第5話 近寄るなカビるぞ!ブルーチーズ君

らんらん、今日はいい天気だなぁ。

太陽に焦げたトーストのような匂いが鼻をくすぐる。って、これ私の匂いじゃーん!


「ありゃぁ!おはようさんコッペ・パンはん!先日の試合どやった?」

「あ、お好み焼き君!すごいかっこよかったよ。最後にボールを止めた所なんてヒーローみたいだった」

「せやろ?俺な、多才やねんなぁ。ところでコッペ・パンはんは唐揚げとアレなんか?」

「え、アレ?」

「もぉー言わせんといてや。『こ』から始まるヤツや」


なんだろう……昆布巻きみたいに仲良しってことかな……?


「おいコッペ・パン、なんでお好み焼きと一緒に学校行ってんだよ」

「唐揚げ君!って、今日は何時にも増してジューシーそうだね!」

「なっ、そんなに褒めても……肉汁しか出ねぇぞ」

「はっは、朝からお熱いこって」

「お好み焼き君も鉄板で焼かれたばっかりみたいに熱々だよ」

「こりゃ嬉し……天然タラシやな」

「えへへ───って、なんか昇降口の方詰まってない?」

「本当だな」


「コッペ・パンさんおはようですの〜」

「栗きんとんちゃんおはよ!ねぇねぇ、なんで昇降口こんなに人が多いの?」

「どうやら問題児が来たらしいですの〜」


問題児……?黒豆君みたいな不良かな?


「皆さん、止まってないで早く校内に入ってください」


あ、卵先生だ。


「校内がくさいんだよぉ!おらこんなとこやだ」


あれは確かタンポポ先輩♀だ。それにしてと臭いって?───うっ、確かになんか変な匂いがしてきた。


「わたすぃに近寄るな!」

「あっ、ブルーチーズ君待ってください!」


あ、なんだかカビが生えた子を追って卵先生が消えちゃった。


「問題児のブルーチーズ君ですの。私達のひとつ上の先輩ですのよ」

「なかなかクセのある匂いしとったなぁ」

「俺はあの匂い嫌いじゃないぜ」

「私は……」


なんだろう、最初は「ヴッ」ってなったけど……嫌いじゃないかも。



それからブルーチーズ先輩による異臭騒動は校内でまたたく間に広まった。

殺人ウイルスをばら撒く、だとか。

触ったらカビちゃうとか。


どうしてこんなに酷い噂が広まってるの?

これじゃイジメだよ。


「おいコッペ・パン、なんだよその顔……」

「唐揚げ君……ブルーチーズ先輩の事考えてたらなんだか悲しくって」

「確かに、ひでぇ噂だよな。卵から聞いたんだけど、先輩は1年の時に急にカビにやられちまったらしいんだ。そこからイジメに発展して……つい最近まで引きこもってたらしい」

「悲しいよ。久しぶりに来たのにこんな事になるなんて……私、どうにかしたい!」

「やっぱ、お前おもしれぇ女」


もう、唐揚げ君たらこんな時までからかって!


「じゃあさっさと行くぞ」

「え、どこに行くの?」

「化学室だよ」


化学室なんかに……いるのかな?


「うっ、うっ、……」


化学室に入ると、すすり泣きが聞こえ始める。……これは、ブルーチーズ先輩の。


「わたすぃは……カビたくてガビた訳ではないにぃ」

「ブルーチーズ先輩!」

「ひっ、誰ですかぁ」


ブルーチーズ先輩、机の下に隠れてたんだ。


「あの、後輩のコッペ・パンです」

「俺は唐揚げ」

「わたすぃに、用?」

「あの、元気出してください!皆酷いこと言ってるけど……私先輩の匂い嫌いじゃありません」

「わたすぃの匂いが嫌いじゃない!?そんなわけ……」

「本当だぜ。先輩の匂い……癖になるってか、あぁ、嫌いじゃない」


唐揚げ君!


「けど、わたすぃに近寄らないでください!君らにもカビが」


「いえ、生えませんよブルーチーズ君。酷い噂が広がって居ますが……君は何も悪くありません。ほら、おいで」


え、卵先生!?……先輩に近づいて?


「わ、わたすぃに……」

「大丈夫、大丈夫です。ほら、触れられた」


抱きしめた!


「腐りなんか、しないでしょう?」

「あ、あ、わたすぃは……卵先生!卵先生いぃ!」

「泣かないでください、いい子、いい子ですから」


うぅ、感動的だよぉ。


「───皆さん!わたすぃの為に今回はありがとございました!」

「いえいえ、先輩の良さが他の人にも分かって貰えて良かったです」

「そうだな、先輩、気にすんなよ」

「コッペ・パンさん!唐揚げ君!ありがとぅーす」


今回の騒動、酷い噂が沢山広がったけど卵先生を初め色々な人が誤解をとこうと動いてくれたおかげでブルーチーズ先輩の印象はだいぶ良くなりました。

けど、なんだか最近悪口を言うサツマイモに攫われるっていう噂が新しく広がったみたい。


まぁでも、噂は噂だよね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る