第三節:デスゲームの断罪 ─ 下位者の結末

全員に向け、運営スタッフが無機質な声を上げる。

 「ただいまより、脱落者を発表します。――高森 雄一。あなたが最下位となりました」


 しんとした空気がホールを包む。根岸が思わず震えながら目を伏せ、守屋はごくりと唾を飲む。

月代は唇を噛み、目を逸らす。 


高森は立ちすくんだ。


 「……そんな、俺は……まだ、やれたはずなのに……」 


だが、彼が続きの言葉を発するより早く、スタッフが左右から腕を押さえつけ、太い拘束バンドを巻き付ける。


「待ってくれ、こんな……こんな形で終わりなんて……っ」 


高森は必死に抵抗を試みるが、スタッフの力に逆らえない。

周囲には鋭利な武器や電気警棒を構えた警備員が立ち塞がっている。

四人いたはずの仲間は、そのうちの一人がいま連れ去られようとしていた。


「高森さん……!」 


根岸が思わず声を上げるも、何もできないまま、高森は拘束されたまま後ろ手に廊下へと引きずられていく。

そして――ブツリと音が途切れたように、ホールの扉が閉じた。

遠くでわずかに聞こえる悲鳴のような声に、月代は肩をすくめ、守屋は頭を抱えてうずくまる。

根岸は涙をこぼして俯き、何度もスマホの画面を覗くが、ここでは役に立たない。誰も彼を助けることはできなかった。


 やがて、再びスピーカーから冷静な運営スタッフの声が響く。 


「高森 雄一の脱落を確認しました。生存するのは三名――月代 祐紀、守屋 漣、根岸 千夏。次の最終テーマを発表いたします」


そこにいた三人は震えながら顔を上げる。

スクリーンに映し出される文字を、誰もが見つめた。その瞬間、凍りつくような静寂がホールに降りる。


 “最後のテーマ:人間ドラマ”


 ――高森を欠いたこの場所に、また新たな地獄が始まろうとしている。

誰もが恐怖を抱きながら、その一言を凝視していたが、声をあげることさえも許されないかのようだった。


遠く廊下の向こうで何かがきしむ物音がした。

それは、高森を連れ去った先で起きている出来事を暗示するかのように、重たく、嫌な残響を引きずる。

だがもう、彼を救うすべはなかった。 やがてスクリーンの表示が消え、冷たい暗闇が戻ってくる。


――こうして、下位者を失った会場にはわずかに三名が残る。 

最後のテーマ“人間ドラマ”だけが、虚ろに光を残したまま、デスゲームはその最終局面へと突き進んでいく。

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