2話 戦闘狂の片鱗

晴れて人類の敵になってしまった俺

周りは未だ目が完全に見えないらしく困惑している

ただ俺のことを担当した神官だけは結果が分かっているようですぐに俺のことを殺そうとしてきた

勿論目が見えてないやつに捕まるなんてこともなく華麗に避けてから右ストレートをかます

ただ殺し切ることは無理だしそろそろ周りも動き出しそうなので一旦逃げることに


「そいつを殺せぇ!そいつは魔人だ!悪魔だ!なにがなんでも殺せぇ!」


神官にそう叫ばれて周りに全て伝わってしまった

まぁ今の俺ツノ生えてるしな、一発でわかるわ

扉の正面に立っていた騎士2人が襲いかかってくる

他にも部屋には騎士がいるが少なくとも正面にはこいつら2人だけ、なら速攻で潰す

距離が近づきもう少しで剣の間合いに入るとなった時に肩で一回フェイント入れてから足払いを仕掛ける……ように見せかけ体のバネを活かし一気に敵の首に足を引っ掛けそのまま足に挟んで首を捩じ切る

俺が騎士を倒したことに驚いているもう片方も倒した騎士から奪った剣で首を刎ね飛ばし剣と金目になりそうなものをパッと奪い逃走

この間約5秒

廊下に出た俺は予め覚えたルートを思い出し途中まではそのまま走る

だが勿論途中までしか覚えていない為城の外に出ることは叶わない

その為途中にあった部屋の中に入り窓があることを確認し、問題なさそうな高さなのでベッドシーツを剥がし即席のロープを作成

窓から飛び降り丁度良さそうな木にロープを通すように引っ掛け勢いを落とす

そのままロープを手放し着地の衝撃を流すように受け身を取り無事城の外に脱出

あとは街の外に出るだけだ



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【高杉視点】

僕らはイレーザー大臣の案内でスキル発現の儀を受けて無事にスキルを授かれた

僕も実際に剣術と光魔法を授かれてランクはなんと神

これには自分でも驚いたが、このスキルに見合う分精一杯頑張ろうと思った

ただそれで実際少しだけ浮かれていたのかもしれない

僕の後にスキル発現の儀を受けた、確か霧雨君だったかな、から突然謎の蒸気が上がり急に周りが光って目を瞑ってしまった

急に何が起こったんだと思ったが周囲を確認できない

そうやって戸惑っていると急に彼の担当をしていた神官が叫び出した直後人を殴ったような音が聞こえた

この頃になってようやく周りが見えてきて彼の姿を探すと、この部屋に入ってきた時の部屋に駆け出しているのが目に入った

そして騎士2人をあっという間に亡き者にしてそのまま部屋から出ていってしまった

僕も含めてクラスのみんなは口を開けない

当然だ、彼にこんなことができたことも、目の前で人が死んだことも………そして彼の額にツノが生えていた事実も含めて理解できないからだ



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さてさてさーて、見事に城を脱出した俺だが、今まさに街の外に出た

これからのことを考えて不安になる…なんてことはなく、むしろワクワクしていた

(これからは合法的に人殺しできる訳だ‼︎)

さっきは騎士2人を相手にして実際に殺した

一応初めて殺したことで何かあるかなとかほんの少し思ってたんだが、特に何かあるわけでもなかった

ただものすごく楽しかった、それだけである


霧雨和人という男は一言で言い表すなら狂人である

社会に溶け込んではいるがその心のうちは常に戦闘のことしか考えていない根っからの戦闘狂い

現代社会において人殺しなんて即逮捕

剣や刀がその辺に売ってる訳もなく、簡単にに人に振るえるものでもない

来る日も来る日もただ1人で隠れて素振りとイメージトレーニングを独学でこなす日々

普通はそれでは成長しない

ただこの男は戦闘に関して凡人とは文字通り格が違う

一を学んでそれを百に変換するぐらいはお手のもの

その為和人は日々退屈していた

今の時代に生まれたことを恨んだことなど数えられない

そんな時に起こった異世界転移

和人はこの時ばかりは神に感謝した

今なら目の前で靴を舐めるぐらい余裕で何時間でもできる、まぁしないが


そんな戦闘狂に殺し合える環境を与えるどころか、合法的に人殺しを出来る理由まで与えてしまってはもう止まらないだろう

ここには和人が心から求めていた世界が広がっているのだから


「んーまずは魔物とやらを狩りまくって、そっから人間かなぁ、いやぁー!困っちゃうよなぁーほんとー!殺しに来るんだもんなー‼︎そりゃ反撃しても仕方ないよなぁ‼︎」


さっきから胸の高鳴りが止まらない

とりあえずまずはこの高鳴りを抑えなければ

そのために生贄が必要だ

どっかに良い獲物はーー


「ゴブリン、みっーけ!」


丁度視界に入った緑の化け物を殺す為に剣を構えそのまま走り出す

ゴブリンもこっちに気づいたようで拳を振り上げてくるが、はっきり言ってそんな拳に当たるわけがない

向かってくる拳を叩き切って流れるように剣を斬り返し脇下から反対の肩に向かって両断する

ハッキリ言って雑魚だがこの世界には来たばかりだし、まだまだ強いやつはいるはずだ

気持ちを切り替え世界を巡る為に歩き出す

目指すは世界最強、いや、全生命最強

社会に馴染むという枷から解き放たれた戦闘狂いの化け物はウキウキしながら歩き出した

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