カエル勇者!しっぽ編。【アシタマジャクシ】

国語力 漫点

第1話 サンドイッチの少女

 俺の名前は、いずれ【フロック】に、なるだろう。


 俺は、前世の記憶を残したまま転生した。元勇者で——ッ!

 俺は、魔王に敗れて最後に放った一言がきっかけで、人間の勇者からカエルの魔物へとジョブチェンジに成功した。



 そして、とある村のオタマジャクシとして生を受けた俺は、故郷の池で経験を積む地獄を味わうと……念願である手足が生えて来た。


「ぁぁ……これで、やっと旅立てる脱獄出来る……」


 そして、俺は今日、生まれ育った。

 この故郷を旅立った。


 しかし、旅に出た俺は、とある問題にぶつかっていた。それは、名前である。

 大人のカエルに成長した場合は、フロックと言う名前になるが……今の俺の姿は——カエルなのに、まだ尻尾が生えている。

 果たして、今の俺は、カエルなのか? それとも、オタマジャクシなのか?


 検索しても正式名称が出て来ない……


 今の自分は、何者か!? 全くもって自分の事を判断出来ない。

 そして、名前について、スっごく! 悩んでいた。


「カエルでもなければ、オタマジャクシでもない……

なら、名前は二つを足した名前にしよう。そうしよう!」


 と、言う訳で……俺は、これから自分の名前を考える事にした。


「とりあえず、カエル、オタマジャクシ、ケロケロゲロッピー、ケロタマジャクシ、オッタマカエルジャクソン・ポーーッ、カエタマジャクシ、タマケロジャクシ、アシタマジャクシ、シシタマジャクシ、キャンタマジャクシ……


 少し、悩んだが……


 「よし——ッ!

 今回は、キャンタマジャクシで行こう」


 そして、俺の名はキャンタマジャクシことキャンタマに決まった。

 と、思ったが……やはり、あまりにも……アレな名前なので、アシタマジャクシで行く事にした。

 なので、俺は今日からアシタマ濱田マリと名乗る事にした。


「名前も決まった! 

 俺の冒険が、今ここから始まる——ッ」



 俺は、故郷を旅立ち……森を進んでいると、森の奥地に綺麗な池を見つけた。

 その池は、大きさは差ほどではないが、水が澄んでいて、とても居心地の良さそうな池だった。


 そして、俺は決めた——ッ!

 

「この池を俺の縄張りとする!」


 俺は、この池に住むと決めた! そして、そうと決めた! 俺のとる行動は決まっていた。

 まず、はじめに——先に暮らしている先住者達。同種の大ガエル達の事を征圧——ッ!

 俺は、それを済ませると——この池のBOSSとなった。「ヘイッ! BOSS」


(悪いが、同じモンスターと言っても、育った環境が違い過ぎる。

 お前達の様な生ぬるい環境で育った奴等など、相手にならんわッ! ケェーロ、ケロケロ——ッ!)


 そして、俺は、その後。池の淵に海水浴用のイスとパラソルをセットすると、サングラスをかけて寝そべった。


「おい、そこの——お前……トロピカルジュースを持ってこいッ!

 ダッシュでだ! ついでに、焼きそばパンも買って来いッ!!!」


 その声で、数匹の大ガエルが慌てて動き出す!


「お前とお前は、俺をその大きな葉っぱで仰げ——」


 すると、二匹のカエルが大きな葉っぱで仰ぎ出した。


「ケーロケロケロッ……愉快、愉快、ここは、俺の俺だけの楽園だ——ケコ……」


 そんな感じで、俺が浮かれていると……突然、森の方が——ざわめき出した。


ざわっ……ざわっ……ざわっざわっ…………


「…………なんだ!? この、カイジみたいな感覚は……」


 そして、姿を現したのは——リザードマンの群れだった。

 しかも、そのリザードマン達は——あろう事か、俺の楽園である。この池を奪い取ろうとして来た。

 勿論、俺は必死に抵抗をした。俺達の楽園である。この池を守る為に、仲間を守る為に必死で戦った……

 しかし、仲間の大ガエルは……誰一人として一緒に戦ってくれる者は居なかった。

 そして、俺は——健闘虚しく……一人。リザードマンに、ボコボコにされると池を追い出された。


「……これが、よに聞く。追放ものってやつか……無念……」


 俺は、そう納得して——その場を逃げる様に後にした。



 それから、俺は……ボロボロ体を引きずりながら、森の中を進んだ。


「くそッ! なんで、リザードマンなんかに——俺は、負けたんだ!?」


 俺は、歩きながら……その事を考えていた。

 …………数か……? いや、大ガエルを相手にした時も、かなりの数はいた。

 ならば、何故? 負けたんだ……

 そして、考えた結果出た答えは——ッ!


