第4話 リュウール(1)

 リュウール・オーデンス伯爵は、『オーデンスのΩ』であった故ルナ・オーデンス伯爵が産んだオーデンス伯爵家の直系であり、Ω男子である。ハニーブロンドの髪に緩やかなウェーブがかかって、少し長めの髪を後ろで纏めている。目鼻立ちが頗る整っていて、特にブルーサファイアの瞳は、時に優しく、鋭く周りを見つめていた。

 母親のルナは、絶世のΩと称えられ美しさだけでなく信望もあった。そのルナとそっくりなリュウールは、常に母親と比べられるが、本人は幼い時に亡くなった母親と似ていると騒がれても我関せずを貫いている。だが、彼本人は自分の美しさを理解しているが、無自覚に微笑むので周りはソワソワして天使の微笑と騒ぎ出す始末である。

 リュウールの性格は、好奇心が人一倍強く、気になった事をとことん知ろうと思うところがある、その為に無鉄砲に単独で動くので警備隊は常にリュウールの行動に神経を尖らせている。又気が強く、思った事をはっきりと言う人物で、弱い立場の人が虐げられている場面を見ると武道の心得もある彼は、我慢ならずに懲らしめてしまう正義感を持ち合わせている為に、信望も集めていた。

 父親は、αで秀才のアルフレッド・シモンズ伯爵で、アスラン王国の出納長である。ルナ・オーデンスとの出会いは、トルベール学園中等部入学式の日、彼は、中庭のバラ園で、入学式が終わるまで過ごしていた。そこにバラ園に逃げてきたルナと運命的な出会いをしたのであった。それから紆余曲折があったが、番になり結婚もして、トーマスとリュウールの2人の子供にも恵まれた。

 母親であるルナ・オーデンス伯爵は、オーデンス伯爵家をリュウール1歳の誕生日に継承した。幼いリュウールの為に当時オーデンス城に辺境伯として赴任していたカール・クロイツ伯爵(通称カール元帥)の任期が後2年あったのでそれが切れるタイミングでオーデンス城に入城する事になっていた。

 そのオーデンス城出発の2週間前にルナは、事故で亡くなってしまった。原因については、花火の輸送中に偶然にも通りすがりのルナの馬車に花火師の荷馬車から落ちた花火が暴発したと言う不慮の事故だと裁可された。

 本来なら不服申し立てをすべきであったのにアルフレッドは、全てを受け入れた。その事故で、兼ねてからの不倫相手とされていた警護隊長もルナを庇って亡くなった為にルナの死はスキャンダルに晒され、アルフレッドは、それを信じてルナの最期も看取らずに子供達の養育を手放したと言われている。

 特にリュウールは、母親のルナが、事故で亡くなった後から姿を見る事が無くなって世間からはどこかの国に監禁されているやもう既に亡くなっているなど様々な噂が流れ、行方不明とされていた。

 兄は、文武両道の近衛騎士団副団長のトーマス・シモンズで、トルベール学園を高等部1年の8月に卒業した秀才で、大学からのオファーを無視して近衛騎士団の研修生になった。優秀な彼は、近衛騎士団の研修が終わると同時に近衛騎士団の副団長に就任している。その上、トーマスは、番もいて結婚もして子供もいると噂があるが、相手については殆ど知られていない。彼は、兵舎の一室を自宅代わりに使っているので結婚もフェイクではないかと噂されいた。

 トーマスにとってリュウールは、1番に守るべき弟であると言って憚らず、過保護と言われる程に可愛がっている。彼の部下のβで構成されているリュウールの警護隊は近衛騎士団の非番を利用して警護にあたるが、誰一人辞めようとはしない、何故ならトーマスが怖いのではなく、リュウールが天使の微笑で挨拶してくれるだけで心が癒されるからであった。

 

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