ーー神を堕とす者ーー
ーー神殺樹(シンサツジュ)。
それは神すらも殺すと言われる伝説の樹。
侵入を試みて天界へ無事に戻れた神はいない。
人の一生のように儚いその樹は再生と崩壊を繰り返しては天界を脅かすほどに成長する。
神殺樹の木の下で少女は眠る。
名はセウォルツ。
神ならざる人であり、神を堕とす者。
水の神の力を持つも、本人は自覚なく唯普通の人として暮らしている。
眠りに落ちた神々の軍勢と謎の存在が姿を消して半日後、少女は目を覚ます。
少女が目を覚ましたという事は......
ーー神々の目覚めも近い。
『はっ......!? 此処は何処だ!?』
神々が目を覚ました所......
それは見たこともない霧が微かにかかる大地......。
『ここは|陸の孤島(ホワイト・アース)...... 神さまっていつもそうだ...... 自分が正義と信じて疑わない』
『まあ、もう神ですらないんだけどね』
謎の存在はそう告げた。
神は本来、欲求に干渉されない存在
ーー無欲なる者。
それが惰眠を貪るまで堕ちた......。
神々は動揺を隠せない。
『おや? 新入りかな? これからは人間として暮らさないといけないよ? ......とは言え普通の人間ではないんだけどね......』
声のした方へ振り返る。
昔何処かで会ったかのような気配......。
それは確かに神だった者だと彼らは感じた。
よく見るとその表情はやつれている......。
理解が追いつかない中、何故か心の奥底から何かを食べたくなる欲求が発生する。
『これは一体!?』
辺りを見渡すとかつて神だった者達・・・・・・通称|神堕ち人(カミオチビト)が食事を始めていた。
何か食べられる物はないのか......。
探し回ってはかき集め、初めての空腹と食の悦びを知り、神々の軍勢は神堕ち人になった事を自覚した。
『おや...... 君達食べているのかい?......食欲 ......という事はセウォルツも今頃何か食べているのかな......』
意味深に呟く謎の存在......。
神殺樹に眠る少女を知っているようだった。
謎の存在は語りかける。
『君達も災難だったね...... まあ自業自得でもあるか...... あの娘はセウォルツ 神殺樹と生きる少女さ』
何故、神々が人に堕ちたのか謎の存在に尋ねてみる。
『|愚者の絆(フール・フレンズ)...... セウォルツが神殺樹の実を食べた事で発現した固有の能力さ』
『神殺樹には神を殺す力なんてない...... ただ神殺樹の実は強力でね』
『人が食べたら永遠に眠り、神が食べたら人に堕ちる』
何処か達観したように謎の存在は話す。
だが、何故神々が人に堕ちたのかが分からない。
不思議そうに聞いていると謎の存在は気づく。
『ああ、ごめん...... 説明がまだだったね』
『セウォルツの持つ固有の能力 愚者の絆は視認した対象を強制的にリンクさせるのさ』
(......!)
『彼女の欲求がリンクされ欲求を呼び起こし、彼女の行動に従って行動する』
(......!?)
『神殺樹の実は本来欲求を呼び起こす実なんだけど人間は元々欲を持つ為、夢の中で永遠に行動させられるし、神は欲求を持たないから人に堕ちる』
(......!!?)
『適応する者は本来いないのだけどセウォルツは特別...... 神を堕とす者として産まれ 神ならざる人だからこそ適応出来た だからその効果が周囲に波及するんだ』
(............)
空腹が満たされ夜がやってくる。
神堕ち人は自身の疑問を解決し眠りにつく。
『睡眠欲......セウォルツ おやすみなさい』
『......ん ......待って ......貴方は一体?』
眠る神堕ち人を見つめ謎の存在は告げる。
『ああ、自己紹介がまだだった 私はダルヘイム 世界の観測者と呼ばれてる』
ーー眠る神堕ち人を尻目に告げる観測者。
静寂はますます深まり不気味なまでにイビキが広がっていた。
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