「武器だ——ッ!!! 武器が無かったから、俺は負けたんだ——ッ!!!」


 それからの俺の行動は、早かった!

 そこらに落ちている木を加工すると、棍棒を作り出した。

 そして、冒険者の野営後で忘れ物のナベの蓋を装備すると——俺は勇者としての格が1ランク上がった。


「おお……やっぱり! 武器と盾を装備しただけで、雰囲気かなり違うな——ッ」


 そんな感じで、浮かれながら森を抜けた。俺は、小さな村を見つけた。


「少し小腹も空いたし……この村で、休憩と食事にするか……」


 そして、俺は村に足を踏み入れると——ッ。


「きゃぁぁーーー!!! モンスターよッ!」


「女、子供は下がれ! 男は、何でもいい——武器を取れ——ッ!!!」


「ちょ……ちょっと、待って——俺は……」


「黙れ——ッ!!! 化け物——ッ!!!」


 俺は、問答無用でボコボコにされた。

 しかし、もともとボコボコだったので……村が勘違いをすると、そこまで攻撃を受ける事もなく——騒ぎは、沈静化された。


「縛り上げろ!」


「このモンスター……普通に入って来やかって——ッ!」


「……ごめんなさい。申しません……許して下さい…………」


「誰が、魔物の言葉など信用するかッ! 早く始末するぞー!!!」


「いや、まて……まず魔物が話す事の方が、不思議じゃないのか……?

 それに、コイツ。よく見ると……棍棒とナベの蓋をなんか装備して、格好だけなら冒険者ぽくないか……?」


「……確かに、そう言われて見れば……」


 フロック……いや、アシタマは……あの時、リザードマンに負けた事で手に入れた。

 棍棒とナベの蓋の装備のお陰で、命拾いをする事になった。


「話を……話を聞いてください。皆様——ッ!

 俺は、実は冒険者で——悪い魔女の呪いで、この姿に変えらてしまったのです。

 そして、証拠となるとは思いませんが……この傷を見て下さい。

 俺は、この村に着いた時には——もう瀕死でした。

 それは、この村の近くで凶悪なモンスターと戦闘をしていたからです。

 信じてもらえるかは分かりませんが……俺は、本当に皆様に危害を加えるつもりはありません。

 むしろ守りたいと思っています。信じてください……」


 そう涙ながらに訴えると、一人の少女が駆け寄って来た。

 そして、その少女は大人達に訴えかける。


「このカエル? さん……? が、村に入ってすぐに暴れていたら。

 もう被害は出ているはず。まだ被害が出ていないって事は、このオタマジャクシ? さん……? が……悪者ではないって事の証明にならない?

 私は、信じたい。だって、このカエル? さん……? からは、怖い感じは伝わって来ないから——」


 そうして、少女の説得により。

 村人達は、納得すると——俺を解放してくれた。


「改めて、自己紹介をする。

 俺の名前は、アシタマジャクシことアシタマと呼んでくれ。濱田マリも可だ!」


 そして、少女の必死の説得で——村人に受け入れられた俺は、自己紹介が終わると村人に、お腹が空いたので——何処か食事を取れるところは無いかと尋ねると、さっきの少女が駆け寄っくると——。


