第二節:届いた招待状

ある優雅な午後、神代泰蔵は書斎で歴史資料をじっくり読み解いていた。

窓から差し込む優しい光に包まれながら、書棚には歴史的な鳴り物入りの書物が並んでいる。

その日は、先ほど手直しをしていた原稿を仕上げるところだったが、一通の手紙に目が止まった。

彼の忠実な秘書が何気なく渡してくれた封書で、封筒には彼の筆名がきっちり書き込まれている。


「また何かの企画の話か」と、少し笑みを浮かべて呟きながら封を開けると、内部には「高額報酬」と「名声を得るチャンス」の言葉が書かれていた。

「金が今さら何だっていうんだ」と思いつつも、神代の心には出版業界に風穴を開けられるかもしれない期待が芽生えた。


一方、都内のビジネス街にほど近い高層マンションの一室で中堅作家の月代祐紀は、編集者との電話を終え、郵便物の山を整理していた。

広告ばかりの中で、一つだけ目を引く高級感ある封筒を見つけた。


「何だろうね、やたら高級で」と、顔をしかめつつ封を開けてみると「新しい文学企画への参加案内」と書かれていた。

「秘密裏に進む話だそうで。それに高い報酬も…?」

好奇心がぞくぞくと湧いてきた。

「面白そうなことがあるといいね」と、月代は胸を躍らせた。


その夕方、高層マンションの他の一室では、若手人気作家の守屋漣が椅子をくるくる回し、伸びをしていた。

原稿を書く手を休め、冷たいジュースを取り出しながら、宅配で届いた封筒に目をやる。


「この手紙、何だろう?」ふと開けると、「世界が注目する企画だ」と銘打たれた招待状が。

「大げさな話だ。でも、なんだかワクワクするかも」と彼は楽しげに呟いた。


そんな中、新進気鋭の作家、根岸千夏はリビングでスマホをいじりながら冷凍パスタの準備をしていた。

電子レンジの音を聞きながら、メールと手紙の内容を照らし合わせていた。


「同じ文面…。秘密のプロジェクト?」

SNSで「#怪しい招待状 ワロタ」と投稿しようとしたが、「他言無用」と書かれていて指が止まった。

「何か裏があるのかも」と不安と興味が交差した。


一方、ホラー作家の牧瀬穂乃果は、静かな部屋でミステリアスなプロットを練っていた。

長らく置かれていた封筒を開けて「新しい挑戦?」と呟く。

「ちょっと不気味だけど…」と、新たな物語への予感に胸が高鳴った。


テレビに耳を傾けながら郵便を確認していた大衆娯楽作家の高森雄一は、「宛名不詳…」と疑問を抱きながら封を切った。

中には「高額な報酬」と「世界的なチャンス」とストレートな文言。

「嘘っぽいけど試す価値はあるかも」と彼は考えた。

思いも寄らないヒットになれば、彼の人気をさらに広げるチャンスかもしれないからだ。


こうして、それぞれの場所で招待状を手にした神代、月代、守屋、根岸、牧瀬、高森の六人は、興味を持ちつつもどこか引っかかる感覚を拭えないままだった。

高額な報酬と一つの可能性が新しい道を示しているかもしれないと考えながら、彼らが何も知らずに足を踏み出した道は、やがて“デスゲーム”と呼ばれる運命に続くことになる。

この段階では、まだその兆しを誰も察していなかった。

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