第2話
学園都市へと無事に入場すると、私は乗り合わせた子たちと別に行動して学園へ繋がる大通りを歩き始める。
在校生たちで賑わう街並みを見ながら通りから外れると、学園から少し離れた所にある宿を見つけた。
扉を開いた拍子にカランコロンとベルがなり、受付けの裏から若い女の子が顔を出した。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
「はい」
「入試生の方ですね。合格発表まで滞在されますか?」
「は、はい!」
された質問に答えていくと部屋の合鍵を渡されて、3階の一室に案内された。
部屋の中はしっかり整えられていて、ベットの隣りの小さいテーブルには小量のお菓子と飲み物が置かれている。
「では、ごゆるりとお
そう言って可愛いエプロン姿の女学生はゆっくりと扉を締めて去っていった。
荷物をおろして簡単に荷解きをすると、窓から外を眺める。
3階からはもう一本向こうの建物まで見えて、近くの食堂や雑貨店の様子が見えた。
この都市には試験期間である1週間後まで留まる予定でいる。
長期間だけど、合格者発表が試験の数日後には行なれるからだ。
レリック学園の試験の内容は初日に筆記が。2日、3日目に実技が行われる予定で、その4日後には成績が発表されることになっている。
実力主義の学園は中でも一定の成績を納めた上で、上位100人ほどが入学を認めれることになっていた。
「そろそろ魔力検査を受けに行くかな」
魔力検査は来た人から受けることが出来る最初の審査だ。
私は宿舎を出てると校門へ向かって歩き出した。
途中何度も在校生の学生たちとすれ違がって、人間と獣人が楽しそうに話している姿に、アッシュハリム国の寛容さを知れた気がした。
種族や身分を問わないと言うのは、本当なんだと思える。
きっとハーフエルフだと分かっても周囲は咎めだりしないだろう。
けれど、お父さんが心配しているのはそんな事じゃない。
エルフの存在を受け入れられたとしても、力を利用しようとする者がいないとは限らないだろうから。
(やっぱり、変身魔法は毎日掛けていないとダメかな)
そう思い至ると肩を落として溜め息をついた。
変身魔法は毎日少量の魔力を消費しているようなものだから疲れるのだけれど、身を守る為にはしょうがない。
しばらく歩いていると広場が見えてきて、そこには噴水があって出店が並んでいた。
そんな人通りの多い場所で、怒鳴り散らす声を囲むように集団が出来ていることに気づく。
(なんだろう……?)
自然と足がそっちに向かうと、地面に両膝を付いた兎耳の男の子と、貴族の息子らしい偉ぶった男の子が指を指していた。
「ハッ! 本当に穢らわしいな!」
そう言うと令息は兎族の男の子を蹴り倒した。
「獣人族が本当に受け入れられるとでも? 泥臭いんだよ!」
いじめる令息の様子に私は不快感が込み上げて来た。
(差別意識のある人がこの学校に入学しようなんて……)
まさか、道中の様子を見て来てないんだろうか。
王命である種族差別化を信じてない言動は学園都市にいると異様さを感じた。
親がなんて言って育てて来たのか知らないが、どんな人かは予想がつくような気がする。
私はそれ以上見ていられなくて、人垣を押し分けて前に出ようとすると、二人の貴族の男の子が声を上げて姿を現した。
一人は黒髪で腰に掃いた剣の柄に手を掛けている少年だ。
後ろにいる茶髪の少年は、暢気に欠伸をしながら頭の後ろで腕を組んでいた。
正反対の雰囲気を漂わせた二人が前に出て来ると、いたぶっていた令息が彼を見て顔を青ざめる。
「ハルト・リトバーム公子!」
(公子……?)
すると、周りの人たちも口々に彼のことを話しだす。
「リトバーム公爵家のハルト様も入学するんだ」
「相変わらずカッコイイ!」
「合格したら一緒に通えるってこと!? 夢みたい!」
周囲が口にするのはどれも褒め言葉ばかりで、貴族ではとても有名な人なのが分かる。
(公爵家の子息なんだ。確かにカッコイイ)
背も高いし、整った顔立ちは目を惹くものがある。
「その後ろにいるのはもしかして、シルバード候爵家のセイヤ様?」
「舞踏会でお姉様方と浮名を流している?」
「カッコイイ! シルバード様なら遊ばれてもいいかも!!」
(それはどうかと思うけど……)
兎に角、現れた二人はどうやら令嬢たちには人気があるみたいだった。
二人とも人目を惹く容姿に、クールでミステリアスな公子と、陽気で親しみやすそうな公子だから注目されても頷ける。
「おい、貴様! この学園では王命で、獣人族を差別することを禁じていることを知らないのか?」
「そ、それは……。でも、おかしいでしょ。ここは名門レリック学院ですよ? 薄汚れた奴等が入って来て良い場所じゃない!!」
「薄汚れた? それは貴殿の方だろ。そいつはお前に汚されただけで、しっかりした格好をしていた」
「そうだね。砦で見かけた時は汚れてなかった」
「見た目の話しだけじゃないっ!」
挑発する公子二人に、令息は憤りを見せた。
そして次の言葉に周りは茫然とする。
「獣人族は以前から奴隷として扱われている種族だ!」
この国で奴隷廃止を出されたのは約10年前。
それからは先代国王陛下の時代から亜人族も獣人族も平等に受け入れられていて、仲良く暮らしている。
以降、種族間の戦争もなく平和で、他人を虐げることを王族は嫌っている節があった。
その様子を国民のみんなが慕っていて、アッシュハリム国は栄えたのだ。
それなのに、今の言葉はどんな環境で育てば口に出来るのだろう。
「その言葉、王族を侮辱していることが分かってないのか?」
「これはもう言い逃れ出来ないね。親から思想を植え付けられていることは可哀想でもあるけれど」
哀れみを向けるシルバード公子の言葉に、リトバーム公子は容赦なかった。
「だからって、歴史をちゃんと学んでいればこうはならないだろ。なんでこんなやつがこの学院に来れたんだ?」
「いくら公爵家の息子だからってそれ以上バカにするなら許さないぞ!」
「ハッ! お前に何が出来るって?」
「ふざけやがって!」
すると離れた所で「こっちです!」と言う声が聴こえて、直ぐに警備の制服を来た年上の人たちが駆け付けた。
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