「アシタマさん。お腹空いてるの? なら、良いところを紹介してあげる。私のお店に食べに来てよ!」


 そう言われたので、俺は——さっきの感謝も込めて、少女の店に行く事にした。

 そして、そのまま少女に着いて行くと……宿屋に着いた。


「君の家は、宿屋だったのか……」


「そうよ。

 でも、紹介したのは——ここじゃないの」


 そう言って、連れて行ってくれた場所は……宿屋の隣の掘立小屋……屋台みたいな手作りの小さな店だった。


「ここは……?」


「ここはね……私の店なの——。

 どう!? 凄いでしょッ!!!」


 そう話す少女の目は、キラキラと輝いていた。

 俺は、そんな少女を見て嬉しくなると……


「ここの店では、どんな料理を提供してくれるんだい?」


「ここはね。サンドイッチ屋さんなの——。

 今日、取れたての新鮮な野菜とハムとチーズを挟んだサンドイッチが、オススメよ!」


 俺は、少女のオススメを注文すると……


「じゃ〜、それを頂こうかな」


 少女は、喜んで調理に取り掛かった。


「任せて——アシタマさん。世界一美味しいサンドイッチを作ってあげるわ——ッ!!!」


 それから、出来上がったサンドイッチを俺が「美味しい、美味しい!」と言いながら食べると、少女は跳ねる様に喜んていた。

 その姿を見て、自分も嬉しくなった。


(ぁぁ…….きっと、この子は——近い将来。いい料理人になる……)


 

 それから俺は、怪我が完治するまでの間——この村で、お世話になる事になった。

 そして、怪我が治るまで——やる事の無い俺は、村を見て回ると——何故か!? 少女は、いつも俺の後をくっついて来た。

 

「ねぇ、アシタマさん。今日は、何処に行くの?」


「今日は、サンドイッチのお礼に——君に何かプレゼントでもしようかな——」


「えっ! 本当!? 嬉しい——ッ! アシタマさん。大好き——ッ」


 そんな彼女と俺の姿を見て、村人達も少しずつ心を開いてくれる様になって来た。


「今日も、お二人さんパトロールかい?」


「そうなの。私とアシタマさんで、村に魔物が入って来てないか確認しているのッ!」


「ハハハハハハッ……それは、傑作だ!」

「いつも、ありがとうね。二人とも——」


 そして、傷も治りかけてきた頃——。

 俺は、旅立つ前に……村近くの池を調べに行く事にした。

 それは、リザードマンが——この村を襲撃しないか心配しての事であった。


「あの時は、俺一人だけ。追い出されたが……他の大ガエル達は、大丈夫だろうか?

 リザードマンに、虐められていないだろうか……」


 そんな事を心配しながら池を覗くと……

 大ガエルとリザードマンは、仲良く暮らしていた。


「…………何で? ケコ……」


 俺は、真相を確かめるべく……姿を隠しながら、もっと近づく事にした。

 そして、アイツらの声が聞こえて来る!


「リザードマンさん達のお陰で、この池が前より平和になりました。

 本当にありがとうございます!」


「いやいや、こんな素敵な場所を独占しようなど誰も思いませんよ。

 私達も、大ガエルさん達のが居る。お陰で、とても助かっていますから。

 まぁ、一人——例外を除いてですが……」


「ああ、アイツの事ですか!? アイツは、いきなり我々を征圧して、その後! 助けを求めたリザードマンさん達にボコボコにしてもらって、本当にスッキリしました!」


「また、何かあったら言ってください。力になりますから。

 まぁ、アイツは——もう戻って来ないと思いますが——ッ。アハハハハハ……」


「そうですね。アハハハハハッ……」



「…………アイツら、俺を馬鹿にしやがって——ッ!!!

 でも、今は——アイツらが村を襲わない事を確認出来れば、それで良い……」


 そして、二種族の話を聞いていると——気になる話が持ち上がって来た。


「そう言えば、こんな話を聞いたのですが……」


 それは、最近——この付近のゴブリンの集落で、大量のゴブリンが成人した。と、言う話であった。

 それにより発情期には、大量の女性が攫われる。恐れがあり——。

 念の為に、大ガエルやリザードマン達も警戒するとの話であった。

 それは、発情期になったゴブリン達は——見境がなくなり。メスを攫うだけではなく……攻撃的になる傾向にある事もあげられる為であった。


 そして、その中でも一番警戒しなくてはならないのは人間……の女性だった。

 ゴブリン達は、間違いなく。人間の女性を攫いに来る。

 それが、少女であっても見境なく……

 その事を知った俺は、どうするべきか……考えるよりも明らかだ——ッ!!! 

