転生したら第一王女だったのでせっかくなら世直しの旅に出たいと思います!~憧れの御隠居目指して優秀な部下をつれ回し漫遊旅~

第1話

「リーフ様!食べ過ぎですよ!」

「あはは!御免御免!」

喫茶店のバルコニーで少女、リリーはリーフと呼ばれた少年を注意していた。

ここ、リンデガル王国一の喫茶店『喫茶リリアンヌ』では貴族や農民に関係なく美味しいお茶やお菓子を提供していた。

しかし、

「おいおい!農民風情がこんな贅沢品に手を出してるぜ!」

「うわぁ!」

「今日はこの国の筆頭貴族、エンデブルグ伯の貸し切りだ!とっとと出ていきやがれ!」

貴族を名乗る無法者達により喫茶リリアンヌは占拠されてしまった。

「ちょっと!やめてください!」

喫茶リリアンヌの看板娘、リリーはそんな貴族もどきに食って掛かる。

「あ?かわいこちゃんは黙ってな!後で可愛がってやるぜ!へへへ。」

しかし、そんなリリーの抗議の声を気にも止めずに貴族もどきはニタニタと下卑た笑みを浮かべる。

「いやらしいやつ。」

「あ?なんだと!?」

リーフと呼ばれた少年はそうポツリと呟いた。

独り言のようなその呟きは不幸なことに貴族もどきの耳に入ってしまったようだ。

「このクソガキ!」

リーフの胸ぐらを掴む貴族もどき、方や蔑むような目で見つめるリーフ。

一触即発の雰囲気を打ち壊したのは第三者の声だった。

「騎士だ!王国騎士団が来たぞ!」

「ち!あの融通の利かない奴らか。お前ら!帰るぞ!」

捕食者から逃げる虫のように貴族もどき達は散っていった。

「リーフ様!無事ですか!?」

「あぁ、大丈夫だよ、リリー。」

リリーとリーフが話していると、騎士と呼ばれた青年がリーフに語りかける。

「またですか、御子息様。」

「今回のはあっちから絡んできたんだよ。」

「いいえ!リーフ様が悪口言うからです!」

「リリーさんもこう言っておりますよ。」

「えー?ちぇ!せっかくこのリリアンヌを守ろうとしたのに!」

いじいじといじけるようにリーフが呟くとリリーが苦笑いを浮かべながらクッキーを差し出す。

「それはわかってますよ。リーフ様は優しいからあんなこと言って気をそらしてくれたんでしょう?」

「クッキー!ありがとう!」

「それはそれとして、リーフ様は弱いんですから、あんまり喧嘩売るようなことしちゃ駄目ですよ?」

「むぐー。」

クッキーを頬張りながら不服そうにリーフが唸る。

そんな姿を見てリリーと騎士と呼ばれた青年、ルーデリッヒはため息をつくのであった。


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エンデブルグは実在する伯爵である。

そして喫茶リリアンヌを襲撃した無法者もまた、エンデブルグの傘下に所属する者達であった。

「高々ガキ一人に追い返されたときいているぞ?」

「い、いえ、騎士団が来たと触れ回ってる奴がいまして……。」

「だが、実際には男一人だったと聞くぞ?その程度も処理できんのか貴様らは!」

「へ、へい、直ぐにでも奴らに痛い目見せてやりますよ!」

「もう遅いわ!貴様らのせいでエンデブルグの名は汚れてしまったわ!」

「汚したのは貴様自身だ。」

エンデブルグ邸に幼子の声が響く。

「なに?何奴!」

エンデブルグ伯が声の出所を探すと、その人物は堂々と扉から入ってきていた。

「あ!あのガキです!それに共にいるのは騎士と呼ばれた奴!」

「なんと、相手方からのこのことやって来るとは、何たる吉兆!」

「貴様ら!この者共を追い出せ!手荒にしても構わん!」

そう告げると共に無法者達は武器をもち、リーフ達に襲いかかった。

「ぎゃ!」

「ぐふ!」

が、しかし、襲いかかった無法者達は片っ端から騎士と呼ばれた青年、ルーデリッヒにのされていく。

「ルー、私の分も残しておいて下さい。」

リーフを守るように立つメイドの女性がルーデリッヒに抗議した。

「すまん、レン。しかし、奴らが先に御子息様に手を出したのだ。」

しかし、ルーデリッヒはルーデリッヒで歯止めが利かないようだ。

「ふむ、構わん。ルーさん、レンさん。私に構わず凝らしめてやりなさい。」

リーフは得意気に、大好きだった台詞を告げる。

「「は!」」

そこからは一瞬の出来事だった。

無法者達はバッサバッサと峰打ちで切り伏せられ、当主であるエンデブルグ伯は組伏せられた。

「き、貴様ら!こんなことをしていいと思っているのか!」

「控えおろう!この紋章が目に入らぬか!こちらにおわす御方を何方と心得る!」

ルーデリッヒが叫ぶ。

「恐れ多くもリンデガル王国が第一王女、リーフェンス・リンデガル様にあらせられるぞ!頭が高い!控えおろう!」

続いてレンと呼ばれたメイド、レーンディーヌが叫ぶ。

「な、なんだと!?このガキ、いやこの御方があの第一王女!?」

「エンデブルグ伯、罪無き民に当たり散らすその行為、伯爵としての責任を取る覚悟はできておるのであろうな?」

威厳のある声がエンデブルグ伯を追い詰める。

「ご、誤解です!王女様!あの者達は他人!私には関係の無い者達でございます!」

「そ、そんな、エンデブルグ伯!?」

「黙れ!お前達の関係には調べはついておる!余罪も数える程判明しておるわ!」

「な、なんと……。」

厳しく叱咤されたエンデブルグ伯は無法者達と共に城へと連行されていった。

「此にて一件落着!」

リーフ、もといリーフェンスは満足そうにそう言った。

「本当に此でよかったんですか?リーフェンス様。」

ルーデリッヒは少し不安そうにたずねた。

「私、台詞間違っていませんでしたよね?」

レーンディーヌは戸惑いつつもやりきった感を出している。

「うん!二人とも完璧だった!完全に理想どおり!」

リーフェンスは嬉しそうに答える。

「これでこの国に蔓延る悪がまた一つ潰えた!よかったよかった!」


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「リーフ様!また食べ過ぎですよ!」

「あはは!御免御免!美味しくってつい!」

喫茶店のバルコニーで少女、リリーに注意されているのはリーフェンスが男装している姿、リーフだ。

「もう!何処の御子息様だか知らないけれど、お金がなくなってもつけにはしないからね!」

「わかってるよ~!お小遣いで何とかやりくりしてます!」

そう、彼女は第一王女であるが、お小遣い制である。

お金の大切さをわかって欲しいと言う国王の父としての慈悲である。

城の人々は善良だ。

しかし、一歩城を出てしまえば今回のような悪が此処彼処に蔓延っている。

「御隠居様みたいにかっこよく世直し出きればいいんだけどね?」

「リーフ様?なにか言いましたか?」

「いや!なんでもないよ!それよりはケーキと紅茶をおかわり!」

「もう!言ったそばから!」

第一王女リーフェンスは今日も王国の平和のために諸国漫遊の旅に出る。

ちょっとの趣味に走りながら。

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