第3話
(由良)
お父さんができた。
よく家に来てた人がお父さんになった。
新しいお家に住むことになった。
前のお家より広くて大きい。
お兄ちゃんができた。
お母さんが幸せそうで嬉しい。
「ゆーらっ!由良ちゃーん!お父さんだよ~。おはよう、今日も可愛いな~」
新しいお父さんの圭介さん。私には今までお父さんがいなかったから初めてのお父さん。
圭介は大きな会社の社長さんなんだって。前のお家によく遊びに来てたときに教えてもらった。若くてやり手でイケメン社長だって、近所のおばさんたちも噂してた。
お父さんはお母さんのことが好きで、だから、私にまで優しい。私は一人になると思ってたのに、このお家に連れてきてくれた。
お父さんは私のことも好きなんだって。
……よくわからないけど。
でも私も、お父さんの圭介さんのことは嫌いじゃない。
「……おはよう、お父さん」
キラキラした目で待っている圭介さんに挨拶を返す。
いつもお仕事が忙しくて朝もばたばたしているのに、この時間はいつも変わらない。私が返事をするまで動かない。
あと、お父さんって呼ばないと怒る。
「そうだよ、由良のお父さんだよ~。でもやっぱりパパって呼んでくれないんだなー……。今日も尊と出かけるのか?」
「うん」
今日は小学校はお休みの日。
「そうかそうか。気をつけてな。由良は可愛いからお父さんは心配だぞ~。尊にも何かされたらすぐにお父さんか警察に連絡するんだぞ?ロリコンって叫ぶと誰かが助けてくれるからな」
げしっと音がしてお父さんの体がくの字に折れた。
そのまま勢いよく床に倒れこむ。いつもの事だけど、今日も痛そう。
「うっせーんだよ、アホ親父が。うぜぇ、黙れ、消えろ」
「尊……」
「みこ兄っ」
お父さんを横から蹴り飛ばしたのが私のお兄ちゃん。になった人。
赤い髪のお兄ちゃんはかっこよくて強くて優しい。
私に、ここにいて良いって言ってくれる人。
みこ兄は私の頭をがしがしと撫でた。
圭介さんよりも乱暴だけど、私はこの手がすごく好き。
「うし、行くか」
「んっ」
こくりと頷けば抱き上げられる。
「みこ兄、歩ける」
「いーんだよ。俺の由良だって周りに見せつけんだから」
ぎゅっと抱きしめられたからみこ兄の頭をきゅっと抱きしめ返しておく。私のお兄ちゃんってことも皆に知って欲しい。
「……なんで尊に懐いちゃったんだ、由良……。俺の天使なのにぃ……」
「きめぇ、ロリコン」
床に座ったままの圭介さんを置いてみこ兄は歩き出す。
「お父さん、行ってきます」
「行ってらっしゃいお父さんの可愛い由良!」
お父さんに手を振れば全力で振り返してくれた。
お父さんも出かけるんじゃないのかな?
今日もお仕事頑張ってね。
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