厄災の生贄にされた転生少女、覚醒して殲滅の魔女となる。
山親爺大将
第1話 地獄
「おら! 何してるんだよ」
「ガフッ……な、何もしてない……ゴフッ」
「何もしてないのが悪いんだろうが! それくらいも分からないのか! オラ! オラ! 死ね! 死んでしまえ! 無駄に飯喰らいやがって!」
これが、私がこの世界に転生してからの日常。
理不尽に蹴られ、殴られ、絶望しか無い日常。
この両親は私がもっと幼い頃に他界していた。
その後、親戚と称する強欲で傲慢な家族に引き取られた。
十歳の時自分は転生者だという事を思い出した。
それと同時に手入れもされずボサボサだった髪が艶やかな長髪になり、唯一周りから褒められていた大きく切れ長の眼が蒼く変化した。
そして得た能力が、僅かばかりの水を生み出すだけの能力。
環境は何も変わらなかった。
唯一変わった事といえば。
「おい! てめぇはそれぐらいしか出来ねぇんだからよ! 早く水出せよ!」
そう言われて目の前に壺を置かれる。
この家の息子に髪の毛を掴まれ、乱暴に引き摺られる。
「でも、私が出せるのは少しだけで……」
「うるせぇ! 死ぬ気で出せよ! この壺いっぱいに水貯めれなかったらメシ抜きだからな」
この村の人達は誰も助けてくれない。
水が出せると分かった時は少しだけ興味を持たれたが、それがごく僅かだと分かるとすぐに離れた。
声をかけてくる人も居ない。
視線も合わさない。
私は粗末な小屋の片隅で必死に水を生み出すだけの存在だった。
ここは地獄だ。
なぜ転生なんてしてしまったんだろう。
せめて、そんな事思い出さなければよかったのに。
転生前の記憶が残っているせいで、ここが地獄だと分かってしまう。
「なんでこんな目に……」
涙はすでに枯れていた。
ある日、いつもと違う朝を迎える。
「ほら、早く来い!」
この家の主人である男に無理矢理歩かされて荷車の上に座らされる。
驢馬のような動物に繋がれた台車に乗せられて、整地のされていない道と呼ぶのもおこがましい場所を通って小高い丘に連れて行かれた。
「お前はここにいろ! いいか、絶対動くんじゃ無いぞ!」
私を台座のような場所に置き、それだけ言うと男は帰っていった。
おそらく、私がただの子供だったら分からなかったかもしれない。
しかし、私は転生者だ。
朧げだが、コレが何を意味するかは想像がついた。
どんな化け物か知らないが、私は生贄にされるんだろう。
おそらく、その為に生かされていたんだろう。
「もう良いか……」
私は諦めていた。
現実世界の地獄から、本当の地獄に行くだけだ。
ズズッ
引き摺るような音が聞こえた。
その方向に顔を向けると。
そこには自分の胴体より何倍も太い大蛇がいた。
「イィィィヤァァァァ!」
諦めたなんて、自分を誤魔化してただけだった。
目の前にリアルの死を与える物が現れた瞬間、『恐怖』が、『後悔』が、そして何より『怨嗟』が心をいっぱいにした。
「死にたく無い! なぜあんな奴らの為に死なないといけないの! いや! 私が何をしたっていうによ! いや! 死にたく無い! 死にたく無い! 死にたく無い! 死ぬならあいつらじゃない! いや! 死ねば良いのはあいつらよ! あぁァァァァ! コロス! コロス! コロシテヤル!」
どんなに叫んでも私の運命は変わらない。
腰が抜けて、大蛇が自分を丸呑みにしようとしてるのに逃げる事も出来ない。
今私が出来る事は理性を失う事。
凶気で心を満たす事。
自分の身体が大蛇の体内へと飲み込まれていく時、頭の中で何かが閃いた。
……触媒
私の能力は無から有を生み出すのには向かない能力。
本当の私の能力は触媒の中の水分を大量に増やす。
胃液でも、唾液でも。
私を丸呑みした大蛇は身体の中を大量の水で満たして動かなくなる。
口から流れる水の奔流と一緒に私は大蛇の中から出ることが出来た。
「帰らなきゃ」
私の生まれ育った村に……。
「帰らなきゃ」
何も楽しい思い出のあの場所に……。
「帰らなきゃ」
全ての奴らに、等しい地獄を見せる為に……。
「カエラナキャ」
ミナゴロシニスルタメニ……。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品はカクヨムコン参加作品です。
カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。
長編も書いているので良ければ見てください!
https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826
この作品を『おもしろかった!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。
よろしくお願いします。
星いっぱい付いたら続き書きます。
厄災の生贄にされた転生少女、覚醒して殲滅の魔女となる。 山親爺大将 @yamaoyajitaisho
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