帰り道を塞ぐ空
野林緑里
第1話
学校から帰る道っていうものは一つではない。
いくつものルートがあって、毎日いろんな道を通って帰ることがなんか楽しいときがあった。
昨日はこの道通ったから、明日はこの道を通ろう。
そんな感じでいつもの通りから少し路地にそれてみたり、坂道や階段登ったりして帰るものだから毎日学校から家へ帰る時間が異なっているのだ。
もちろん帰るだけじゃない。
寄り道だってする。
通り道に公園があれば遊ぶし、知り合いと出会えば話もする。
店があれば小遣いでお菓子も買う。
週に1回の習い事のためにそこへ寄ってから帰ることもある。
それでも陽が沈む前に家へたどり着くものだ。
でも日の沈むのが早くなってきた季節ということもあるのかもしれない。学校を出て家にたどり着く前には太陽がどこかへ消えてしまい周囲が真っ暗闇になってしまっていた。
そんな時間まで遊んでいたのだろうかと、ミチルは学校からここまでの道のりを思い返してみた。しかし、今日に限っては寄り道や遠回りすることもなく、朝きた通学路を帰っているだけだった。いつもならば、太陽さんはまだ空高くある頃には家についているはずだ。それなのに太陽はどこにもなく、月や星の姿もない。ただ街灯だけが道を照らしているぐらいだ。
「変だよなあ。雨でもないし」
いつもいっしょに帰るレイコが首を傾げている。
「そうそう。どうして真っ暗なの?」
ミチルは空を見上げた。
「それはね。空がいたずらしたんだよ」
突然後ろから声がしたのでミチルたちの背中がビクッとする。
「なんだ〜。ユウかあ」
振り向くとクラスメートのユウがニコニコと余裕の笑顔を浮かべながらいった。
「なーに? 空のいたずらって」
「たまにやるんだよ。家に帰さないように空が足止めしてくるんだ」
「なんで家に帰さないようにするの?」
「うーん。それは知らない。なんかそうしたかったんじゃないの?」
「なにそれ?」
ミチルたちは思わず笑ってしまった。
「でもそろそろイタズラやめるよ」
ユウは空を指さす。
するとさっきまで暗かったはずの空が徐々に明るくなり、いつもの帰り道の風景が広がっていく。
見上げると隠れてしまっていたはずの太陽さんが顔を出し、空は真っ赤に染まっている。
まるでいたずらがバレたことに対して照れ笑いしているようだ。
「明るくなった!」
「明るくなったね」
「帰ろう」
「帰ろうか」
「帰ろう」
空のイタズラが終わってことに気づくとミチルたちは帰り道を走り出した。
帰り道を塞ぐ空 野林緑里 @gswolf0718
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