大正逆転生~その異世界人は大正時代に転生してしまった~
藍無
第1話 逆転生
落ち着いて、状況を整理しよう。
私はフォリス・スノーという名前のこの世界とは違う世界の人――異世界人だった。
そして、私は道で魔王と対峙して、いざ戦おうと剣を抜いた瞬間に魔王が手を振りかざして妙な呪文を唱えた。それで気が付いたら、ここにいた。
――え?
これって、魔王の唱えたわけのわからない呪文のせいだよね_?
目の前に広がる景色は、私には到底理解できないものだった。
木で作られた珍しいつくりの広いお屋敷のような家。
そして、鏡に映る妙なものを着た自分の姿。
小説に書いてあった着物、というものにドレスの短いバージョンを合わせたかのような不思議な格好だ。そういえば、ソフィアの小説には着物ドレス、という名前として紹介されていた気がする。
というか、私、見た目も変わっていない_?
転生する前は確かに長い金髪でオレンジ色の瞳だったはずなのに、今は黒い髪で、オレンジ色の瞳になっている。金髪から黒い髪に変わっちゃった_?
いや、でもちょっと待て、私の名前って確か
やばい、記憶が二つある。
変な感覚だ。
一つは、異なる世界で魔王と対峙して戦おうとしたところで転移させられたフォリス・スノーという名前の少女の記憶。
そしてもう一つは、赤藤れなとしてこの国――日本で生きてきた記憶。
一体どちらが本当の記憶なのだろうか_?
いや、二つとも私の記憶なのか_?
えーっと、情報を整理すると、私はフォリス・スノーという少女で魔王を倒そうとしていたところで魔王の唱えた妙な呪文のせいで日本の赤藤れなという少女に転生してしまったということか_?
いわゆる、逆転生_?
転生というものは、この日本というところから私の住んでいた世界_異世界にやってくるものだと、かの有名な小説家_ソフィアの小説で読んだことがある。そして、その小説を読んで異世界転生というものにあこがれていなかったといえばうそになる。けど、その逆バージョンを自分が体験することになるとは思わなかった。
というか、あの後魔王はどうなったのだろうか_?
私は、向こうの世界でどうなっているんだ_?
どうしよう。
私がそう思い、目の前の鏡を見つめていると、
「れなー?お食事の時間ですよ。降りてらっしゃい。」
部屋の外から知らない_(いや、記憶を見る限り今世での母親らしい)声が聞こえてきた。
「はーい。」
私は、取りあえず下の階に降りることにした。
部屋を出ると、急な階段がある。
私は、そろり、そろり、と慎重にその階段を下りた。
今世での母親は不思議そうにこちらを見ている。
それもそうかもしれない。フォリス・スノーとしての記憶を取り戻す前までは私は普通に急な階段を恐れもせず平然と上り下りしていたのだから。
いや、でも前世(?)のスノーだったころの記憶をもとに改めて会談を見ると、転げ落ちてしまいそうで怖い。
記憶を取り戻す前はよく上り下りできたなあ、と少し記憶を取り戻す前の自分を尊敬してしまう。
階段から降りると、妙なものが食卓と思われる低い机の上に置いてある。
うーんと、れなとしての記憶を探ってみると、これはてんぷらというものならしい。
美味しそうではある。
そして、母親はそば、というものを持ってきた。
普通においしそう。
いいな。
私はじゅるり、、とよだれが出そうになるのを抑えた。
確か、ソフィアの書いた異世界転生小説にも天ぷらとそばは出てきた。
早く食べよう。
そう思い、私は席に着いた。
母親は、箸、というものやそばのめんつゆ、というものも運んできてくれた。
すごい美味しそう。
そして、母親も席に着いた。
「いただきます。」
私は、その言葉を言って食べようと箸を持つ。
「はい、どうぞ。」
母は私に対してそう返して、
「いただきます。」
と言ってそばを食べ始めた。
大正逆転生~その異世界人は大正時代に転生してしまった~ 藍無 @270
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。大正逆転生~その異世界人は大正時代に転生してしまった~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます