第2話 絶望
私は珍しいとされる精霊術師。光の精霊ルクシエラ様をはじめ様々な精霊様達の力を借りて戦うの。
誰にも手の内を晒したことはないのだけれど、今日の優勝賞品"大精霊の指輪"を欲するルクシエラ様のために頑張るつもり。
どうやら彼女にとって思い入れのある指輪のようで、恩返しのためなんとしても手に入れたいの。
私は準備を整え、意気揚々と武闘会場へ向かった。
しかし……
「今日は俺と剣士フリード、魔法使いサイクス、神官リオメル、騎士グレアムで行く。補欠は騎士オルネだ。リシュアナは外す。悪いが」
「なっ……」
リシュアナは私の名前です。
つまり
今日の戦いが始まるまではメンバー変更が認められている。ケガや病気に備えてだ。しかし私は元気……。
「理由は説明してくれるのでしょうね」
「あぁ? 俺の決定だ。とはいえ、外れるのに理由が必要か? 今日の敵は高い攻撃力を持った相手が多い。騎士グレアムを出して防御の中心に据える。そうなるとケガの可能性も高いから、同じ騎士を補欠にも選んだ。わかったか?」
さも当然のように説明するゴレアスですが……
「(お前は俺の誘いを断った……俺の女になるなら当然出していたがな)」
なんのことはありません。この男は自分がカッコよく活躍することが全ての男。そして好色で下品だ。欲望を隠しもせず小声で囁いたのは最低な言葉だった。オルネはきっと受けたのでしょう……。
「借り物の力なんて自ら戦う者たちに失礼だと思わないか?」
割り込んできたのはフリードだ。綺麗な名前とは裏腹に実力至上主義者であり、精霊の力を借りて戦う私を認めない。私とは仕事だけの関係と割り切っていると面と向かって言われたことがあったが、こんな時にその思いを発揮してきたのか……。
「厳しい戦いの中でどれだけ精霊が安定して戦い続けられるのかは疑問だ」
グレアムもですか。大柄な騎士で頼りがいがあると思っていたが……。
「……」
リオネルは無言だ。彼は常に神に祈っている不思議な人なので仕方ないが、少しはこちらにも興味を示してくれてもいいのでは? 予選では私の精霊たちがあなたをフォローしていたと思うけど。
そしてオルネはうっすらと笑みを浮かべてこちらを見ているだけ。
私には筋肉ゴリラに寄り添って愛を囁くなど口が裂けてもできないわ……。
「わかっただろ? だれもお前を推さない。まぁ観戦券位やるよ」
汚い顔で下劣な笑みを浮かべながら私に向かって紙切れを投げてきた……。
周囲のギルド職員の中には申し訳なさそうに頭を下げる者もいたが、誰も何も言わない。
もういいわ。
ルクシエラ様には謝るとして、望まれていない私は帰ろう。
会場を出ると、相変わらずの良い天気だ。
来る時と違って、その生暖かさが不快にも感じてしまうのが不思議だった。
「ルクシエラ様、すみません。"大精霊の指輪"は手に入れられそうにありません……」
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