第5話 遺跡の試練
ゴーレムを倒したあとも、遺跡の中は静寂と不穏な気配に包まれていた。広がる廊下の奥に、うっすらと輝く扉が見える。私は剣を収め、慎重に歩を進めた。
「気を抜くな。この遺跡にはまだ仕掛けがある」
フードの男がついてきながら、低い声で忠告する。
「分かった。けど、どうしてそんなに遺跡の仕組みに詳しいんだ?」
「昔、少し調べたことがあってな」
相変わらず曖昧な答えだが、これ以上詮索しても無駄だろう。私は再び前を向いた。
扉にたどり着くと、そこには見たことのない装置が取り付けられていた。複雑な歯車やレバーがあり、それらはどうやら仕掛けを動かすためのものらしい。
「これが試練の一つってわけね」
私は装置に触れようとしたが、男が制止する。
「待て。むやみに触ると罠が発動する可能性がある」
彼は装置をじっと観察すると、歯車に刻まれた古代文字を指差した。
「この文字は、『秩序』を意味する。つまり、正しい順序で動かせということだ」
「正しい順序って……ヒントは?」
私は周囲を見回したが、特にそれらしいものは見当たらない。
「多分、この遺跡全体がヒントになっている。さっきのゴーレムも含めてな」
男の言葉に、私ははっとした。確かに、これまでの遺跡内の模様や戦ったゴーレムの動きには一定のパターンがあった。
「秩序……順序……」
私は記憶を手繰り寄せながら、装置のレバーに手を伸ばした。そして、最初の歯車を回す。
ガチャン、と音がして歯車が回転を始めた。
「うまくいったのか?」
男が少しだけ驚いたように言う。私は慎重に次の歯車を回し、同じように順序を考えながら作業を続けた。
最後の歯車を動かした瞬間、扉が重々しい音を立てて開いた。
「やった……!」
だが、その直後、地響きのような音が遺跡全体に響き渡る。
「何かが来るぞ!」
男が叫ぶ。
◇◇◇◇◇
開いた扉の向こうから現れたのは、一体の巨大な石像だった。それはゴーレムよりもはるかに大きく、全身が輝く模様で覆われている。
「ボスか……!」
私は剣を抜き、構えた。
石像は両手に持った大剣を振り下ろしてくる。その攻撃は圧倒的な威力を誇り、一撃で床に大きな亀裂を入れる。
「速い……!」
私は間一髪で攻撃をかわしたが、その速さと力に驚かされた。この相手にはただの力押しでは勝てない。
「ラミエッタ、奴の動きをよく見ろ」
男が背後から声をかけてくる。
「分かってる!」
私は石像の動きを観察しながら、剣に魔力を込めた。そして、一瞬の隙を突いて足元に斬り込む。
だが、剣は固い石に弾かれてしまう。
「防御が堅すぎる……どうすればいいんだ?」
男は冷静に答えた。
「奴の模様に注目しろ。光が弱くなっている部分があるはずだ」
私は再び石像を見上げた。すると、確かに胸部の一部だけ模様の輝きが弱くなっていることに気づいた。
「そこが弱点か!」
石像の大剣をかわしながら、私は胸部に狙いを定めた。何度か攻撃を繰り返すうちに、ついに剣が深く突き刺さる。
石像が大きく揺れ、その動きが鈍くなった。
「今だ!」
男の声に応じ、私は全力で剣を振り下ろした。
石像は轟音とともに崩れ落ち、その場に静寂が戻る。
◇◇◇◇◇
「ふぅ……なんとか勝てた……」
私は息を整えながら剣を収めた。
「よくやったな」
男は淡々と言いながら、崩れた石像の残骸を調べている。
「結局あんたの正体はなんなんだ? どうしてこんなに遺跡に詳しい?」
私は再び彼に問いかけた。
「俺の名はリクス。それ以上の答えは、もう少し先に進めば分かる」
彼はそれだけ言い残し、開いた扉の奥へと歩き出した。
私にはまだ多くの疑問が残っていたが、進むしかなかった。遺跡の最奥には、この旅の目的が待っている。そう信じながら、私は男の後を追った。
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