ドアマットヒロイン? いいえ、ディアマッドヒロインです

@JULIA_JULIA

第1話

 今日も、お継母かあ様から、お叱りを受けた。頼まれていた書斎の掃除が不十分だったためだ。机も本棚も本も壁も窓も床も、完璧にキレイにした。だけど、それだけではダメだった。天井裏も掃除するべきだった。お継母かあ様はおっしゃられた。


「天井裏からほこりが落ちてきたら、どうするの? アンタはそんなことも分からないのかい?」


 あぁ、ワタシの頭はなんて鈍いんだろう・・・。






 その翌日のこと、お義姉ねぇ様から、お叱りを受けた。頼まれて洗った筈の洗濯物が汚れていたためだ。お義姉ねぇ様の真っ白な服に、僅かな染みが付いていた。それは針の穴のような極めて小さな黒い染み。もっとシッカリと洗うべきだった。お義姉ねぇ様はおっしゃられた。


「はぁ・・・、アンタの目は節穴なの? 真っ白な服に黒い染みだなんて、目立って仕方がないじゃないの」


 あぁ、ワタシの目はなんて悪いんだろう・・・。






 そのまた翌日のこと、義妹いもうとから叱られた。頼まれて買いに行ったリンゴが手に入らなかったためだ。頼まれてぐに買いに行ったのに、お店はもう閉まっていた。家を出たときには、お店は開いていた筈だ。走っていったけど、間に合わなかった。義妹いもうとは言った。


「どうして間に合わなかったの? たったの一キロメートルでしょ? ホント、ノロマね」


 あぁ、ワタシの足はなんて遅いんだろう・・・。






 そのまた翌日のこと、三人から、お叱りを受けた。頼まれて作った昼食が口に合わなかったためだ。なんとか工夫して作ったつもりだけど、苦味があったらしい。三人はおっしゃられた。


「なんだい、この味は。とてもじゃないけど食べられないね」


 お継母かあ様はそうおっしゃられたが、キレイに平らげて下さった。なんと、お優しいのだろう。


「はぁ・・・、料理もろくにできないの? なんの取り柄もないわね」


 お義姉ねぇ様はそうおっしゃられたが、やはりキレイに平らげて下さった。なんと、お優しいのだろう。


「ペッ! なにこれ、マズッ! こんなの食べたくない」


 義妹いもうとはそう言ったが、キレイに平らげてくれた。なんと優しいのだろう。




 それから程なくして、三人は無口になった。それどころか、全く動かなくなった。どうやら毒が回ったらしい。


 さて、新鮮なうちにを解体して、売りに行かないと。



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