ーー血涙枯れ果て日はまた昇るーー
ーー運命の七連星、それは神の基軸であり人を導く者。
ヴァレナ討伐令が出され動揺するフレイスト。
悲哀混じる回想が頭を巡る。
暫くの沈黙の後、永氷皇土を抜けるフレイスト。
運命の衝突は今まさに始まろうとしていたーー
『|天移暝動(テレポーテーション)』
フレイストは目を瞑りそっと呟く。
天移暝動......。
それは限られた者しか知らないと言う幻の術......。
瞬間、フレイストの体は永氷皇土から消えた。
ーー|邪赤街道(デイビル・ロード)の少し先でーー
『ちゃま...... 坊ちゃま......』
微かに声が聞こえたと思った瞬間、ヴァレナの目の前でフレイストが現れる。
『!!!!? ......フレイスト!? どうしてここ...... カハッ......!!?』
気がつけばヴァレナの体に剣が当たっている。
(......!? グフッ......!? み...... 峰打ちか......!?)
『坊ちゃま...... 早くお逝きなされ』
よく見るとフレイストは鞘をつけていない......。
(どういう事だ......!? 何故フレイストがボクを攻撃するんだ......!? それに刃の部分を素手で握っている......)
フレイストの手からは血が流れていない......。
『坊ちゃま...... 最早私は血も涙も流れぬ悪魔の化身...... 早くお逝きなされ』
『......訳が分からないよ!!? どうしてフレイストがボクを攻撃するの!!?』
フレイストの連撃は続く。
『私は...... 貴方の父君と母君を見捨てました......』
『嘘...... ボクを逃がそうとしてくれたんだよね......?
ボク...... 分かるよ フレイストはボクを逃がす事に精一杯だったんだよね......?』
『......違います』
フレイストは一瞬沈黙した後、技を展開した。
ーー運命の七連星 業星のフレイストーー
|豊穣の調和(フロディ・テンパランス)
自身と自身が指定する対象に自身の生命力に等しいシールドを展開する技
業星の呪いーー愛するものを守れない呪いの結果、王を失った事で業の呪いが覚醒
ヴァレナが死ぬと現実を書き換え次の世代の子としてヴァレナが生まれる
永遠の邂逅と別れを繰り返し、自身は世話役として永遠に生き、物理的に傷つくことがない
一目見れば分かった。
あれがあれば守れたはずだ......。
『どうして...... どうしてボクだけ逃した......!!! 答えろ......!!! 答えるんだ......!!! フレイスト!!!』
(もういい...... 燃やせ......!!! 燃やせ......!!! 全てを燃やせ!!!)
|爆炎衝(ブラスト・フレイム・インパクト)!!!!!
全ての怒りをありったけにぶつけるヴァレナ。
『なんでだ......!!! なんでなんだよぉ!!!』
涙を流し業火の中へと入る。
『坊ちゃま...... 危険です...... お逝きなされよ......』
業火の中で歩むフレイスト。
その目には涙が出ては炎によって散っていく。
柄を振り下ろすフレイスト。
ヴァレナは額で受け止め血を流しながらも全力で剣を刺しにいく。
『お父さんとお母さんを返せ!!! 守れただろう!!! この悪魔!!!』
刺さらないはずの剣がフレイストの胸を貫いた。
(あれ......!!? 何で血が出て......!!?)
ヴァレナはフレイストを見る。
血も涙もない悪魔だったはずなのに......。
フレイストの返り血に温かさを感じてしまう。
『坊ちゃま...... 貴方の父君と母君への想いの力が剣に宿ったのでしょう...... 大きくなられましたな......』
『......!!! イヤだ......!!! イヤだよ!!! フレイスト!!!』
泣きじゃくり心配するヴァレナを見て優しく言った。
『坊ちゃま...... 私は貴方を王にするまで死にません...... 精神ダメージを受けているだけでしょう...... 早くお行きなさい』
ーー戦いの果てに業星は倒れる。
泣きじゃくるヴァレナ。
心配する事はない......。
業を背負ってフレイストはまだ生きなければならないのだから......。
月は沈み日がまた登る......。
希望の始まりを暗に示すかのようだった......。
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