第4話
みこ兄に抱き上げられて見る景色は、いつもの道だけど少し違う。
いつもより視界が高くて不思議。それだけで何だか少しだけ楽しい道になる。
「由良。家には慣れたか?」
「うん。みんないい人だから」
最初は落ち着かなかった。
家にたくさん人がいるのも、家にいる誰かと喋るのも、家の中が明るいのも。
でも、今は、前とは違うけど嫌じゃない。
少し慣れないこともあるけどいいなって思う。みこ兄も圭介さんもいて家が暖かい。
「そうか」
片手で抱き上げられたまま、もう片方の手で頭を撫でられる。
みこ兄は私の頭を撫でるのが好き。抱き上げるのも好きだけど。
「でもみこ兄と一緒のが一番いい」
みこ兄の顔を振り返ってみれば、すぐ近くにきょとんとした顔があった。
暫く私の顔をじっと見るその顔は少しだけ顔が赤い気がする。
「……可愛すぎだ、由良」
「みこ兄はかっこいいよ?」
今度は黙ってわしゃわしゃと髪の毛をくしゃくしゃにされた。
髪がボサボサになったけど、そのあとそっと優しく梳いて綺麗に整えてくれたみこ兄の手は優しくて気持ちいい。
***
見た事のある制服を着た人を見つけて思わず、ねぇ、とみこ兄の服を引っ張った。
「あれ、みこ兄と一緒の学校の人?」
「ん?ああ。そうだな。ったくサボりかよ。学校行けよ」
めんどくさそうに言うみこ兄だけど、みこ兄も学校には行ってない。
サボりじゃなくて自主休校って言うらしい。みんないつも自主休校。
でもみこ兄は頭が良いんだよ。勉強しなくてもテストはできるんだって。
二人で見つめすぎたのか、みこ兄と同じ学校の制服を着た三人組と目が合った。
びっくりしたような顔をして、それからすぐに顔を逸らされた。
チッとみこ兄から舌打ちが聞えて、三人はそんなみこ兄を見て慌てて逃げていく。
みこ兄は強くてすごいんだって、剣が言ってた。
剣は自称みこ兄の子分で、色んなことを教えてくれる。鮮血の狼ってすごいんだぜ、って言ってたのを思い出す。
そのあと剣はみこ兄に怒られてたけど、なんでだろうね。
みこ兄ともだけど、みんなと一緒にいるとあんまり人が近づいて来なくなる。
一人で歩いてるといろんな人に話しかけられるのに。
「いいか、由良。ああいう弱くて根性がねぇのが一番めんどくせぇんだ。あんまり近づくなよ。俺とずっと一緒にいればいいからな」
みこ兄の言葉には素直に頷いておく。
みんな過保護だから、あんまり心配はかけちゃ駄目なの。
大事件みたいになっちゃったことが何度かある。
今は少しずつ護身術とか喧嘩の仕方とか教えてもらってるから、そのうちみんなを守れるくらいになりたい。心配掛けなくて大丈夫なように、1人で平気なように。
覚えなくていいってみこ兄は言ったけど、他のみんなが教えてくれた。
最後にはみこ兄も教えてくれた。弱点を一発でOKだって言われてるけど、まだ誰にも試したことは無い。
「ずっとみこ兄と一緒がいい」
みこ兄が嫌だって言うまで一緒が良い。
みこ兄は手を伸ばしたら掴んでくれるから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます