無価値の結界師 ～不遇クラスから始まる英雄譚～

第2話 失意のどん底

リュカは「結界師」という職業（クラス）を与えられたことで、村中から失望と嘲笑の眼差しを向けられ、深く落ち込んでいた。彼は家に引きこもり、外に出る気力も失っていた。それを知ったアリスはリュカの家の前で立ち止まり、ドアをノックするかどうか悩んでいた。彼女は「聖女」という職業（クラス）を与えられ、村中から祝福されていた。しかし、その祝福がリュカとの間に壁を作っているように感じていた。

「リュカ、私に何かできることはないかな……」

彼女はそう思いながらも、どう声をかければいいのか分からず、結局ドアをノックすることはできなかった。

朝起きても、リュカは自分の部屋でクラス授与式のことを思い出していた。あの日、広場で自分に向けられた期待の眼差しが、一瞬で失望に変わった光景が頭から離れない。彼は拳を握りしめ、涙をこらえながら呟く。

「なんで……なんで俺だけがこんな職業（クラス）なんだ……」

彼は自分が得た職業（クラス）は無価値なものだと感じ、未来に希望を見いだせないでいた。

その日の昼、リュカは村の外れにある小さな丘に登る。そこは彼が幼い頃からよく訪れていた場所で、悩んだ時や寂しい時に一人で過ごす場所だった。昔はよく村の子達と喧嘩したときにここに来たな…とリュカは思いながら丘の上から村を見下ろすと、普段通り人々が普通に生活している光景が広がっていた。ただ少し違うのは、若者に活気があることだった。リュカはその光景を見ながら、自分だけが取り残されているような気がした。

「リュカ！」

突然、アリスの声が聞こえる。リュカは振り返ると、アリスが息を切らしながら丘に登ってくるのが見えた。リュカを心配していたアリスは、リュカの家の近くでどうしようかと悩んでいたがリュカがどこかに向かうのが見えたので追ってきたのだった。アリスはリュカの隣に座り、しばらく無言で過ごす。そして、やっと口を開いた。

「リュカ、大丈夫？」

リュカはアリスの心配そうな声に胸が締め付けられる。彼女は「聖女」という職業（クラス）を与えられ、村中から祝福されていた。それなのに、自分は……。リュカはうつむいたまま、小さく首を振る。

「……大丈夫じゃないよ。俺は、もうダメだ……」

アリスはリュカの言葉に胸を痛める。彼女は何か励ましの言葉をかけようとするが、うまく言葉が出てこない。代わりに、リュカの手を握りしめる。

「リュカ、あなたは一人じゃないよ。私はいつもあなたの味方だよ。」

リュカはアリスの温もりを感じながらも、自分が彼女にふさわしい存在ではないような気がして、さらに苦しくなる。彼はそっと手を離し、立ち上がる。

「……ありがとう、アリス。でも、もう帰るよ。」

リュカはアリスを置いて、丘を下りていく。アリスは彼の後ろ姿を見つめながら、どうすればいいのか分からず、ただ涙をこらえるのだった。

その夜、リュカは家の中で一人、拳を握りしめて悔しさを噛みしめていた。彼は自分のクラスが無価値だと感じ、未来に希望を見いだせないでいた。しかし、その時、彼はふと窓の外を見る。そこには満天の星空が広がっていた。

リュカは星空を見つめながら、ふと思った。

「……俺は、本当に無価値なのか？」

彼はその疑問を胸に、眠れぬ夜を過ごすのだった。