二章 忍び寄る影

夕暮れの赤い光が地平線を染めるころ、僕は教会を出て家路についた。

穏やかな風が頬を撫でる中、ふとした違和感が背筋を走る。

人気のない道を進むたびに、背後から微かな気配を感じるのだ。

立ち止まって振り返るが、そこには誰もいない。

ただ、木々の影が長く伸び、わずかな風が葉を揺らしているだけ。

僕は気のせいだと自分に言い聞かせ、再び歩き出した。

だが、その違和感は次第に確信へと変わっていく。

「誰だ?」

勇気を振り絞って声を上げると、静寂を破るように木々の隙間から低い笑い声が聞こえてきた。

それはどこか不気味で、皮膚をざわつかせるような響きだった…。



「気付くのが遅いな。だが、それで十分さ。」


 声と共に姿を現したのは、闇に溶け込むような黒い外套をまとった男だった。

その目は、鋭く光り、恐怖を呼び起こすようにあなたを貫く視線を放っている。

「お前は......誰だ?」

あなたの問いに、男は口元を歪めて笑う。

「俺のことなんかどうでもいい。ただ、お前が特別らしいからな。お前の血.......

その価値を試させてもらう。」

言葉が終わるよりも早く、男はあなたに向かって飛びかかってきた。

その速さは人間のものではなく、あなたは反射的に身を引いたものの、完全には避けきれず、肩に鋭い痛みが走る。


「くっ......!」

地面に倒れ込んだあなたを見下ろしながら、男は勝ち誇ったように笑う。

その冷酷な目を前にして、僕の体は恐怖で動けなくなる。

「やめなさい!」

その瞬間、空気を切り裂くような鋭い声が響き渡った。

振り返ると、サーリャが杖を手に現れ、冷たい眼差しで男を睨んでいる。

その姿は普段の穏やかさとは一線を画し、まるで戦場に立つ戦士のようだった。

「邪魔をするな、女。」

男は舌打ちしながら振り返るが、サーリャは一切動じる様子を見せない。

彼女の手から放たれた光の矢が、男に向かって一直線に飛び出した。


「フッ......こんなものか。」

しかし男は素早くそれを避け、反撃のように闇のような影を繰り出す。

その攻撃をかわしながら、サーリャはあなたに向かって叫んだ。

「早く逃げて!」

僕は立ち上がろうとするが、肩の痛みが強く、思うように動けない。

それを察したサーリャは、再び男に向き直り、杖を振るった。

「あなたの相手は私よ!」その声は鋭く響き、力強さに満ちていた。


光と闇の攻防が繰り広げられる中、僕はその場に釘付けになりながらも、何とか体を引きずって距離を取ろうとする。


だが、男の冷酷な視線があなたに向けられる。

「まずは邪魔な小虫からだ。」

その言葉に、サーリャの瞳が一瞬鋭く光った。

男があなたに向かって再び動こうとした瞬間、

サーリャは素早くあなたの前に立ちはだかり

「この子には指一本触れさせない!」

その一言に込められた決意に、あなたは胸が熱くなる。

しかし、サーリャの額に薄く汗が浮かんでいるのを見て、戦いがどれだけ苛烈なものかを思い知る。


男が再び動きを取り戻し、サーリャとの激しい攻防が続く中、僕は自分の無力さに苛立ちを覚える。

だが、ただ見ていることしかできない自分に、歯噛みするような思いが込み上げてくるのだった。

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