第8話 新たな任務と過去の影

 ウイルス感染拡大のニュースは、世界中を覆いつくしていた。零は、新たな任務を与えられる。それは、ウイルス兵器の開発に関わった科学者を抹殺するという、かつての自分にしかできない任務だった。

 しかし、零は躊躇した。かつての自分であれば、迷わずこの任務を遂行しただろう。だが、今は違う。彼は、殺し屋としての過去から逃れ、新しい人生を歩み始めたはずだった。

「また、こんなことをしなきゃいけないのか…」

 零は、バーでひとり酒を飲みながら、つぶやいた。そこへ、いつものように野口がやってきた。

「どうしたんだ、零。顔色が悪いぞ」

 野口は、零の様子がおかしいことに気づき、心配そうに尋ねた。零は、ため息をつきながら、今の状況を話した。

「また、殺し屋に戻らなきゃいけないのか。もう、こんな生活には戻りたくないのに…」

 野口は、静かに零の話を聞き、こう言った。

「でも、君にはできる。きっと、この状況を乗り越えられる」 

 野口の言葉に、零は少しだけ心が安らぐ。しかし、心の奥底には、葛藤が渦巻いていた。


 組織との再会と決断

 任務遂行のため、零は再び組織のアジトへと潜入する。そこで、彼はかつての仲間たちと再会した。彼らは、相変わらず冷酷で効率的な殺し屋だった。

「久しぶりだな、零。変わってないな」

 かつての仲間は、そう言って笑った。しかし、零の心には、温かい感情は全く湧き上がらなかった。

組織のボスとの対面が決まった。ボスは、零にこう告げた。

「ウイルス兵器の開発は成功した。これで、世界は俺のものだ」

 ボスは、狂気じみた笑みを浮かべていた。零は、怒りをこらえながら、こう言った。

「そんなこと、許さない」

 そして、激しい戦いが始まる。


 選択と未来

 激しい戦いの末、零は、ウイルス兵器の開発を阻止し、組織を壊滅させることに成功した。しかし、その代償は大きかった。多くの仲間を失い、彼は深い傷を負った。

 一命をとりとめた零は、再び小さな街に戻ってきた。彼は、野口と再会し、これまでのことを話した。

「もう、殺し屋には戻らない。普通の生活を送りたい」

零の言葉に、野口は静かに頷いた。

「そうか。それは良かった」

そして、二人は静かに夜空を見上げた。

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殺し屋の愚痴 鷹山トシキ @1982

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