 人間達を必ず助ける。


 しかし、この辺一帯の村々を人達、全員を非難させるには、時間と場所がない……そう、とくに時間がないのだ。

 ゴブリン達は、成人している為に——いつ人間の村を襲いに来るとも限らない。


そして、その後も大ガエルとリザードマンの話に聞き耳を立てるが、有力な情報は得られなかったので……

 俺は、直接——ゴブリンの集落を探し。情報を調べる事にした。


 そして、ゴブリンの集落に潜入して情報収集をしていると、近日中にも人間の女性を攫う計画が練られていた。


 それから、俺が細かい情報まで調べて終えた頃には、辺りは——すっかりと暗闇になっていた。

 しかし、俺は夜目も聞く為に——急いで世話になった村に戻ると……村は、静まり返っていた。

 そう、村人は——皆んな寝てしまったのだ。

 だから、俺は一人……世話になった村に恩を返す為に、強力な結界を張る事にした。

 そして、俺は——まず自分の魔力を唾液に混ぜて、村を大きな円で囲うと……唾液で魔法陣を描いた。


「ぜぇ……ぜぇ…………唾液が、すっからかんだ。皮膚もパリパリに乾燥しやがる……だが、俺は——やるッ!!!」


 そう言うと、井戸水を汲むと浴びる様に飲んだ。

 そして、MPポーションで魔力を補充すると……また、口から唾液を垂れ流しながら……残りの魔法陣を完成させた。


 そして、最後に残ったのは……


「いつも、俺にサンドイッチを作ってくれる。

 あの子のお店——ッ。ここだけは、絶対に守ってやる!」


 アシタマは、その気持ちで——少女の屋台に入念に結界を張った。


 そして、張り終えると……


「皆んな……今まで、ありがとう。

 もう傷は癒えた。俺は、このまま次の村に向かう……他の村も救いに行く——ッ!」


 アシタマは、静かな街に——そうお礼を告げると……次の村を結界で救う為に向かった。



 翌朝、村人達が目を覚ますと——。


「おいッ! 何だ!? この悪臭は……

 しかも、何で村全体が——ヌメヌメ、ベトベトなんだ!」


「誰か、状況を説明してくれ——ッ!」


 村人が目を覚ますと、村は大混乱——ッ! 

 村の至る所で、人が……滑って転んで……滑って転んで……


 そして、村人達は皆んなで——今村が置かれている状況を把握しようと、痕跡を調べる事にした。

 すると、アシタマの足跡や手形が、至る所にビッシリとついている事に気づいた村人達が、怒り出した——ッ!!!


「あの——ッ……半端ヤロウ!!! ただじゃおかね——ッ!!!」


「あんなに、良くしてやったのに……村をこんなにしやがって——ッ!!!」


「アンなら、アイツの居場所知ってるんじゃないのか——ッ!? アンを探せーーー!!!」


 そして、村人達が——アンを探す為に、サンドイッチの屋台に来ると……


 そこには、膝から崩れ落ちる。アンの姿があった。


「…………アン……」


「これは、ひどい……無茶苦茶だ……」


 そこには、唾液でベトベト、ヌメヌメ、メチョメチョの屋台が……


「なんで……なんで……アシタマさん……私の何がいけなかったの…………」


 そして、崩れて落ちる。アン……

 それを見守る。村人達……


 すると、アンが——いきなり笑出したッ!


「アハハハハハッ! アハハハハハハハハ……

 覚えてろ……見つけ出して、必ず——ッ。

 殺してやる——ッッッ!!!」



 一方、その頃。アシタマさんは——。


「ふぅ〜……昨日は、ゴブリンの集落に近い村だけで、精一杯だったから。

 今日は、この辺の村——全てに結界を張るぞーーー!!!

 頑張るぞーーー!!! えいえいおー」


_________________________________________

あとがき


面白いと思った方は、本編の方も読んで頂けると嬉しいです(((o(*゚▽゚*)o)))♡↓↓↓


https://kakuyomu.jp/works/16818093090925187007/episodes/16818093090925413949

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