三章 光と闇の交錯

サーリャと男の戦いは、まさに壮絶な均衡を保っていた。

魔法の閃光が交錯し、空気を切り裂く音が響き渡る。

サーリャはその華麗な動きで、男の攻撃を巧みにかわしながら反撃の隙をうかがう。

しかし、男もまた容赦なくサーリャに向かって強烈な魔法を放ち、素早く攻撃を繰り返す。

戦場に響く爆発音と魔法の衝撃は、見る者の心を圧倒するほどだ。


サーリャは時折、少し後ろに退いては、次の攻撃に備える。

その動きは、どこか焦りが見え隠れしていた。明らかに、相手の力に圧倒されているのが感じられた。

サーリャが初めて見せるような苦しげな表情を見て、胸が痛む。

敵の魔法が一度、サーリャの衣服を裂くように迫り、彼女は必死でそれをかわし、次の一撃で反撃を試みるが、どうしても相手の猛攻に押されているように見える。


男の魔法がサーリャをかすめ、少しずつ彼女の体力が削られていく。

その傷口からは、血が滴り落ちているが、サーリャはその痛みをこらえて戦い続けていた。

彼女の表情には、わずかな迷いが見え隠れしている。


「サーリャ…!」

僕は心の中で叫ぶ。

だが、サーリャはその表情を一瞬見せただけで、すぐに冷徹な戦士へと戻る。

痛みを感じる暇もなく、すぐにまた敵に向かって魔法を放つ。

僕はその激しい光景を見つめながら、必死に体を動かそうとする。

しかし肩の痛みはますます酷くなり、動くたびに息を飲むほどの苦しさが襲った。

やっとの思いで何とか近くの木に体を寄せる。

サーリャの戦っている姿を初めて目の当たりにした僕は、言葉を失っていた。

魔法の光が煌めき、空気が震えるほどの力強い衝撃が続く。


「あれが、サーリャの戦い方……」

僕は呆然とその姿を見つめながら、胸の中で呟く。

彼女がどれほどの力を持っているのか、どれほどの修練を積んできたのか、想像もつかない。だが、同時にふと浮かぶのは、子供の頃の記憶。

命を救われたあの日、暗闇の中で感じたあの奇妙な温かさ。

その温かさが、サーリャから来ていたのではないかという疑念が胸をよぎる。


「でも……信じるには、まだ足りない。」

僕は心の中で葛藤する。

あの日の出来事、あの瞬間の不思議な感覚は、まるで夢のようで、今となってはすべてが現実だったのかどうか、確信が持てない。

しかし、目の前にいるサーリャの姿が、かつて自分の命を救ったのだと無言で告げているような気がしてならなかった。


戦いの最中、サーリャが一瞬僕の方を見た。

その目には何も感情が宿っていないように見 える。

しかし、ほんの一瞬だけ、彼女の視線が僕に向けられたことに気づき、胸の奥で何かが弾けるのを感じた。

サーリャが何かを伝えようとしているのか、それともただ戦いに集中しているだけなのか……僕には分からない。

ただ、その瞬間、サーリャの強さだけでなく、彼女の内面に潜む孤独さを感じ取ったような気がした。

だが、彼女の戦いは予断を許さない状況だ。

相手が徐々に優位に立ち始めているのを感じながら、僕はどうしてもサーリャが無傷で勝つ姿を想像できなかった。


「頼む……負けないで、サーリャ。」


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