭わせたん......ダ!!! ウワァァァァァ!!!!!』


 ヴァレナは絶望のあまりに森を燃やし暴走し始めた......


 ーー|陸の孤島(ホワイト・アース)でーー


 『な......何が起こっているんだ? そんな......!!! まさか......!!!』

 

 一面に|神堕ち人(カミオチビト)が倒れゆく。

 それが何を意味しているか理解せずとも分かった。

 

 『どこだ......!!! セウォルツ......!!!』


 ダルヘイムは観測しようとするが焦りのあまり本来の力を発揮する事が出来ない。

 

 ダルヘイムは全速力で神殺樹に向け飛び立った。


 ーー神殺樹の木の下でーー

 『......⭐︎ ⭐︎⭐︎ ⭐︎⭐︎』


 何を言っているのかヘルヘイムにも分からない。


 (......まずい 何か分からないけどこれを撃たせてはいけません……!!!)

 

 『......|知者の探求(クレバークエスト)』


 薄れゆく記憶の中でヘルヘイムはかすかにそう告げ倒れていった......。


 『......⭐︎ ⭐︎⭐︎グオッ!!?』


 (......!!! ヘルヘイム⭐︎ まだ生きていたんだねぇ⭐︎)


 『グッ......!!!⭐︎ ま......また今度にしてあげる⭐︎』


 ーー暫く経ってーー


 『ヘルヘイム!!! ヘルヘイム!!! しっかりしてくれ!!!』


 『ダルヘイム...... あの子達は......?』

 

 『回収したよ...... 執事のお爺さんに手伝わせてね...... ヴァレナは暴走して気絶...... セウォルツは意識が戻らない......』


 『ダルヘイム...... 私は...... そろそろ死ぬわ...... だから最期のプレゼント』


 ヘルヘイムはダルヘイムにそっとキスをした。


 口を通して彼女の記憶や知識が全て流れ込んでいく......。


 『ヘルヘイム......? ヘルヘイム...... お願いだ...... もう一度だけ目を......』

 

 彼女の呼吸は停止した。


 ダルヘイムは涙を流し覚醒する。

 

 ヘルヘイムの記憶と知識を受け継いでーー

 

 全てを知り観測する者 ーーヘイムダル。


 ヘイムダルは空を見上げる。

 

 数多の星々は輝かしい程に煌めいていた。

 

 ーーあまねく星が光りし時、聖戦が開かれし終焉へと向かうだろうーー


 ーーヘイムダルは|終末の笛(ホルムギャルド)を高らかに吹く。

 悲しい程に光り輝く星々を見つめながら......

 聖戦の始まり――|世界の破滅(ラグナロク)が今まさしく始まった――

 

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