第4話『暗殺事件』
いけないいけない。ここは人前だから、自重しなくては……鼻息止めたら息が止まりそうになって、私は何度か深呼吸した。
「私はっ……ブライアン殿下とっ……結婚したいです! 辺境での暮らしも、まったく問題ありません。大丈夫です!」
なにせ、前世は四畳ワンルーム三食コンビニ飯だったもので! 貴族っぽい暮らし出来るなら、何処でも大歓迎です!
「……君が良いなら、良いんだが……俺は王族とは言え、権力も何もない。兄王が在位中は冷遇されるだろう。それでも?」
「それでもです!」
力強く頷いた私に押され負けた様子で、ブライアンは微笑んだ。
その笑顔が……かっ……可愛い。これまで少し影のある表情だったけれど、もう堪らないくらい可愛い。結婚式の日が待てない……。
「そうか。本人がそこまで言うなら、構うまい。俺は一週間後には辺境に戻らねばならないんだが、また帰って来る時に婚約の話を本格的に進めよう」
「……っ……!! いえ!! 私、一緒に行きます!!!」
私は慌てて、手を挙げた。
だって、それって確か、ブライアンが陥れられるあの事件……エイドリアンを暗殺しようとしたと仕立て上げられる事件ではない? 時系列的に言うと、そうなのよ!!
その時には、ブライアンが完全悪役だと思っていたけれど、彼も兄王に陥れられていて、数々の悪事を重ねてしまっていたのではないかとエイドリアンは何年も経って気がつくのよ。
しかし、ここで私が防いでしまえば、エイドリアンとシャロンも幸せになるし、私もブライアンと幸せになります。皆、問題なく幸せになるのよ。ありがとう。
「しかし……君はまだ婚約していない状況だ。その状態で、俺と数日旅をするというのも……どうだろうか」
私の強い主張に、ブライアンは戸惑っているようだ。
わかる……わかるよ!! きっと今までブライアンの傍に居たのは上品な貴族令嬢ばっかりなのに、現代肉食女子みたいな事をされると戸惑いますよね。
けれど、ここはブライアンの未来に直結する話なのだ。身を引く訳にはいかない。
「私たちは、将来的に結婚するのです。旅行するのが未来の旦那様であれば、何の問題もございません。噂を流されようが、そのお相手がブライアンであれば責任を取ってください」
私が真面目な顔をしてお茶を飲めば、ブライアンの顔は目に見えて赤くなった。こんなことを言ってしまうとなんだけど、なんだか可愛い……私が居るわという気持ちになる。
「そっ……そうか。エステラがそこまで言うのなら、俺は別に構わない。出発する時は迎えに行くので、準備を調えておいてくれ」
「わかりました」
私はにっこりと微笑み大きく頷いた。こうはしていられない……ブライアンを救うために、私は時間を一秒でも無駄には出来ないもの。
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